小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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三人は、急いで聖弥が緊急で入院することになった病院に来た。
受付の人に聖弥がいる病室の番号を教えてもらい、すぐにその部屋へと向かった。
部屋へ入ると、無残にも包帯を巻きつけてベットに横たわっている聖弥と、警察官の小林がいた。
聖弥はこちらに気付いたのか「やあ、みんな・・・」と言った。
まだ痛むのか、聖弥は顔をしかめていた。
「聖弥!!」
三人は聖弥の近くに寄り「大丈夫?」「会いたかったよ!」などの声をかけた。
「こんな形で再会するとはな・・・。ごめん、みんな。心配かけて」
「聖弥ーーーーーー」
「泣くなって。愛里・・・」
聖弥は、毛布に顔を伏せて幼い子供のように泣いている愛里の頭を撫でた。
「しかし、聖弥の父さんは最低だよな。聖弥を殺そうとしたんだろ?」
翔大は悔しそうにそう言った。
「うん・・・」
「何でこんなことするんだろうな。マジで腹立つ! 小林さん、まだ聖弥の父さんは捕まってないんですか?」
「今、逮捕に向かってます。聖弥君本人が目撃したんですから、間違いありませんしね」
「そうですか。早く捕まってほしいです!」
「そういえば・・・刺されてから周りに父と兄が沢山いるってことはなくなったなー」
そんな聖弥の呟きに翔大は「え!?」と驚いた様子を見せた。
「そんな状態だったの? それは辛いな・・・」
「どうやら、聖弥君は刺されてから幻覚症状が治ったようですね」
「え!? 幻覚だったんですか?」
「そうだったみたいですね。担当の医師によりますと、ずっと幻覚や幻聴といった症状が続いているとのことでしたから」
「幻覚だったんですか・・・。少しホッとしました」
「本当に沢山いたら、それはそれで恐ろしすぎるぞ」
「そうだな」
「それでは、私はこれで失礼いたします」
小林はそう言うと、鞄や上着などの荷物を持って立ち上がった。
「小林さん、お疲れ様でした」
翔大は深く礼をした。
小林は軽く会釈すると、病室を出ていった。
その後も、三人は面会時間ギリギリまで聖弥に寄り添い、色々な話をした。
久し振りに四人で楽しく会話したのだった。

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