小説『ニートな少女の活動記録』
作者:しゃいねす()

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 俺達のアジトはラーメン屋の倉庫になった。友香がラーメン屋の店長に無理を言ってアジトにしてもらったのだ。店長も「おぉ、おぉ、今は使ってない倉庫だし、好きに使いな! 若い娘も来てくれておじさん嬉しい!漲ってきたぞ!」と言ってアジトにするのを許可してくれた。……下心丸出しな人だったな。




SHADOWが発足してから三日後、俺と友香は二人で龍人隊のアジトを偵察することになった。

「あたしたちも漲るわよっ!」

 友香が、屈伸をしながら口火を切る。
 
「友香、この服装は……なんだ?」

 今の俺達、二人の服装は実に変わっている。
 下半身は建設作業員が履いてるようなだぶだぶなズボン。上半身には奇抜なデザインのパーカーを着ており、フード部分からはネコミミが生えたかのように少し盛り上がっている。どちらも真っ黒なので少し離れてみると猫と人間が混ざったようなシルエットが見える。

「いいじゃん、頭のこれ、ネコミミっぽくて可愛いし、悠も似合ってて可愛いわよ?」

 俺は無意識に顔を赤くしてしまった。それを隠すために友香から顔を逸らしたが、それも逆効果となってしまう。。

「ゆ〜う〜? 顔を赤くしちゃってどうしたのかなぁ〜? 可愛いっていわれて嬉しかったの〜?」
 
「う、うるさいなっ! なんで男の俺が可愛いって言われて喜ばなくちゃいけないんだよ!」
 
 反抗してみるが、またまた逆効果。
 友香は手を口にあててクスクス笑いながら、背中をバンバン叩いてくる。
 あぁ、もう今日の俺はどうしたよ……。

 ちなみにこのコスプレみたいな格好は、龍人隊のメンバーがみんな着ている服装だ。
 友香がヴィンテージヘブンのアジトから取ってきたらしい。何故敵であるグループの服がヴィンテージヘブンに置いてあるのかは謎だが。
 そして驚くことに、監視カメラも設置してきたらしい。
 ヴィンテージヘブンは今、あちこち回って恭介を探しているらしいからアジト内にはあまりメンバーはいない。
 だとしても、こんな小さくて……心音と同じくらい小柄で華奢の女の子が一人でそんなことやったと思うと、友香、なんと恐ろしい奴。
 ……そういや、心音もすごいやつだったんだっけ?

「ほら、もう行こう! 偵察するんだろっ?」

 少しヤケになりつつ、俺は龍人隊のアジトに向かって歩き出す。

「あ、ちょっと待ってよっ、ツンデレ悠っ!」 

「だ、誰がツンデレだ!」






                        ☆




 龍人隊のアジトの前まで辿り着いた俺達は、足を止めて目の前にそびえ建っている建物を見上げる。

 ペンキやスプレーで落書きをされている壁で取り囲まれ、堂々と建っていたのは廃校になってから何年もたったような学校の校舎だった。
 校舎だと分かったのは、建物の壁の上の方に取り付けられた大きな時計があったからだ。
 それが無かったらただの廃墟にしか見えない。それほどまでにこの校舎は古び、崩れていた。
 二階と三階の間のコンクリート床が崩れていて境界が無くなっているところまである。

「この校舎がアジトって訳か……思ったよりもでかいなぁ」

「うん、でも監視カメラの配置場所はちゃんと決めてあるから大丈夫よ」

 なら、いいけど。
  
 俺達は見つからないように彼らのアジトへと侵入した。
 壁から、壁へ。人がいないことを確認しながら少しずつ中へと入り込む。まるで某潜入アクションゲームの主人公のようだ。
 校舎一階の玄関ホール、下駄箱付近まで辿り着いたとき、友香が腰につけている無線機から無線が入った。
 え、無線!? 
 
 『こ、こちらココネ、潜入は成功した?』

 え、心音!?

 『はいボス、潜入成功しました。今一階の玄関ホール、下駄箱付近です』

 『う、うん、では、そこから、監視カメラ設置の作業を、し、してくるのだっ! あ、あと3階に敵!』

 『了解ボス、頑張ってくるよ』

 『こ、こ、こ興奮を祈るっっ!』

 『了解』

 本格的すぎるだろ、これ。
 心音も動揺して幸運が興奮になってるし。

 「よし、悠、興奮しなきゃ!」

 「興奮するな!ツッコミを放棄してボケに回るな!」






 

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