小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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今日も、母の声で目が覚めた。
学校に行きたくなくても、不登校になるわけにはいかないので、嫌々準備をする。
ゆっくり朝食を食べ、ゆっくり顔を洗う。
鏡を見ると、自分の顔がやつれて見えた。
美奈はため息をついた。
そして、心の中で
『何よ。始まったばかりじゃない!』
と言った。
やつれた顔を誤魔化すかのように、鏡の前で笑顔を作ると、そのまま「行ってきます!」と言って学校へ向かった。

教室に入ると、瑞穂が心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫?なんか、疲れて見えるよ?」
美奈はハッとしたように目を見開くと、無理矢理笑顔を作った。
「そんなことないって!」
「そう?」
「うん!」
美奈はそう言って瑞穂から顔を背けると、自分の席に着いた。
そして、鞄を横のフックにかけた後、うつ伏せになってため息をついた。
『やっぱり嫌だな・・・。早く抜け出したい。そうだ!保健室に行こう』
美奈はゆっくりと立ち上がると、瑞穂に
「頭が痛いから保健室に行ってくる。先生に伝えといて」
と告げると、ワザと顔をしかめて教室を出た。

学校に来てまだ間もないので、場所がよく分からなく、五分近く捜索し、ようやく見つけた保健室で美奈はベッドに横たわっていた。
ベッドに行くまで、熱を測ったり、質問されたりと面倒だったが、それらを済ませた後はかなり楽だった。
ただ寝っころがって、静かにしていればいい。
しかし、そんな状況でも、美奈は落ち着くことが出来なかった。
逃げてるんじゃないかと思ったのだ。
『情けない・・・』
そう思った美奈は、しばらく考え込んだ。
そして、一時間目が終わったら教室に戻ろうと決めたのだった。

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