小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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「美奈! 起きなさい!!」
ものすごい怒声に顔をしかめながらも、美奈はイヤイヤ身体を起こした。
「今何時?」
「七時よ」
「なーんだ。まだそんな時間か」
「ゆっくりしたらダメよ」
母はそう言うと部屋を出ていった。
「あーー!!!」
美奈は体の下にある物を見て、声を上げた。
「何? どうしたの?」
母が気になったのか、見にきた。
「最悪・・・」
「何が?」
「ミュージックプレイヤー付けっぱなしだよぉ・・・。電池がーー」
美奈は体の下のミュージックプレイヤーを拾い上げると、すぐにUSBケーブルを挿し、充電を始めた。
「あーあ・・・」
「残念だねーー」
母が大声で笑った。
美奈は落ち込んだ様子で着替え、朝食を食べに食卓についた。
「いただきます」
美奈が食べ始めると、父も食卓についた。
そんな父に母が話しかけた。
「ねえ、あなた?」
「何だ?」
「美奈ったら音楽プレイヤーを付けっぱなしにして寝たのよ」
「アッハッハッハ!! 美奈はドジだなー」
「もうー!!! お母さん!! 言わなくたっていいじゃーん!」
美奈は頬を膨らませた。
「ごめんごめん」
「絶対悪いとなんか思ってないし!」
「思ってるって!」
母はそう言いながらも笑い続けていた。
「笑ってるもん」
「悪かったって」
「うーーーー。絶対思ってない・・・。ごちそうさま!!」
美奈は食器を洗い場に置き、顔、頭を洗うと「行ってきます!」と不機嫌な様子で家を出ていった。

教室に入ると、そんなに人数は多くなかったが、漲、瑞穂の二人が仲良く話していた。
「美奈! おはよう!」
瑞穂が手を振ってきた。
美奈は「おはよう」と返すと、席に鞄を置き、二人のもとへと向かった。
「いつの間にそんなに仲良くなったの?」
美奈が二人に質問した。
その問いに漲が答えた。
「話しているうちに、意気投合しちゃってさ」
「へーー。瑞穂が男子と話すなんて新鮮だなぁー」
美奈はそう言ってクスッと笑った。
「何よ、その言い方! まるで私がモテない的な感じがするんだけど?」
「決してそう意味ではないよ」
「ねえ、大沢さん?」
「ん?」
「俺、笹村さんとも仲良くなれたから、大沢さんとも仲良くなれると思うんだー」
「そうかもね。あ、大沢さんじゃなくて、美奈でいいよ」
「私も笹村さんじゃなくて、瑞穂でいいよ」
「ありがとう、二人とも。じゃあさ、お近づきの印として、握手していい?」
漲のその問いに、二人で同時に答えた。
「いいよ」
そして、今度は三人同時に
「よろしく」
と言った。
その直後、チャイムが鳴った。
『もう友達が出来たなー』
と美奈は自分の席に戻りながら心の中で思った。

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