小説『ハイスクールD×D〜転生せし守り手〜』
作者:ブリッジ()

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Life.43〜トップ会談開催、語る自身の理想〜














「さあ、行くわよ」

オカルト研の部室に集まるグレモリー眷属。ついにこの日がやってきた。

今からこれより、三大勢力の会談が始まる。

会場は駒王学園の新校舎、その建物の職員会議室で行われる。すでに各陣営のトップ達は別室で待機している。

現在、この学校は強力な結界が張られており、外部から内部への侵入はできず、また、会談が終わるまでは内部から外部へ出ることもできない。

そして、その結界の外には、天使、堕天使、悪魔の軍勢がぐるり囲んでおり、木場曰く、一色触発だったのこと。

「ぶ、部長! み、皆さん! いってらっしゃいですぅぅぅっ!」

ギャスパーが段ボールの中からグレモリー眷属の出立を見守る。ギャスパーは部室にて留守番だ。理由は、まだ自身の持つ神器を制御できないからだ。何かの拍子に神器を暴走させたらシャレにならない。特訓を重ね、だいぶ制御はできるようになったが、まだまだ御するには程遠い。

「ギャスパー、良い子にしてろよ? ほら、これ置いとくからこれで時間潰してろ」

俺はギャスパーに書物を手渡す。

最近ではギャスパーは怯えると段ボールに入り込む習慣ができてしまった。

「・・・・・・はぅ、この本難しいですぅ〜。ソンシってなんですか〜!?」

うーん、孫子はギャスパーには難しすぎたか。

「だったらほら、携帯ゲーム機も置いとくからよ。これで遊んでろ」

「は、はい。いってらっしゃい、昴先輩!」←とりあえず、俺の呼び名は昴先輩に落ち着いた。

その言葉を聞くと、俺達は部室を後にした。












          ※ ※ ※


コンコン。

「失礼します」

部長が職員会議室の扉を叩き、中へと入室する。

室内は、豪華なテーブルが鎮座しており、それを囲むように各勢力のトップ達が座っていた。

悪魔側はサーゼクス様とレヴィアタン様。グレイフィアさんが給仕係としてお茶用の台車の脇で待機している。

天使側は先日のミカエルさんと、初見の女性天使が1人。

堕天使側はアザゼルさんと、白龍皇のヴァーリだいた。アザゼルさんは以前のようなラフな衣装ではなく、装飾の凝った黒いローブを着ていた。さすがにそれくらいの常識はあるらしい。

「私の妹と、その眷属だ。先日のコカビエルの襲撃で彼女達は活躍してくれた」

サーゼクス様から俺達の紹介がなされ、部長が会釈をした。

「報告は受けています。改めてお礼の言葉を述べさせていただきます」

ミカエルさんが部長に礼を言った。部長はそれに対して冷静に会釈をする。

「あー、悪かったな。俺のところのバカ(コカビエル)が迷惑をかけた」

と、アザゼルから何とも悪びれた様子が見られない謝罪がなされた。

その態度に部長は口元を引くつかせている。

俺達はサーゼクス様の指示で壁側に設置されている椅子に腰掛けた。すでにその席にはソーナ会長が座っていた。

全員が着席し、ついに会談が始まった。

「全員が揃ったところで、会談の前提条件を1つ。ここにいる者達は、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

