小説『祟り神と俺』
作者:神たん()

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日を重ねる毎に寒さ増す12月。

街はクリスマスシーズンという事もあり、至る所で色鮮やかなイルミテーションが目立つ。
夫婦で、カップルで、友達同士でと迫り来るクリスマスというイベントに向け皆予定を
立てている事だろう。

そんな盛り上がりを見せる街並みに反して、全く興味のない男が一人。

そう、まさに俺。

家が代々住職の家計に生まれ、3人兄弟の末っ子として生を受けた。

それぞれ2つずつ歳が離れてて、俺は今22歳だ。

兄貴2人については後々紹介するとして・・

今の俺は・・まぁ最近よくあるフリーターってやつだ。

適当に大学までいって散々遊び呆けた挙げ句就職失敗。
まさにアホってやつだな。

親父が言うには、
「うちが祭っている神様がお前らを守ってくれる」って言うが、
全く守られた気がしないのは俺だけか?

あんま家業の事については詳しい事は知らないし、
てか、興味もない。
神様なんて言ったって目に見える訳でもなけりゃ話す事さえ出来ない。
お祈りしても願い事なんて叶わんし、ただの自己満だろって俺は思ってる。

まぁ長兄が親父の後継ぐってなった時には心底ほっとしたよ。

頭は丸刈りにしないといけないし、まず正座が耐えられん。

あんな長いお経を覚えるなんて俺の脳みそで出来ると思う?

まず無理だね。

まぁそんなこんなで親にも呆れられて基本家にいると家族の視線が、
痛く当たるから寝る時以外は、街をふらふら彷徨ってるんだがね。

今日も勿論街にいるわけなんだが、特にやる事ないから超暇だ。
お金でも落ちてないかなぁ・・・・




「ちょいとお兄さん。」

「ん?」

いきなり外に店を出してる占い師が声を掛けてきた。

「今暇だから占ってあげよっか?」

はぁ?なんだこのばばぁ。
お前が暇でも俺は・・・・・




暇だよ!ばかやろー!!



と、心の中で呟きながら占い師に一応聞いてみた。

「お金・・掛かるんですよね?」

すると、

「タダでいいわよ。なんか突然あなたの事が気になっちゃってね」



・・・・・。


これは新手のナンパか?

若く見積もっても40代後半・・・。
いくらなんでも守備範囲外なんですけどーー!

まぁタダだし占ってもらうか。

「じゃ、じゃぁ御願いします。」

占い師は向かいに置いてあるパイプイスへと手を差し伸べて、

「それじゃ座って。お名前と生年月日だけ教えて頂戴」

もはや占い師の言われるがままに答えると、目の前に置いてある
如何にも在り来たりな水晶玉に向かって何かぶつぶつ言いながら
一心不乱に覗きこんでいる。


「貴方実に変わった星の下に生まれたみたいね。」

「は?日本に生まれただけですが・・」

なんという低学歴な返答とわかりつつも言ってしまった。

「そういう事じゃないわよ。これからの人生貴方の選択次第ガラっと変わるわよ。」

そんなの占い師の決まり文句だろ・・


「ん?なにかしらこれ」

占い師が水晶玉を見ながら不思議そうに言った。

「なんかよくない事でもあったんですか?」

もはや、速く帰りたいと思い始めていた。
すると占い師が、

「貴方の深い所を見ようとしたら黒いモヤモヤしたものが出てきて何も見えないわ」

深い所って・・
何見ようとしてんだよ。
もうどうでもよくなってきていたら目の前の水晶玉に突然ヒビが入った。
あまりの出来事に占い師も俺も混乱。


「な、なにが起きたんですか!?」

「あ・・貴方の近くに何か邪悪な物が見えるわ・・・」

へ?何を言い出すんだこのばばぁは。

「気を付けた方がいいわよ。こんなに悪寒が走ったのは初めてだわ。」

そういうと足早に荷物を纏めだし占い師は去って行ってしまった。

「はぁ・・」

もはや溜息しかでない。
うちは神社だぞ?
邪悪な物が近くにある訳ないじゃんかよ。

ふと腕時計に目をやると20:30とデジタル表示している。

「もうこんな時間かよ!」

街のイルミネーションが明る過ぎて気付かなかったが、
1時間近く占い師と一緒にいたみたいだ。

「まぁ帰るか。」

1日停めても500円のコインパーキングまで俺は戻った。

そこには黒く輝くインテグラが停めてある。

俺の愛車だ。

なぜか車は大好きで整備師に一時期は真剣になろうと
考えた程だ。

まぁこの性格上、整備士資格を取る為の学校だったり試験だったりが
めんどくさく感じて断念したんだがな。

精算機に薄く痩せ細った財布から500円を取り出し
入れる。

レバーが下がります。とアナウンスを受けて愛車に乗りこんだ。

「車に乗ってる時が一番落ち着くなぁ」

「明日洗車してやっからな」

もはやアホだなとわかりつつも車の事になると、
周りが見えなくなってしまう。

ヘッドライトを付けて、ローギアにセットし、
低音を響かせながら家へと向かう。

運転中にふと占い師の言っていた邪悪な物というのが気に掛かった。

実は俺が小さい頃にに1度だけ嫌なオーラというのか、見ただけで気持ち悪くなった事がある。
それは、うちの神社の奥に祭られてある刀を見た時だ。
まだ俺が小さい頃、祭事の時に特別に見せて貰ったんだが、
その刀を中心に五本の杭のような物が刺さっていて、まさに何かを
封印してるような光景だった。


「今まであの刀について聞いた事なかったけど、帰ったら一度聞いてみるかな」


そんな事を思いながら帰宅した。

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