小説『ニートな少女の活動記録』
作者:しゃいねす()

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 お昼前の11時30分。

 昼食用に買ったサンドイッチとニート様の餌(チョコクッキー)が入ったコンビニのビニール袋を片手にぶら下げ、心音の家に向かっていた俺の前に現れたのは、ぬいぐるみ事件の時に同席していた不良っぽい男の妹だった。

「やほー、ネトゲ廃人のお兄ちゃん」

 身に覚えの無い肩書きで呼ばれる俺。どちらかというと心音の方がそれっぽい気がするが、ひょっとして俺って、ひきこもりニートにでも見えるのか?

「とりあえずネトゲ廃人ってのは抜いてもらおうかな?」

「あぁごめんごめん。 でも全部成績1位ってすごいよね、ってことで早速本題 」

 ネトゲ廃人という貶しっぽい言葉の後にまるで対極にでもありそうな言葉が出た。
 成績1位なんて取ったこと無いぞ。何の勘違いしているんだこの娘は。

「あたし達の計画を手伝って欲しいのよ、チャッピー、天才のチャッピーさん?」

「……ごめん話が見えないんだが」

 まずチャッピーってなんだよ。

「惚けても無駄!ちゃんと調べついてるから!」

「いや……ごめん、意味がまったく分からない」

 なんなんだこの娘は。手伝って欲しい、チャッピー?
 ほんとに話が見えない。あの兄貴の妹……もしかして電波とか?




「…………あれ、あ、ご、ごめん用は済んだから帰るッ!!」


 何か意味不明な事だけいって帰ってった!あぁ、本当に電波娘だったのかもしれない。







                ☆


 え、え、あれあれ、嘘!
 あの男がchappyなんじゃないの?
 もし違うって言うのなら、残りは心音とかいうあの小さくて小柄な女の子しか残ってないじゃない。
 というか、さっきのあたし傍目から見たら完全に電波!?
 ま、まぁそれはいいや、置いといて。

 ……あの娘が……chappyなの? ……ほんとに?
 あの見た目、行動からして、そんなの……絶対に……

 常識的にありえないんだけど。

                ☆


 なんだったんだろう。あの娘は。
 心音の家に着き、昼食のサンドイッチを食べながらそんなことを思った。
 そういえば、チャッピーってどこかで聞いたような。心音に餌を与えるついでにチャッピーのことを聞いてみた。

「心音、チャッピーって聞いて何か分かるか?」

「うん、あれ、まだ悠にはまだ言ってなかったっけ? この子の名前」

「この子……? あぁぬいぐるみのことか」

 それはこの間のぬいぐるみ事件で使われていたくまのぬいぐるみだった。

「かわいいよねっ! チャッピー!」

 心音はたくさんあるぬいぐるみの群の中に大きくダイブした。
 そしてぬいぐるみを押しのけ半分体が埋まる。

「お前もぬいぐるみみたいになってるぞ」

「私はぬいぐるみじゃないもん、青海心音! 悠はそんなことも知らないのー?」

 ぬいぐるみ山の中からチャッピーを取り出して、自分の膝の上にちょこんと座らせる。
 そして幸せそうな笑みを浮かべながら、そいつの頭を撫でる。
 至福を感じさせる嘆息を漏らし、加えてもう一つだけセリフを付け足した。



「それとわたしのネットでのハンドルネーム   それがCHAPPY 」

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