会談の最初はサーゼクス様のこの言葉から始まった。ソーナ会長は特に驚いた素振りを見せていないため、事前に聞かされていたのだろう。

会談は着々と進んでいく。









・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


「で、あるように、我々天使は―――」

「そうだな。このままでは確実に三大勢力は滅びの一途を―――」

ミカエルさんやサーゼクス様がそれぞれ発現をしていく。

「ま、俺らは特にこだわる必要性を感じないがな」

時折喋るアザゼルさんの発言が場を凍りつかせることがある。傍目からはその空気を楽しんでいるように見える。

ありゃ、わざとだな。

ああやって周りを怒らせて、本音を引きだしたいというのが本当の狙いだろう。頭に血が昇った時ってのは大概本音が出るからな。

飄々としているが、やっぱり喰えないな。

ただ、サーゼクス様もレヴィアタン様、ミカエルさんもそれを理解してか、特に表情に変化はない。

辺りを見渡す。白龍皇ヴァーリは、目を瞑って俯いていた。寝てるわけではないだろうが、心底退屈そうだ。

部長は、気丈に振る舞っている・・・かのように見えるが・・・微かに手が震えている。

俺の視線に気付き、こちらを向くと、苦笑を浮かべた。

スッ・・・。

俺の手をそっと握った。

その震えが俺の手に伝わる。三大勢力の今後を左右する会談に参加しているのだから当然か。

俺は握られた手に力を込めた。すると、部長の震えが多少だが治まった・・・気がした。

これは長くなるかな・・・。

何時間・・・、いや、もしかしたら、今回の会談では終わらないかもしれない。

魔王を失った悪魔。神を失った天使。さらに、大勢の幹部を失い、真っ先に戦争から退いた堕天使。いずれも本音は和平を結びたいのだろう。だが、迂闊にその和平を口に出せない。なんせ、途方もない年月に亘って争ってきた3つの勢力だ。当然、遺恨もあるだろうし、何より、信憑性も問われる。

迂闊に和平という餌に飛びつけば、『なら、その信頼の証を見せろ』ということになる。そうなれば、多少、不利な条件で和平を組まざるを得なくなる。条件を突っぱねれば、信頼は失い、さらにはトップとしての資質も問われることになりかねない。

浅ましい考えだが、勢力のトップとは、その下に属する者や民のことを考え、行動しなければならない。和平のために不利な条件は飲んでそのツケを民にまわしてはならない。

早い話、これが政治だ。

俺がそんなことを考えていると・・・。

「リアス。先日の事件についての説明をしてもらおうか」

「はい、ルシファー様」

部長が先日のコカビエルとの一戦の折の一部始終の説明を話し始めた。

部長は淡々と事件の概要を話していく。とはいえ、一見、冷静に振る舞っているかのように見えるが、俺から見ると、やはりその胸中は穏やかではなさそうだ。

報告を受けた三大勢力のトップの反応はそれぞれ違っていた。

「以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件の報告です」

「ご苦労、座ってくれたまえ」

すべてをつつがなく言い終え、サーゼクス様の一言で着席をする。部長の表情は胸のつかえが1つ取れたといった感じだ。

「ありがと、リアスちゃん☆」

そんな部長にレヴィアタン様がウインクを送っていた。

「さて、アザゼル。この報告を聞いたうえで堕天使総督としてのあなたの意見を聞きたい」

サーゼクス様のその問いに不敵な笑みを浮かべながら話し始めた。

「先日の事件はグリゴリの幹部、コカビエルが他の幹部や総督の俺に黙って独断で起こしたことだ。だから、その処理は白龍皇がおこなった。後は組織の軍法会議に照らし、コカビエルは地獄の最下層(コキュートス)で永久冷凍の刑に処した。もう出てこられねぇ。その辺りはこの間に転送した資料に記載しておいただろう? それが全部だ」

その回答にミカエルさんは嘆息しながら言う。

「説明としてはいささか、いえ、かなり最低の部類ですが、あなた個人が我々と大きく事を構えたくないという話は知っています。それに関しては真なのでしょうか?」

「本当だ。俺は戦争に興味なんざない。コカビエルも俺のことをこきおろしていたとそちらの報告であっただろう」

まあ、確かにコカビエルはアザゼルさんのことを良くは言ってなかったな。

続いて、サーゼクス様がアザゼルさんに質問をぶつけた。

「アザゼル、どうしてここ数十年、神器の所有者をかき集めていた? 当初は戦力の増強と考えていたが、天界と我々、どちらにも戦争をしかけてくる気配はなかった」

「いつまで経ってもあなたは戦争を仕掛けることはなかった。白い龍(バニシング・ドラゴン)を陣営に引き込んだと聞いたときは強い警戒心を抱いたものです」

ミカエルさんも同様の意見だったらしい。

「神器の研究のためだよ。何なら、その一部の研究資料を送ってやろうか? だが、それは戦争のためじゃねぇ。今更戦争に興味はないからな。その辺は部下にも徹底しているぐらいだ。宗教に介入するつもりも悪魔業界に影響を及ぼすつもりもねぇ。・・・あ〜あ、俺の信用は三すくみの中で最低かよ」

