小説『プライベート・ホスト』
作者:ウィンダム()

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それから数日後。

昭吾の携帯電話にメッセージが入った。
 
  洋子 PM1800 2H HH702

洋子からだ! 

昭吾は早速、
 
  OK

と返信する。

授業が終わると一端アパートへ戻る。
そして例のカプセルと装備品の入ったケースをポケットに入れると急いでJRK北口へと向かった。
昭吾は駅ビルのトイレでスーツに着替えるとロータリーのタクシー乗り場へと向かう。
すると、
 
  黒崎君!

と声を掛けてくる者がいる、
声から判断すると玲子のようだ。
昭吾は振り向くと、思ったとおり私服姿の玲子が立っている。
玲子は心配そうな顔で、
 
  どこへ行くの?

と聞いてくる。
昭吾はうろたえると、
 
  や、やあ、君か・・・。

玲子は真剣な眼差しで、
 
  ビジネスね? そうなんでしょ?

昭吾は気を取り直すと、
 
  ああ、そうさ。

玲子は残念そうに、
 
  そう・・・。
  そんなにオバサン達がいいの? 
 
  ん? ただのビジネスさ。

と笑う昭吾に、
 
  監視下に置かれていながらも、そうやってあなたはオバサン達のところへ行く・・・。
  それならわたしのオンリーになったほうがずっと安全じゃないよ!

嫉妬と悔しさが入り混じったような感情に駆られる玲子に、
 
  シッ、俺と君は監視下に置かれているんだぜ。
  こうやって話すことも聞かれているかもしれない。
  迂闊な表現はヤメにしようよ。

思わず玲子は周囲を見回す。玲子は、
 
  わたし・・・、あなたに捕まって欲しくない、だから、わたしだけの・・・、

玲子の言葉を遮るように昭吾は笑みを浮かべ、
 
  心配要らない、俺は決して捕まりはしないさ。

笑顔で手を振るとタクシー乗り場へと走り去っていった。

Hホテルに着く。
さっそくロビーで702号室の客に面会人が来たと伝えてくれと頼む。

  アキラが来たと伝えてくれればいいです。

するとインターフォンでフロントと702号室の客との遣り取りが済むと洋子のスイートルームへと向かう。

昭吾は『任務』を負っているためか、緊張し心臓が高鳴っている。
居室の前に着くとブザーを押す。
するとガチャリとロックが外れる音がすると洋子が出てきて、
 
  あら、今晩はアキラくん。
  久しぶりね。

と笑顔で迎える。
洋子はムードと会話を楽しむ傾向のあるリピーターだ。
公安刑事から洋子が元高校教師だったことを聞かされたおかげで洋子の好みがやっと理解できた。

部屋に入ると、

  さあ、ソファに座って、今、ルームサービス呼ぶわね。

と昭吾をソファに座らせる。
 
  どうぞ、お構いなく。
 
  あら、いいじゃない、久しぶりなんだから一緒に食事しましょう。

楽しそうに答えるそんな洋子を見ていると、
どう考えても彼女が国際テロ組織のメンバーとはとても思えない。

暫くすると、ルームサービスがワインとパスタ、ピザを運んでくる。
リビングのテーブルに運ばれてきた料理が並べられるとグラスにワインが注がれる。
 
  さあ、食べましょう

席に着くと、洋子と昭吾はワイングラスで乾杯すると食事を始めた。
暫くすると、
 
  あっ、そうそう、見せたいものがあるのよ。

と言うと席を立った。
昭吾はチャンスとばかりにポケットから例のカプセルを取り出した。

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