小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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小林は本部に戻り、木村の逮捕を待ちわびていた。
聖弥君をあんなに状態にしたのだから、よほど酷いことをしたに違いない。
今回のような殺人未遂であったとしても、そうでなかっとしても、彼は刑務所に入っていいぐらいの男だと小林は思っていた。
小林は時計を見た。
そろそろ連絡が来るはずだ。
「ピリリリリリ」
『来た!』
小林は携帯をとり、すぐに電話に出た。
「小林だ」
「二十一時三十八分。木村一樹を逮捕しました!」
携帯の奥で木村が「俺じゃない!」と叫んでいる声が聞こえた。
今更何言ってんだと小林は思った。
「犯行は認めてなさそうだな」
「ええ。そんなことは知らないと言い張っています」
「そうか。分かった。ご苦労様」
小林は携帯をポケットに入れた。
父親が逮捕されることで、聖弥君は幸せへの第一歩を踏み出すことになるだろう。
あとは家族と彼を離すことのみだ。
「タバコでも吸うか」
小林は喫煙所に向かった。

「今日、午後九時頃、木村一樹容疑者が殺人未遂の疑いで逮捕されました。木村容疑者は、犯行を認めておらず、そんなことは知らないと主張しているとのことです」
翔大はテレビを消した。
『やっと逮捕されたか・・・。それにしても、犯行を認めないとは・・・最後まで最低な人間だったな』
翔大は「フーーー」と長く息を吐き出した。
聖弥が幸せになることをどれほど待っていたか。
それが今、やっと実現しようとしているのだ。
『これで、終わったんだよな』
翔大は一気に疲れがとれたような気がした。
そして、いつの間にか眠りについていた。

誰もがこの事件はここで終わりだと思っていた。
だが、終わりではなかった。
聖弥達にとって、残酷な結末が待っているのだった。

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