小説『ハイスクールD×D〜転生せし守り手〜』
作者:ブリッジ()

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Life.50〜帰郷、冥界へ・・・〜














「ふわぁ・・・」

朝になり、目を覚ました俺。

「う・・・ん・・・」

「むにゃ・・・」

ベッドの真ん中には俺が、俺を挟み込むように部長とアーシアが俺の腕を枕にスヤスヤと眠っている。

もちろん、情事はしてないからな?

2人共、安らかな寝顔を浮かべて眠っているため、起こすのは少々はばかられる。

それにしても・・・。

「両腕が尋常じゃないくらいに痺れた・・・」

長時間に亘って腕を枕にされた影響で、腕の血行が悪くなり、肘から下が痺れに痺れきってしまった。

「さて、どうするか・・・ん?」

その時、俺の足元に何やらもぞもぞと動くものがあった。それは、徐々に俺の顔へと迫ってくる。

「とーちゃーく。うふふ、おはよう、昴君♪」

すると、掛布団の中から朱乃さんが登場した。

「えーっと、何をしてるんですか、朱乃さん?」

そこから現れたのは朱乃さんだった。朱乃さんは薄い浴衣のようなものを着ている。

だが、下着の存在は確認できず、下から這いずってきた影響で若干肌がはだけ、その巨大な胸の北半球が露わになっている。

「ふふっ、昴君を起こしにきたのですわ。・・・チュル・・・」

そう言って、朱乃さんは、俺のパジャマのボタンを上3つ程開け、露わになった上半身に舌を這わせ、首筋まで舌を運んだ。

「ん// ・・・あ、朱乃さん、その・・・、朝から何を・・・」

「やっぱりたくましいわ。あなたの肌に直に触れていると、ん// ・・・何だか身体が火照ってきましたわ・・・」

顔を上気させる朱乃さん。その熱は俺にまで伝わってくる。

「いけないわ。横にリアスとアーシアちゃんが寝ているというのに・・・。でも、それがたまらないわ//」

朱乃さんは俺の腰の上で馬乗りになり、左手の薬指を舐め、恍惚の笑みを浮かべている。

ま、まずい・・・、久しく見る朱乃さんのどSモードだ・・・。

どうにかしなければ・・・、だが、両腕は部長とアーシアに塞がれているうえに、痺れ切っているために動かす事ができない。腰には朱乃さんが跨っているので、こちらもダメ。何より、大騒ぎして、部長とアーシアが目を覚ましたら・・・考えたくもないな・・・。

「あらあら。リアスとアーシアちゃんは私達のお膳立てをしてくれるようですし、朝から昴君と・・・あぁ・・・//」

どんどんその熱を上げていく朱乃さん。

その光景は、さしずめ、ライオンに押し倒された小鹿さながらだ。

全身から汗がダラダラと流れてくる。

「昴君は何も心配しなくてもいいわ。痛いのは私だけ・・・。さあ・・・、このまま・・・」

朱乃さんの顔がどんどん俺に近づいてくる。

これは、やばい・・・やばいですぞーーーっ!

成す術もない俺、その時・・・。

「朱乃・・・、さあ? このまま? これから何を始めるつもりなのかしら?」

俺の横から助け舟が。

助かった!

そう思ったのも束の間・・・。

「っ!」

そこには、不機嫌の極みの表情で朱乃さんを睨み付ける部長がいた。

現れたのは救世主ではなく、阿修羅だった。

「あらあら。これから私の昴君ととっても気持ちのいいスキンシップを始めようというのに、無粋ですわ」

その一言に、部長から赤いオーラと殺気が溢れだした。

「『私の』? あなた、いつから昴の主になったのかしら?」

「昴君は私の可愛い後輩ですわ。後輩を可愛がることの何がおかしいのかしら?」

朱乃さんは特に悪びれる様子もなく、そう言ってのけた。

その様子に部長のボルテージはさらに増大していく。

「盗人たけだけしいとはこの事ね・・・。ここは私のいわば聖域よ。アーシアならいざ知らず、他の者は決して侵してはならない領域よ」

部長の言葉に朱乃さんはクスクスと笑いを笑みを浮かべる。

「あらあら。要は、私に昴君を取られることが怖いだけじゃない。誰と契りを結ぶか、それは早いもの勝ちだわ。そんなにやきもちを焼いては器が知れるわよ?」

ブチッ!

うわっ! 切れた! 今絶対何かが切れた!

「どうやら、あなたとはO☆HA☆NA☆SHIする必要がありそうね・・・」

部長はワナワナと身体を震わせ、膨大な赤いオーラを醸し出しながら朱乃さんに顔を近づける。

「あら、話し合いしては物騒なオーラが漂っていますわね」

そう言うと朱乃さんから黄金のオーラが。

一色触発の空気に身体を震わせる俺。

「うにゅ・・・、もう、朝でしゅか・・・」

異変を察知したのか、アーシアが目を覚ます。だが、まだ完全には覚醒していないようだ。

「まだ大丈夫だよ〜。ゆっくりお休みしような〜」

俺はアーシアの頭をナデナデする。

「ふみゅう・・・、では、スバルしゃんに抱っこしてもらいながら眠りましゅぅ・・・」

そう言って、アーシアは俺の胸に抱きついてスヤスヤと再び眠り始めた。

アーシア・・・、アーシアが参戦しても討死するだけだ。何も知らせずに眠らせてあげよう。

そのころ、俺の頭上では・・・。

ぼふっ! ばふっ! ぼふん!

