小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

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「いないよな?」
流しを覗き込んで見た。大丈夫だ。スプーンはあるが、奴はいない。少なくとも僕には、そう感じられた。それはスプーンに泡が付いていた事もあった。あくまでも推測の域を出ないが、あいつは何かに僕が映ると活動を始めるのではないだろうか。
そう考えれば、泡が付いている限り問題はない。いつも邪魔くさく思っていた母親のつけ置きが、今日ばかりは役にたった。
僕の推測は正しかった。が、それなのに注意が足りなかった。
夜のガラス窓。明かりがあれば鏡のようになる。流しの前の窓に、僕の姿が大きく映っていたのだ。

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