小説『ハイスクールD×D〜転生せし守り手〜』
作者:ブリッジ()

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Life.11〜散りゆく夢、ぶつける闇(憎しみ)〜














「アーシアァァァァッ!!!」

俺の声が部屋中に響いた。

大きな光が治まると、堕天使レイナーレの全身から緑色の光が発した。

「うふふ。アハハハハハハッ! ついに手に入れた! 至高の力! これで、これで私は至高の堕天使となれる! 私をバカにしてきた者達を見返すことができるわ!」

レイナーレは狂ったように高笑いを上げる。

堕天使はどうでもいい。アーシアの様子がおかしい。まるで生気が抜けたみたいだ。

事は一刻も争うと判断した俺はすぐさまアーシアのもとへ駆け出した。

「ここから先へは行かせん!」

「悪魔め! 滅してくれる!」

神父達がフリードと同様に光の剣を構え、俺の進行を阻む。

「邪魔だ!」

バキッ! ドコッ! ドン!・・・!

俺は拳、蹴り、肘鉄をもって神父達を弾き飛ばす。

「朽ち果てろ! 悪魔!」

蹴散らしても続々と神父達が進行を阻んでくる。

「任せて」

ガキン!!!

木場が剣で神父達に斬りかかる。

「触れないでください」

ドゴッ!!!

小猫ちゃんが神父を蹴り飛ばす。

「御剣君!」

木場と小猫ちゃんが道を切り開いてくれた。

「ああ!」

俺が空いた道を一気に駆け抜け、アーシアのもとへ向かった。

アーシアに駆け寄ると、俺は拘束具を外し、アーシアを抱きかかえる。

「・・・ス、スバルさん・・・」

「助けにきたよ」

俺が微笑みかけると、アーシアも力なく微笑んだ。

何だ、これは・・・。外傷は特にない。毒などに侵されている感じもない。なのにアーシアの生命力がどんどん失われていく。

「その子はもう死ぬわ。神器(セイクリッド・ギア)を抜いたんだもの。神器を(セイクリッド・ギア)を抜かれた者は死ぬしかないわ」

「!?」

ちっ、やはりか! だったらあいつから神器(セイクリッド・ギア)を・・・、だが、大量の神父に、堕天使。さらにアーシアを抱えたこの状況ではあまりにも分が悪い。ここは一旦・・・。

俺はアーシアを肩に乗せ・・・。

「木場! 小猫ちゃん! 俺はこの子を連れて一旦退く!」

俺はアーシアを抱え、儀式場の入り口を目指す。

撤退を阻む神父を蹴り技で弾き飛ばし、木場と小猫ちゃんが撤退をフォローする。俺が入り口までたどり着くと、木場と小猫ちゃんが振り返り・・・。

「行って。ここは僕達が受け止める」

「・・・すまない」

俺は2人に背を向け・・・。

「皆で部室に帰るんだ。必ず戻ってこいよ」

俺はそれだけ言い残し、先ほど来た廊下を引き返した。

















・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


廊下を駆け、階段を駆け上がり、先ほどの聖堂へとやってきた。

「アーシア、君はもうすぐ自由だ。アーシアがしたいことがいっぱいできるようになるぞ」

俺はアーシアに語りかける。

彼女の生命力がどんどん失われていく。このままでは・・・。

アーシアは俺の言葉を聞いて力無く微笑み・・・。

「ごめん・・・なさい。・・・プレゼントしていただいた服・・・ボロボロに・・・しちゃいました・・・」

「またプレゼントするよ。また一緒に買い物に行こう、なっ?」

俺もアーシアに微笑みかける。

「・・・スバルさんと・・・一緒にお買いものしたこと・・・、絶対に忘れません」

「これからたくさん楽しい思い出を作ろう。この世界は楽しいことがたくさんあるんだから」

「・・・もし、生まれ変わったら、スバルさんと同じ学校に・・・行って、一緒にお買いものして、一緒に・・・」

そんな言葉を紡ぐアーシアを抱きしめ・・・。

「来世のことなんざどうでもいい。それは今やればいい。アーシアの夢。俺が叶えてやる」

俺はアーシアに想いを告げる。しかし、アーシアの身体からはどんどん力が抜けていく。アーシアが震えながら俺の頬に触り・・・。

「私の為に・・・悲しんでくれるんですね・・・嬉しい・・・です」

アーシアの瞳から一筋の涙が流れた。

「・・・ありがとう・・・」

アーシアは微笑み、そして、逝った。

俺の頬に触れていた手は力無く落ちた。

















もうアーシアは動かない。














戸惑いながらハンバーガーを食べる姿も・・・。











何気ない風景に一喜一憂する姿も・・・。













楽しそうに服を試着する姿も・・・。












そして、自分の夢を一生懸命語る姿も・・・。













もう見られない。












「どうしてだよ・・・」

俺はアーシアの身体を抱きしめ・・・。

「どうしてだよ・・・。俺は、前世で数えきれない程の人間を殺した。数えきれない程の人間に死ねと命じた。その全ての命と未来と夢を奪ってきた。碌な死に方はしないだろうと覚悟をしていた。そうなることも受け入れていた。・・・けど・・・、最後には幸せを掴み、満足をしながら逝くことができた。こんな俺がだ・・・なのに」

