小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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「ふあぁぁぁ」
六時に目覚め、二時間しか寝ていない聖弥は大きな欠伸をした。
眠くても、もう一度寝るわけにはいかないので、急いで学校へ行く準備をすることにした。
聖弥は朝も忙しい。
朝食を作り、皆を起こし、やっと学校へ行ける。
今日もその日常となった仕事をこなし、返事が返ってこない「いってきます」を言って学校へ向かった。
教室に入ると、いつものように愛里が挨拶をしてきた。
「おはよう、聖弥!」
「おはよう」
聖弥は挨拶を返してくれるのは友達と先生くらいかな、と思った。
挨拶をした聖弥は席に着いた。
そして隣の席の愛里と話していると、美奈が教室に入ってきた。
「おはよう! 美奈!」
愛里はいつものように挨拶をしたが、美奈は気が沈んでいるらしく、浮かない顔で「おはよう」と言って席に着いた。
聖弥はそんな美奈の様子が気になり
「どうした? 何かあったのか?」
と訊いた。
すると、突然美奈は立ち上がり
「話しかけないで!」
と怒鳴りつけ、教室から出ていった。
「どうしたんだろう・・・。聖弥、ちょっと待ってて」
「あ、ああ」
心配した愛里は教室を出て美奈を追いかけた。
美奈は廊下で歩きながら泣いていた。
愛里はそんな美奈の肩に手を置き、
「美奈、どうしたの?」
と尋ねた。
「だって・・・お母さんから聖弥と関わったらいけないって言われて・・・。仲良くしたら家から追い出すよって言われたの・・・」
美奈は顔を手で覆った。
「なんで・・・。どうしてなの?」
と愛里は訊いた。
美奈はその質問に鼻をすすりながら答えた。
「お母さんの話によると、聖弥が昨日、父親に包丁を向けたらしいの。多分、ストレスのせいだろうって言ってた。私は聖弥がそんなことするわけないって思ったけど、ストレスもかなり抱えていることも知ってるから、何とも言えなくて・・・」
「そう・・・。でも、そんな話信じるの? 私は聖弥がやってないと信じるわ」
「でも・・・。私は仲良くしたら家から追い出されちゃうから・・・」
「美奈のお母さんはここにいるの? いないんだったら、仲良くしてもバレないでしょ。きっと、聖弥は今の美奈よりも何倍も辛いはずだよ。そんな聖弥を傷付けたら・・・」
「分かってるわ! でも・・・」
「もういい! 美奈の意気地なし! 酷すぎるよ・・・」
愛里は教室へ向かって走り出した。
「どうしたらいいの・・・」
美奈は頭を抱え込んだ。

教室に戻った愛里は、聖弥に合わせる顔がなかった。
『聖弥が昨日、父親に包丁を向けたらしいの』という美奈の言葉がずっと頭に残っていた。
もし、それが本当だったら、聖弥の精神状態がかなり危ない。
愛里はどうすればいいのだろうと思いながら席に着いた。
相当疲れているのか、美奈とのやりとりが長かったのか、どちらかは分からないが、こんな状況でも聖弥は眠っていた。
いつものことだったが、前と同じように接することが出来るか心配だった。
そんな状況の中、チャイムが鳴り美奈と先生が教室に入ってきた。
その時、愛里は教室の様子がいつもとは違うことに気が付いた。
『・・・翔大がいない!』
愛里は翔大のことが気になり、先生に訊いた。
「先生、翔大君はどうしたのですか?」
「え? あ、風邪です」
愛里は先生の様子がおかしいことに気が付いた。
なぜ慌てているのかということが気になった。

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