小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

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「こ、この。放せよ。」
「駄目だ。」
また、話した。ゆらゆらと揺れる水の中から声がした。
「こ、こいつ・・・。」
踏ん張るが、こんなおかしな体勢では力は半分も出せない。奴の力が優っている。引きづり込まれるのは時間の問題だ。
今はとにかく耐えるしかない。
と思っても段々と奥へと奥へと入っていくのがわかる。次第に臭いがキツくなってきたのが、その証拠だ。流してないのだから当然だ。
(いやだ。いやだ・・・。)
何が嫌なのかわからなくなっていた。
思わず息を止めた。だから、更に力が入らなくなった。いったい、何をやっているのだ?
「くそっ!放せ!」
「駄目だ。」
押し問答は続く。
僕の汗が、水面に落ちていくのがわかった。小さな波紋が、僕を救ってくれる事になる。奴の顔が歪んでいるのだ。僕を掴んでいる手も歪んでいる。どうやら、映っている物の状態に、奴は同期するらしい。そこで閃いた。が、これは大きな賭けだ。ここで片手を離すのは、かなり危険だ。両手でやっと防いでいるのだ。片手なら、容易に持ってかれるだろう。
それでもやるしかない。

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