小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

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ケトルに水を入れセットした。
「これ、いいでしょ?すぐにお湯が沸くんだよ。それに沸いたら、自動的に電源が切れるんだ。便利でしょ?」
キッチンから身を乗り出し、ケトルを自慢した。
「へぇ、そうなんだ。」
返事をしながら、改めて美園の部屋を観察した。女の子らしい部屋だ。特に薄いピンクのフレームの姿見が印象的だった。
美園の言う通り、お湯はすぐに沸いた。テーブルの上に小さなカップが二つ置かれた。
「ありがとう。」
鼓動が美園に伝わらないように、それだけを考え冷静さを保った。何気ない会話を心掛ける。少し息苦しく感じたくらいだ。
何気ない会話はいつしか終わりを告げ、わずかの沈黙が世界を覆った。
重なる唇。この唇に、美園は違和感を感じた。唇がやや冷たく感じた。理由はわからない。
“何?この感じ?”
まだ数えるほどしかキスをしていない。それでも、この感覚は異質なものだとわかる。しかし、今はそんな事はどうでもいい。身を委ね続けた。
ここは二人きりの空間だ。ここで終わる訳がない。それは美園もわかっていた。だから、少し強引なところも、そのまま受け入れていた。
「ん、んん。」
声が漏れた。
「いいでしょ?」
「うん。」
一度流れ始めたら、男はこう言う時止まらない。わかっていた。美園もそのつもりだった。が、止まった。

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