小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

二時間が経った。
「どうだ?終わったか?」
片手にペットボトルを持って、太田が戻って来た。
「あ、はい。一応。」
「どれ、見せてくれ。」
「こんな感じですかね?」
自信はあった。しかし、それは太田の作ったものを見るまでだった。今はない。それが表情に出ていた。
「そんな自信なさげにするなよ。こっちが悲しくなっちまう。」
「すみません。」
「どれ?」
太田は僕の作った模型を確認した。
「・・・。」
しばしの沈黙。ダメだったのだろうか。息を飲んだ。
「・・・どうですか?」
「・・・。」
まだ、何も言わない。胃が締めつけられるようだ。
太田は本当にじっくりと確認した。それが実に長く感じた。
「しかしなぁ・・・。」
ダメっぼい感じだ。
「ダメですか?」
「逆だよ。逆。これは失敗作だったんだ。それをここまで仕上げてくるとはなぁ。このまま、これ納品しちまうか悩んでたんだよ。」
「えっ?」
意外な言葉に、驚かずにはいられなかった。うまくいかなかった人生で、はじめて良かったと思える瞬間だった。
「これだけ出来るなら文句ないな。いや、こっちから頭を下げるべきか。よろしく頼むな。」
「あ、はい。」
うれしかった。

-30-
Copyright ©mz All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える