小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

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「あっ!」
「どうしたの?」
彼女は驚いていた。
「だって、今、好きな男の子って。そう、言ったよね?」
「うん、言ったよ。」
嫌われてなかったのだ。うれしくなった。思わず跳ね回った。
「ちょっと恥ずかしいよ。」
彼女は僕を制止した。
「ごめん。うれしくて・・・。」
顔が赤くなった。
たどたどしい台詞。そして恥ずかしい時間。それが今の僕にはたまらなくうれしかった。でも、もう跳ね回ったりはしない。少し冷静にならなければ、話も出来ない。
「と、ところでさ。」
「何?」
困った。忘れてしまった。そもそも、なんで僕は彼女を待ってたのだろう。あまりのうれしさに、本来の目的がどこかに消えてしまっていた。
「あ、うん・・・。」
「そんなに緊張しないでよ。こっちまで緊張しちゃうよ。」
「そ、そうだよね。」
思い出せない。どうしたらいいんだ?
「そう言えばさ、千代田君って休みの日どうしてるの?」
「休みの日ねぇ。」
緊張していると思われて、彼女は僕を気遣ってくれたようだ。
「だいたい、寝てるかな。特に用もないしね。」
「じゃ、私と同じだね。私も用ないから、なんとなく終わっちゃう。なんか、もったいないよね?せっかくの休みなのに。」
「そうだね、もったいないね?」
話の流れから、この後なんて言えばいいかわかってる。わかっているからこそ、心臓がおかしな事になっている。喉も渇く。次に発する言葉は、かすれて消えてしまいそうだ。
「・・・あのさ、だから、その、あの、今度の休みにどこか行かない?一緒にさ。」
この後、彼女がなんて答えたのか覚えていない。緊張のし過ぎで覚えてないのだ。真っ白とは、まさにこの事だった。

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