小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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教室を出た美奈は、トイレに駆け込んだ。
手を洗い、口をゆすいだ。
涙顔も何とかしようとして、顔全体を洗った。
まだ味が残っている。
カメムシの味か嘔吐物の味かも分からない。
とにかく気持ち悪い。
美奈はそんな気分を何とかしようとして、窓を開けた。
窓から入ってくる風が爽やかで、とても気持ちよかった。
「美奈ーー!!!」
トイレの外から自分を呼ぶ声が聞こえた。
美奈は、その声の主が漲であることがすぐに分かった。
美奈は気分的に無視しようと思ったが、もう一度呼ぶ声が聞こえたので、トイレから出ることにした。
「あ、美奈」
トイレから出た美奈に気づいた漲は、美奈の方へ歩み寄ると
「吐いた物は俺が処理しておいたから、もう大丈夫だよ。それにしても・・・聞いたよ。カメムシを給食に入れられたんだって? 最悪だな・・・。とにかく教室に戻ろう」
と言って、美奈の手を引っ張った。
そんな漲を見て、美奈は「ありがとう」と小さい声で言った。
「え? 何か言った?」
「ううん、何でもないよ」
美奈はそう言って、今日初めての笑顔を見せた。

こうして、地獄の学校は終わった。
家に帰った美奈は、真剣に不登校になるか迷った。
だが、親に心配をかけたくないという気持ちが勝り、結局は学校に行き続けることを選択した。
この決断により、地獄の学校は再び始まることになるのだった・・・。

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