小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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一通り連絡をし終えた翔大はため息をついた。
聖弥のことがかなり心配だった。
愛里も美奈も同じ気持ちだろう。
今、聖弥は入院している。
もちろんお見舞いに行くつもりだが、精神状態が安定していないと警察が言っていたために、かなりの不安が募っていた。
『聖弥・・・』
翔大は人一倍彼のことを心配していた。
一年前のお返しをしたいと思っていた。
一年前。それは、中学二年生の春だった。

翔大は小学生の頃いじめを受けており、心に深い傷をおっていた。
中学一年生になっていじめてきた同級生とは離れ離れになったが、中学二年生になってクラス替えにより、また同じクラスになってしまった。
それによって、またいじめが始まった。
「よお、翔大。久し振りだなぁ。最近どうよ?」
「・・・・・・」
「おお? 俺に対してシカトかよ。なめたもんだぜ。俺に逆らえんのか?」
彼はいきなり襟元を掴んできた。
「調子乗ってんのか? ああ?」
「・・・・・・」
その時だった。
「やめろ!」
翔大は驚いてその声のほうを見た。
それが聖弥だった。
聖弥は襟元を掴んでる手を無理矢理離し、いじめている男に睨みつけた。
「なんだこいつ」
そう言って男はいきなり聖弥の顔面を殴りつけた。
聖弥は全く動かなかった。
それに腹が立ったのか、男はさらに殴りつけた。
何度も何度も殴りつけたが、聖弥は全く動かなかった。
男は疲れて殴るのをやめると、聖弥は
「それで終わりか?」
と言った。
男は「くそ!」と言って逃げ出し、それから翔大をいじめることはなくなった。
翔大は聖弥に「ありがとう」と言った。
それに対し、聖弥は「当たり前のことをしただけさ」と言って席に着いた。
翔大は聖弥のことをかっこいいと思ったのと同時に、お返しがしたいと思うようになった。
その後、翔大は聖弥に積極的に話しかけ、次第に仲良くなっていった。
後に聞いた話だが、聖弥は本当に殴られた時に痛くなかったのだと言う。
「いつも兄や父に殴られてるからな」
翔大は自分よりも聖弥のほうが辛かったのだと知った。
そして、翔大は聖弥にとっての二人目の友達になった。
・・・今、聖弥はこれまでに心にためてきた思いを吐き出すことによって精神が崩壊している。
今まで壊れなかったのが不思議なくらいだが・・・。
その壊れた心を治してあげたい。
どうか治って、もとの聖弥に戻ってほしい。
俺達の思いがどうか天に届いてほしい。
『神様、どうか聖弥を救ってください!』
翔大は強く願った。

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