小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「美奈!大丈夫?」
『誰かの声が聞こえる。・・・私、寝てたんだ。まだ目を開けたくないな・・・』
「一時間目ずっと寝てたんだな・・・。相当具合悪いよ、これは・・・」
もう一人の声も聞こえた。
何人いるのだろうか。
『・・・そういえばどこかで聞いた声のような・・・。あ!ミッズーと漲君だ!・・・ここにいるということは、一時間目は終わってるのかな?』
そう思った瞬間、美奈は突如先程のことを思い出し、身体を起こそうとした。
その時「ゴン!!」と何かが頭に当たり、その衝撃で美奈の身体は再びベットへと戻っていった。
「いってー・・・」
「痛たた・・・」
美奈は何事かと思い、目を開けた。
そこには、でこを抑えて苦痛の表情を浮かべる漲と、その姿を見て笑っている瑞穂がいた。
美奈は何があったか二人に問いかけることにした。
「・・・何が起こったの?」
その質問に、漲が答えた。
「いや・・・、熱があるんじゃないかと思っておでこを近づけたら、いきなり美奈が起き上がって・・・」
「え!?おでこをくっつけようとしたの?」
「え?あ、うん」
「うーん・・・。普通、女の子にする?」
「え?しないの?俺は母さんにずっとそうやって熱測ってもらってたから、そうやるものだと思った」
「うーん・・・。今度は彼女にしてあげてね」
美奈は思わず苦笑した。
「おでこをくっつけようとしたんだー。それにしても、美奈大丈夫?」
「うん、何とか。これから授業に戻るよ」
「良かったー。美奈が元気になると俺も嬉しいよ」
「じゃあ、皆で戻ろっか!」
美奈はベットから立ち上がると、保健室の扉を開けた。
「あれ?美奈ちゃん具合は?」
ベットにいる時はカーテンで見えなかった保健の先生にそう訊かれたので、美奈は
「すっかり良くなりました!これから教室に戻ります!」
と言い残し、部屋を出た。
そして、三人で教室へ向かった。

教室に入ると、周りが騒ぎ始めた。
「戻ってきたぞ、あいつ」
そう言って、薄ら笑いを浮かべている男子や
「ちょっとー、あいつ来たわよ」
と言って、ひそひそ話している女子と、様々だった。
周りのどこを見ても、気分を悪くさせる光景ばかりで、美奈は辛そうに俯いた。
そんな美奈の気持ちを察して「・・・行こう」と漲は言った。
その言葉でようやく三人は足を動かし、自分の席に戻った。
美奈は周りからの視線を感じるのが辛いのか、ずっと下を向いていた。
隣の席の漲は、美奈の気持ちを明るくさせようと、積極的に話題を持ちかけた。
他にも、美奈を笑わせようと一発芸をやったり、変顔をしたりした。
そんな漲を見て、美奈は少しだけ微笑み「ありがとう」と言った。
そして、美奈は教科書を取り出しながら
『これだけ支えてくれる人がいるのに、私は何をやっていたんだろう。頑張ろう!』
と思うのだった。

-41-
Copyright ©zebiaps All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える