「それはそうだ」

「そうですね」

「その通りね☆」

俺も同感だな。いまいち、この人からは胡散臭さが抜けない。

その反応を見て、アザゼルさんは面白くなさそうに耳をかっぽじっていた。

「チッ。神や先代のルシファーよりもマシかと思ったが、お前らもそれと同様に面倒だな。ったく、これ以上こそこそと研究するのは無理か。あー、わかったわかった。なら和平を結ぼうぜ。天使も悪魔も、もともとそのつもりだったんだろう?」

アザゼルさんの口から出た和平という言葉にこの場にいる一同全員が驚愕した。俺も同様だ。

・・・なるほどね。これを狙っていたのか。

腹の内を探るにしてはやけに度が過ぎると感じていたが、この状況を作り出したかったのか。

和平締結に相応しくない言動や態度が目立っていただけにその発言に全員が驚愕し、信憑性の追求ができないでいる。

政治的な問題をとんでもない力技でねじ伏せやがった。

堕天使総督の肩書きは伊達じゃないな。

アザゼルさんが開口一番に和平を口にしたことにより、会談は佳境へと向かっていった。もともと、悪魔側も天使側も和平を望んでいたこともあり、話はトントン拍子で進んでいく。

その後、会談は今後の戦力についてや、現在の兵力、各陣営との対応、これからの勢力図についての話に続いていった。

「―――と、こんなところだろうか?」

サーゼクス様のその一言で、お偉い方は大きく息を吐いた。重要な案件についての話が終わった。

「さて、話し合うことはだいたい終わったことだ。そろそろ俺達以外に、世界に影響を与えそうな奴等の意見を聞いてみるか。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」

アザゼルさんのこの問いかけに、ヴァーリは笑みを浮かべて答えた。

「俺は強い奴と戦えればいいさ」

まあ、何とも期待通りの回答だ。こいつの好戦的な性格は筋金入りみたいだな。

次にアザゼルさんの視線が俺に移った。

「赤龍帝、お前はどうだ?」

「そうですね、現状は我が主、リアス・グレモリー様のために尽くすだけです」

「ほう、それだけか? お前は世界を動かすだけの力を秘めているんだぞ?」

俺の回答に、アザゼルさんは面白げな表情で再度尋ねてきた。

「世界を、ね。だったら私はこの力を、その世界を1つにするために使いたいですね」

「世界を1つに?」

俺のこの発言に、サーゼクス様が疑問の言葉を漏らす。

「悪魔、天使、堕天使だけではなく、それ以外のあらゆる神話体系の者達が1つになり、手を取り合っていく世界。私はこの世界がそうなることを望みます」

「「「「「!?」」」」」

俺のこの発言に先ほどアザゼルさんの言葉以上に驚愕していた。

「私は戦争が嫌いです。戦争は憎しみを生み、連鎖し、やがては滅びの一途をたどってしまう。あらゆる夢も可能性も、戦争は消し去ってしまう。それはとても悲しいことです。だから私は、皆が笑って手を取り合って笑って暮らせる世界。そんな理想の世界。これが私の望みです」

俺の発言にこの場の一同全員が呆気に取られている。

ま、そうだろうな。最近悪魔になった奴が何を言ってるんだ、てな話だ。

場が沈黙する中、最初に口を開いたのはアザゼルさんだった。

「くっくっくっ。何とも世間知らずな発言だ。理想論で甘っちょろい、この場でそんな発現ができるなんざ、大した度胸だ」

アザゼルさんは面白おかしそうに笑い声をあげた。

「だが、面白いな。不思議と、お前の言葉には重みを感じる。ただの理想論には聞こえないな」

「同感です。悪魔になり立てでありながら、広い視野を持ち、かつ、自身の力を世界の調和のために行使する。なかなか言えることではありません。とても感心させられます」

アザゼルさん、ミカエルさんと、好評とも取れるお言葉をちょうだいした。

お恥ずかしい限りだな。

「とはいえ、私はまだ下級悪魔に過ぎません。今は主のもとで―――っ!?」

俺は周囲を見渡す。

「昴?」

俺のこの行動に、部長が疑問の声をあげる。

「部長、今この学校は、結界が張られてて、内外共に出入りはできないんですよね?」

「え、ええ、そうよ」

「おかしいです。誰かが学校に入り込んでいます」

「えっ?」

部長のその言葉と同時に覚えのある感覚が肌を襲う。

まさか、この感覚は・・・!

和平締結が現実となったこの瞬間、新たな火種がやってきた・・・。











続く

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