小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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その頃、警察署では聖弥の父、木村が事情聴取を受けていた。
「あなたの息子さんがあの状態になったことに心当たりはありますか?」
「ないです」
「先程、お友達にお聞きしたのですが、家族のことで強いストレスがあるそうです。あなたは家で息子さんにストレスを与えるようなことをした覚えはありますか?」
「ないです」
「それでは最後に訊きます。あなたは家で暴力などをふるったことはありますか?」
「罰の一つとして息子にげんこつをはったりはしていますが、そこまで強い暴力はふるっておりません」
「そうですか。ありがとうございました。気を付けてお帰りください」
「はい」
木村は口に笑みを浮かべながら警察署を出るのだった。

精神病院では聖弥に手を焼いていた。
「やめろ! 父さん! 何をする!」
「落ち着いてください!」
「離せ! ここから出せ!」
「落ち着いて!」
「うわー! やめろー!」
医師は聖弥に麻酔を打った。
このままでは他の患者に迷惑をかけてしまうので、静かにさせるには寝かせるしか方法がなかったのだ。
そんな聖弥を見て看護師が医師に話しかけた。
「彼は何があったのでしょう・・・」
「私にも分からん。相当なストレスを受けている。しかも、幻覚が見えているようだ。普通はこの状態になるまでに自殺したり、鬱状態になったりするのだが、ならなかったということは、彼はかなりの精神力を持っていることになる。そんな彼がこんな状態になるのだから、相当酷いことをされたのだろう」
「悲しいですね・・・」
「ああ。この状態だとしばらく面会も出来ないだろう。可哀想に・・・」
「そうですね・・・」
医師と看護師はしばらく聖弥を見つめていた。

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