俺は天を見上げ・・・。

「何故この子が不幸にならなきゃならない! 何故この子が死ななきゃならない! 俺ですら掴んだ幸せを、何故この子が掴むことができない! この子の望みは些細なことなんだぞ? 一点の曇りもない、些細な夢を、何故この子から奪うんだ! 魔王がいるんだから神だっているんだろ? この世界の神よ! 悪魔にも慈悲を与える程の優しい子を・・・、見放されてもなお神への信仰を忘れない子を何故救ってやらないんだ!」

俺の心には怒りや憎しみが染まっていった。この子を見捨てた神や世界に・・・。そして、アーシアを守れず、夢を叶えてあげられなかった自分自身に・・・。

俺はアーシアを聖堂の長椅子に寝かせ、両手を胸の上で組ませた。

「許さねぇ。アーシアを不幸にした奴全員・・・。まずはお前からだ・・・」

俺は立ち上がり、振り返る。そこには嘲笑を浮かべた堕天使レイナーレがいた。

「堕天使レイナーレ、アーシアの夢を奪った罪、その命で償ってもらうぞ」

俺はレイナーレを睨み付けた。

「見てご覧なさい。ここに来る途中、下で、騎士『ナイト』の子にやられてしまった傷・・・」

レイナーレが傷口に自分の手を当てる。手から淡い緑色の光が発生し、傷をどんどん癒していく。

アーシアの力・・・。

「その力はアーシアだけの物だ。お前にはふさわしくない。返してもらうぞ」

俺がそう言うとレイナーレは高笑いし・・・。

「返すわけないでしょう? これのおかげで私の地位も約束され、偉大なるアザゼル様やシェムハザ様のお二方の力となれる! 私は至高の堕天使になれるのよ!」

俺は高笑いをしながら語るレイナーレを一笑し・・・。

「1つ教えてやるよ。強者がなぜ強者なのか分かるか? それはな、生まれながらの強者だからだ」

「・・・何が言いたいの?」

「分からないか? 三流がいくら強力な道具や武器を得ようとも、所詮三流なんだよ」

俺の言葉にレイナーレは笑いをやめ、険しい怒りの顔を浮かべ・・・。

「言葉に気を付けなさい下級悪魔。楽に死にたいでしょう?」

「ハッ! 一流気取りの三流ほど、哀れなものはないな」

「・・・そう、そんなにお望みなら今すぐ殺してあげるわ」

レイナーレが手に光の槍を作り出した。

「手加減した前とは違って今度のは全力よ。あの子共々跡形もなく消し飛ばしてあげるわ」

レイナーレの槍の光が強く、どんどん濃くなっていく。

「じゃあね、バカで薄汚い下級悪魔君」

レイナーレは槍を振りかぶった。

俺は槍が投擲される瞬間にレイナーレに飛び込み・・・。

バチィィィィィィッ!!!

槍の先端を掴みあげた。掴んだ手からは煙が上がる。

「アハハハッ! あなた本当にバカなの? 光は悪魔にとって猛毒よ! 触れるなんて愚の骨頂よ! そんなに死にたいならすぐに殺して・・・『うるせぇよ・・・』っ!?」

俺はレイナーレを睨み付け・・・。

「光が猛毒? バカはてめぇだ。この程度の淡い光で、俺の闇(憎しみ)を消し去れるわけねぇだろ!!!」

俺は槍を掴んだ手に力を込める。

「おぉぉぉぉぉぉっ!!!」

バキィィィィィィン!!!

槍は音を立てて砕け散った。

「・・・嘘・・・、嘘よ・・・、私の全力の光の槍を・・・素手で握りつぶしたなんて・・・」

レイナーレが驚愕の表情を浮かべる。

ザッ・・・。

俺が一歩レイナーレに歩み寄る。

「ひっ!」

レイナーレが短い悲鳴を上げながら再び光の槍を今度は両手に1本ずつ作り出し、俺に投げつけた。

パキィ、パキィィィィン!!!

俺はその光の槍に拳をぶつけて粉々にした。

「お前の抱いた淡い夢、今から悪夢に変えてやる」

ザッ・・・。

さらにもう一歩踏み出した。

「何故・・・、あなたは悪魔に転生したばかりの下級悪魔のはず・・・。何故あなたから上級悪魔の波動を発しているの・・・」

レイナーレの顔には恐怖が浮かび上がっていく。

「そんなことは死んだ後にゆっくり考えろ」

ザッ・・・。

さらにもう一歩踏み出す。

「い、いやぁ!!!」

バッ!!!

レイナーレは恐怖に耐えられなくなり、俺に背を向け、黒い羽を出すと、この場から逃げ出そうとした。

俺はすぐさま回り込み・・・。

ガシィ!

レイナーレの顔を右手で掴みあげた。

「お前に逃げ道なんてねぇよ。あるのは・・・」

俺は顔を掴んだままレイナーレを持ち上げ・・・。

「死、だけだ!」

バコォォォォォン!!!

そのまま地面にレイナーレの後頭部を叩きつけた。

「ガハァッ!!!」

レイナーレは苦悶の声を上げ、意識を失った。

俺は気絶したレイナーレには目もくれず、アーシアに歩み寄った。

「・・・こんなことしても、アーシアは戻らない・・・。何も変わらない・・・。ただ気が晴れるだけだ・・・」

俺は両手の拳を強く握り、きつく歯を食い縛った。
















続く

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