猛スピードで枕が飛来していた。

「もう! あなたは私の大事なものに無断で触れ過ぎなのよ!」

「あら、少しくらい良いじゃないの! 少しは下僕に情けを与えなさいよ! ホント、あなたはケチだわ!」

投げつけらてた枕を拾い、投げ返す朱乃さん。

もはや、俺の寝室は修羅場と化していた。

ダメだ。もはや俺じゃあ収集つかん。

俺は、誰にも気づかれないように寝室を後にした。











・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


「まさか、俺が足元に来るまで朱乃さんの存在に気付けなかったとは・・・ん?」

家の廊下を歩いていると、俺は、何やら違和感を覚えた。

俺の家の廊下って、こんなに広かったか? いや、それ以前に、やたら豪華な電燈なんて天井にぶら下がってなかったぞ。

思えば、俺の寝室もやたら広かったような・・・。

俺は廊下を駆け、階段を降り、外へと出て、庭から家の全容を見た。

「・・・ハハハ。言葉にできないとはこのことだな」

もともと広かった俺の家。昨日までは確かに同じだった。

それが本日明朝、階層と敷地が増え、さらに大きな家へと変貌を遂げていた。












          ※ ※ ※


やがて、部長と朱乃さんの諍いも、一旦は終結し、とりあえず朝食を取ることになった。

食卓には、俺に部長にアーシア。それと朱乃さんとゼノヴィアだ。

当然、いつも朝食を取っているリビングも大きくなっている。

そこで、部長に事情を聞いてみると・・・。

「昨日の夜の内にリフォームしたのよ。もともと広い家ではあったけど、大勢で住むには、やっぱり、もう少しスペースが必要だわ」

とのこと。

そういえば、朱乃さんとゼノヴィアが来た時に改築するとか何とか言ってたっけか・・・。

これは悪魔だからできることなのか、それとも、部長の家の力でできることなのか。・・・両方か?

