小説『プライベート・ホスト』
作者:ウィンダム()

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窓から差し込む朝日の光で昭吾は目を覚ます。

すると自分の隣に全裸で横たわる玲子が目に飛び込む。
一瞬なにが起きたのか状況が分からず混乱するが、
昨夜の記憶が徐々に蘇ると状況が飲み込めてきた。

そして玲子も目を覚ますと、なにが起きているのか分からない様子だったが、
すぐに事態を飲み込むと、昭吾を見て微笑み抱きついてくる。
 
  おはよう。

玲子は抱きついたまま朝の挨拶をすると、昭吾も、
 
  おはよう。

と挨拶する。
玲子と昭吾は体を離すと朝の光の中で互いの裸体に見入る。
すると玲子は時計を見ると、
 
  いけない、早くしないとメイドさんが来るわ。

すると二人は急いで下着を着ると身支度をする。
昭吾は玲子のワイシャツが赤く染まっていることに気がつく>

 ねえ、ワイシャツ。

玲子はワイシャツを見ると、赤く染まっている部分を凝視する。
すると急に顔を赤らめ、急いで自分の部屋に駆け上がる。
昭吾はハッと気がついて、ソファを見るがなにも染み込んだ後はない。

どうやら玲子のワイシャツがシーツの役目を果たしたらしい。
部屋から駆け戻ってきた玲子は昭吾とダイニングルームへ行くと、
急いで昨夜の証拠隠滅に取り掛かる。
鍋やボールの残り物は全てビニール袋に移し、
食器類をキッチンへ運ぶと水につけ、飲み残したワインは全て流す。
グラスを洗うと元の場所に戻しボトルは残り物を入れたビニール袋と一緒に手提げの紙袋に入れる。
粗方片付くと玲子は、
 
  黒崎君、あなたは急いで玄関に行って、そしてたった今来たかのような振りをして!

昭吾は了解すると通学バッグを持って急いで玄関へ行き靴を履くと、
あたかも今来たかのような振りをし始める。
するとインターフォンがなりメイドがオートロック解除を願う>
玲子はそれに応じると、急いで通学バッグと手提げの紙袋を持って玄関へ走る。
そして靴を履き終えた丁度その頃、玄関のチャイムが鳴った。
玲子は、
 
  は〜い、

と返事をしてドアを開けると、
 
  あ、おはようございます、お嬢様。

メイドが一礼すると玄関に上がってくる。
玄関に立っている昭吾にメイドが目を配ると玲子はすかさず、
 
  あ、こちらは昨日来たわたしのクラスメイトの黒崎君です。
  実は今日、学校の行事関連で朝早くからその準備がありまして、
  わたしと黒崎君がその担当なんです。
  いろいろと準備するものを持っていかなければならないため、
  今朝早く彼に来てもらったんです。

玲子の機転に合わせるかのように昭吾は、
 
  おはようございます、朝早く窺ってすみません。

と頭を下げると、
 
  あら、そうだったんですか、朝早くからご苦労さまです。

笑顔で一礼すると、玲子は、
 
  じゃ黒崎君、早く行きましょう。

と玄関を出ながら、
 
  行って来ます。

とメイドに告げながら駆け足で門を出る。

早朝の住宅街は殆ど人通りがない。
昭吾と玲子は途中のコンビニで証拠隠滅を完了させる。
玲子は、
 
  ああ、なんとか誤魔化せた。

と一息吐く様に言う。
そんな玲子を見ると昭吾は、
 
  君の機転は大したもんだね、感心したよ、おかけで窮地を脱せたよ。

と笑う。
すると玲子は自慢げに、
 
  この程度のことなら朝飯前よ。

笑う玲子。
 
  でも、君の家から通学することになるとはね。

すると玲子は昭吾を見つめると、
 
  ねえ、君って呼び方やめて。
  わたしには名前があるのよ。

昭吾は気づいたように、
 
  あ、ごめん、早乙女さん。
 
  ファーストネームで呼んで。
 
  え、いいの?
 
  いいわよ、互いに共有する秘密がひとつ増えたのだから。
  誰にも言えないわたしとあなたの新しい秘密が・・・。

ニコリと微笑む玲子に昭吾は悟る。
 
  そ、そうだね、誰にも言えない秘密だね。
  でも、俺と君、いや、玲子さんとの新しい秘密が、
  プライベートでの秘密となったことを感謝するよ。

玲子は昭吾に寄り添うと、
 
  そう思う?
 
  そうさ、俺は玲子さんをビジネスの関係にも対象にもしたくないから。

すると玲子は、
 
  そう、じゃ、手を繋いでくれる?
 
  いいよ。

昭吾は玲子の手を握ると玲子も握り返す。
 
  このまま一緒に歩いていきましょう。
 
  相変わらず大胆だね、玲子さんは。

玲子は昭吾の肩に寄りかかると、
 
  あなたの前でならわたしは本当の自分でいられる・・・。
  何者をも演じることのない本当の自分に・・・。

玲子は昭吾を見つめると、
 
  ねえ、ずっとわたしのプライベートなホストでいてくれる?

昭吾は玲子の肩に手を回し、
 
  いいよ、今日から俺は君だけのプライベートなホストさ。

昭吾と玲子は朝日が昇る街並みを歩いていった。


Fin

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