小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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授業は二時間目に突入していた。
聖弥は一時間目が終わっても目を覚ますことはなく、眠ったままである。
二時間目の授業は社会で、元々説明ばかりする教科だったので、愛里達はホッとした。
授業も無事に終え、休み時間に入った。
愛里達は次の時間が避難訓練だということもあるので、聖弥を起こすことにした。
「聖弥、起きて」
美奈は聖弥の身体を揺すった。
「ん? あぁ。寝てたのか。悪りいな」
「次は避難訓練だよ・・・」
愛里は辛そうに言った。
「そうか・・・。もうすぐ家に帰らなきゃいけないのか・・・」
「うん・・・」
四人は黙り込んだ。
沈黙の時間が何十秒か続き、愛里は場の雰囲気を明るくさせようと、無理矢理話題を変えた。
「そうだ! みんな私の家に来てよ」
「おお! いいねえ! 行こうぜ」
翔大はその意見に賛成した。
「でも、俺は遊びに行けないし・・・」
聖弥は兄の勝手なルールのせいで遊びに行くことを禁じられていた。
「大丈夫だって。私の親に説得させるから。それなら大丈夫でしょ?」
「うん・・・大丈夫かな」
「ほら、元気出して!」
美奈は聖弥の背中を叩いた。
「分かった」
話が終わると同時にチャイムが鳴り、避難訓練が始まった。
今回の避難訓練は火事を想定してのものだった。
サイレンが鳴り、生徒達は先生の指示でハンカチを使って鼻を覆い、廊下に並んだ。
これから体育館に移動する。
「ふあーぁ・・・」
聖弥は一、二時間目で眠気がとれていないのか、欠伸をした。
「聖弥君! 火事の時に欠伸をしたら煙を多く吸い込んじゃうでしょ!」
「は、はい。すみません」
先生の注意で眠気が覚めた聖弥は咄嗟に謝った。
その注意の後、生徒達は姿勢を低くして足早に体育館へ向かった。
体育館に着くと、教頭先生が実際に火事が起きた時の注意や、今日の避難訓練の出来の良さについて話し、解散となった。
解散した後、愛里が聖弥に駆け寄った。
「聖弥、今日は直接家に来たら? ご飯も作ってあげるよ」
「ありがたいけど、それは遠慮しておくよ」
「遠慮しない! それに、聖弥が家に帰っちゃったら説得しにくくなるでしょ!」
「うん・・・じゃあそうしようかな」
「よし、決まり! じゃあ一緒に帰ろう」
「うん」
聖弥は、頭から家庭の不安をかき消し、愛里の家での時間を楽しむことにした。

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