ま、今さら驚くまい。いい加減慣れてきた。

俺の家がレベルアップした。

地上と地下に階層が増え、エレベーター、銭湯、室内プール、サウナ、空中庭園が完備された。

「ちなみに、とても頑丈に造り替えたから、たとえ戦争になってもビクともしないわ」

・・・どうやら、世間で問題視されている耐震問題も万全のようだ。

もしかしたら、大砲なんかも後々出てくるかもな。










          ※ ※ ※


朝食を終え、食器を片づけ終えると、リビングでひとまず談笑することになった。

朝食後、すぐに木場と小猫ちゃんとギャスパーが家にやってきた。

俺は、棚から人数分のカップを取り出し、サイフォンでコーヒーを作り、1つずつカップにコーヒーを淹れ、テーブルに備え付けている椅子に座る皆の前に1つずつ置いていく。

「そういえば、部長。夏休みの予定って、何かあるんですか?」

コーヒーを淹れながら部長に尋ねてみた。

「ええ、もちろんよ。夏休みは故郷へ帰るわ。これは毎年の恒例行事よ」

「そうですか」

ま、学校も長期休暇に入ったし、そりゃ、里帰りだってするよな・・・。

それにしても、部長の故郷となると、冥界か。前に1度、部長の婚約パーティーを妨害するために行っただけだけど、空が紫色だったな。

「長い休みですし、ゆっくりなさってください。部長」

「言っておくけど、あなたやアーシア達も一緒に行くのよ?」

「え? そうなんですか?」

俺がキョトンとして部長に聞き返すと、部長は溜め息を吐いて説明を始める。

「あなた達は私の眷属で下僕なのだから、主に同伴するのは当然でしょ? 長期旅行になるから、入念に準備しておいてちょうだい」

そりゃそうか。特別な事情でもない限り、主に行先に下僕が同伴するのはあたりまえか。

「冥府に行くのは初めてです。まさか、生きてる内に行くことになるなんて・・・、死んだつもりで行きたいと思います!」

アーシアが変な気合の入れ方をしていた。

「冥界か・・・、天国を目指していた私がよもや、地獄に行くことになるとはな。興味はあったが・・・、皮肉かな、今の私にはお似合いなのかもな・・・」

などと呟きながら沈み込むゼノヴィア。

俺より後に眷属なったアーシアとゼノヴィアは当然、冥界に行くのは初めてか。前の婚約パーティーには、アーシアは出席しなかったし。

「期間は8月の20日過ぎまで残りの夏休みを過ごしてもらうわ。修行や諸々の行事を冥界で行うから、そのつもりでいなさい」

なるほど。それにしても、修行か、環境が変われば、修行もはかどるかもしれないな。

「昴、夏休みは何か予定があったかしら?」

「いえ? 修行以外はこれといって予定はありませんが・・・」

同じクラス、他クラス、他学年の女の子から終業式の時にやたら買い物やら何やらに誘われたが、俺は全部断った。修行したいしね。

「そう。なら、時間が取れたら冥界で私とデートしましょう。人間界同様、冥界にも街があるから、楽しみにしていなさい」

「あー、はい。そういうことでしたら、喜んで御同行致しますよ」

「あらあら、でしたら、私とも一緒に過ごしましょう。お部屋で2人きりで、部長にもできないようなエッチなことを・・・」

朱乃さんは自身の大きな胸を左腕で持ち上げ、右手で自分の胸をなぞりながら言ってきた。

「ダメよ」

「いやよ」

早朝の時と同様に再び部長と朱乃さんの間に火花が飛び散り始めた。

俺は、苦笑しながら2人から視線を逸らした。

「それで、アザゼル先生はどうするんです? 一応、オカルト研究部の顧問ということですが・・・」

俺はそう言って、テーブルの端の椅子に座っているアザゼル先生にコーヒーを淹れたカップを置いた。

「当然、俺も冥界に行くぜ」

置かれたコーヒーをズズズッと口にした。

「「「「「っ!?」」」」」

俺以外の全員が椅子に座るアザゼル先生に驚愕していた。

この黒髪にちょいワルイケメンの方は、オカルト研究部の顧問であり、その実、堕天使の集まりである、神々の子を見張る者(グリゴリ)の総督である方だ。

「ど、どこから入ってきたの?」

部長は目をパチパチさせながらアザゼル先生に尋ねた。

「普通に玄関から入ってきてましたよ?」

俺が代わりに説明した。

俺以外は誰も気付くことも勘づくこともできなかったようだ。

「そりゃ修行不足だな。ちっとは昴を見習え。こいつは俺が敷地に足を踏み込んだ時点で気付いてたぞ」

アザゼル先生がそう言うと、皆の視線が俺に集まった。

「んーまぁ、禍の団(カオス・ブリゲード)とか名乗るテロリストが現れましたからね。常に半径200メートル圏内には気を張ってますよ」

物騒な奴らが現れたため、警戒は怠らない。その気になれば、半径1キロぐらいまで警戒網を張れるが、それをするには常に気を張り続けなければならないため、それだと心身共に疲弊してしまうため、普段通りに振る舞えるギリギリの200メートルにとどめている。

と言っても、それでもアザゼル先生の存在を俺の家の敷地に侵入するまで気付けなかったわけだが・・・。

「ま、そこまで気を張んなくても、三大勢力が手を取り合って最大の警戒をしているこの街に攻撃を仕掛けるバカはいねぇから安心しろよ(ったく、脅かしてやろうと忍び足で来たっていうのによ。まったくかわいくねぇ奴だ。気配探知に関しては魔王級だな、こいつは・・・)」

他のグレモリー眷属は、俺達のやり取りを茫然としながら見ていた。

「とにかく、俺も冥界に行くぞ。何せ、お前達の『先生』だからな。冥界でのスケジュールは、と・・・リアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。それと、新鋭若手悪魔同士の会合。それと、お前達の修行だな。俺は主にお前達の修行に付き合うことになるな。お前達がグレモリー家にいる間、俺はサーゼクス達と会合か。ったくよ、面倒くせぇたらありゃしねぇ・・・」

と、嘆息するアザゼル先生。

その姿は本当にめんどくさそうだ。

これで堕天使のトップだってんだから驚かせる。

けど、これでいて堕天使からの人望はかなりあるんだよな。協定を結んだ時も、堕天使のほとんどが付き従ってきたし、時折、身辺警護や秘書など、身の回りの世話を引き受けるために訪問してくる者もやってくる。

それらは全部追い返しているみたいだが・・・。

それだけ、慕われているわけだ。

そうでなきゃ、癖がありそうな堕天使達をまとめることはできないか。

それにしても、冥界か。奇怪な人生を送っていると、いろいろあるもんだな。

今度はゆっくり堪能することができそうだ。それが楽しみだ。

何より、修行ができる。

もっと強くならないとな。

和を乱す、禍の団(カオス・ブリゲード)が現れたし、ヴァーリとの再戦にも備えなければならない。

次会う時は、ヴァーリはもっと強くなっているだろう。あいつは才能に胡坐を掻くような奴じゃないからな。それに、ヴァーリ以外にも強敵はいるだろうしな。

とりあえず、基本的な能力の底上げをして、後は、もっと神器の事を知って、神器をもっと操れるようにしよう。

俺が力を振るう理由は、仲間を守るためにある。

俺は守りたい。部長も、ここにいるグレモリー眷属も・・・。

「強くなるぞ。もっともっと。守るために・・・」

俺は決意を固め、冥界に臨むのだった。










続く

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