小説『アイプロ!(10)?活躍?』
作者:ラベンダー()

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〜未公開シーン〜

圭一は飛び起きた。
自分のアパートじゃない。周りを見渡すと、ホテルのような雰囲気の部屋に圭一はいた。

「…どこ?」

思わず呟いた。自分の姿を見ると、白いパジャマを着せられている。

「あかん…たぶん、夢の中や。…現実に戻らな。」

圭一はそう言って、再びふかふかのベッドに体を横たえた。

「圭一君ー!声が聞こえたけど、起きたのー?」

ドアの外から、そんな女性の声がして、圭一はびっくりしてまた飛び起きた。

「はっ!?はい!?」

裏声を出して圭一が答えた。

「入っていい?」
「あっその…どうぞ…」

(頼む!はよ目ぇ覚めてくれ!)と圭一は思ったが、なかなかそうもいかないようだ。
ドアが開いた。
一瞬眩しさに目がくらんだような気がした。よく見ると、入ってきたのは菜々子だった。

「専務?」
「おはよう、圭一君。…と言っても、もうお昼だけどね。」
「えっ!?」

菜々子はトーストやハムエッグの乗った盆を、ベッドの横にあるサイドテーブルに置いた。そして戸棚から折り畳み式の小さなテーブルを取りだし、そのテーブルの脚を立てて、圭一の足元にシーツの上から置いた。

「!…あの…専務…僕…」
「朝ごはん。食欲なくても食べなきゃだめよ。…疲れは取れた?」
「…え?…あーーーーっ!!」

圭一は思わず膝を立ててテーブルを落としかけた。
菜々子が驚いて、そのテーブルを抑える。

「どうしたの!?」
「僕…昨夜、副社長と酔うた片島を家へ送って…」

菜々子が笑いだした。

「今思い出したのね。そうよ。あなた倒れて、家に連れてこられたの。」
「副社長は!?」
「プロダクションに行ったわよ。コンサートまで休みがないから、今日1日はゆっくり休ませてやってって言われてね。私は元々休みだから…」
「…夢…やないんや…うわ!現実っ!?これっ!!」
「もおお…圭一君!」

菜々子がおかしそうに笑い続けている。

「現実現実!さ、食べて。もう冷めかけてるけど…」

菜々子がそう言って、横のサイドテーブルに置いた盆を、圭一の脚の上に立てているテーブルの上に置いた。

「!…あの…僕…こんなことまで…」
「気にしない気にしない!食べさせてあげましょうか?」
「!!!!!」

圭一の顔が真っ赤になった。

「いえ!いいです!…自分で…」

菜々子が笑っている。

「あっ!でも俺…今日レッスンが!!」

また圭一が立ち上がろうとしたのを見て、菜々子はあわててテーブルを抑えた。今ひっくり返されたら、大変なことになる。

「社長に休むように言ってるから大丈夫だって。とにかく今日はゆっくりここで寝てなさい。できたら、3人で一緒に晩御飯も食べようって言ってたわよ。」
「ええーーーーっ!?」

菜々子は今度は自分の両耳を手で押さえた。

「…そ、そんなことまでしてもらうわけには…」
「何、遠慮してるの。明良さんの息子でしょう?息子は親に甘えるものよ。」
「!!」

菜々子の言葉に、圭一は驚いた表情で菜々子を見た。
菜々子はくすっと笑って、圭一のパジャマの袖をそっと掴んで言った。

「このパジャマね。ずいぶん前に、明良さんがあなたのために買ったのよ。」
「!?…」

圭一は腕を伸ばして、パジャマを見た。幼い頃、着せてもらったようなすべすべとした生地のパジャマだった。

「実は、私と明良さんもお揃いで持ってるの。」
「!!!!!!!」
「3人、お揃いなのよ。」

圭一は再び顔を赤くした。明良と…というより、菜々子ともお揃いだということにかなりの照れを感じている。

「明良さん…あなたのこと、本当に息子だと思ってる…。暴走族に襲われる前からね。だからあの襲われた時にあなたがプロダクションを辞める夢を見て、辛かった…っていまだに言うんだもの。」

あの時は、圭一が傍にいることを喜んでくれ、泣きながら抱きしめてくれた。圭一は今になって胸が熱くなるのを感じた。

「買い物に行っても「これ圭一喜ぶかな」とか「圭一はこんなの好きかな」とか言うようになって…。ちょっと私も嫉妬しちゃうくらいよ。」
「…そんな…」

圭一は下を向いた。

「…この部屋…元は客間だったんだけど…。あなた用にベッドも換えたの。…いつかこうやって泊まることもあるだろうって…。そしてあなたから「一緒に住みたい」と言われた時に、すぐにあなたが住めるようにしてあげたい…って…。」
「…副社長が…そんなこと…」
「またよく考えておいてね。…私も大歓迎だから。」
「…専務…」

圭一は菜々子の顔を見た。菜々子はにこにことして圭一を見ていた。

「あ、それから新しい下着買ってあるから、後でシャワー浴びなさいね。浴びる時、リビングにいるから声かけてちょうだい。」
「!!!!!」

圭一の頭に、菜々子が自分の下着を買う姿が浮かんだ。

「専務…ぼ、ぼ僕の下着を買いに行ったんですか?」
「あらー、息子の下着だもの。平気よー!」

からかっているのか、菜々子はそう笑いながら言って、部屋を出て行った。

「…やっぱり…これ夢やないか?…頼む!早く夢なら醒めてっ!!」

圭一はそう言って手を合わせたが、ふとテーブルにある朝食を見た。

「これ食べてからでもいいか。」

圭一はあらためて手を合わせて「いただきます」と言ってから、フォークを手に取った。

(終)

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