小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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=第17話 穴の底で=


「い、生きてる…な…」

「うん…生きてた…」

あんな高いところから落ちてよく俺たち生きてるな…いくらゲームとはいえ…
HPゲージを見ると俺もリズも危険域の赤色を示していた。

「…ほら、これ飲んどけよ」

「ん…」

ポーションって大体薬系で苦いはずなんだけどここのは軽く柑橘系の味がするから美味しいんだよな。
テイルズシリーズ好例のグミみたいじゃなくて徐々に回復するから少し面倒だけど。

「あの、さ…」

「どうした?」

「助けてくれて…ありがと」

「お礼はここを出てから、な」

俺はそういいもう一度上を見上げる。ここにビル1つが入るんじゃないかって言うくらいの大きさの穴だな…
どうやってここから抜け出そう…

「…?テレポートは駄目なの?」

「無理だろうな。ここは対プレイヤーのトラップだから結晶無効化でしょ」

俺の言葉にリズは少し困った顔を浮かべるが、念のためなのか結晶を手に自信の店のある街名を叫んだ。
だが、結晶は効果を発動せず反応すらしなかった。

「…はぁ……」

「落ち込むなって、結晶無効化ならほかの方法でもあるんじゃないか?」

「そんなの判らないじゃない…100%死ぬトラップかもしれないし…ていうか普通死んでたわよ」

100%死ぬっていうのは考えてなかったな…実際ありそうだからそれも視野に入れるべきか…
普通のオンラインゲームならありそうだからな〜…

「…たく!もうちょっと元気付けなさいよ!」

「やっぱり、声だしてた方がお前らしいよ」

「んな!?」

リズは現実でもよく声を出してたから塩らしくしてるのは似合わないって思っていろいろ言ってみたけど…
顔を赤らめているのは何故だろうな?気にしない方向で行こう。

「…1回試してみるかな」

「…何を?」

「壁を蹴りながら登る」

「…ハァ?」

明らかに呆れてる顔されてるんだけど…敏捷値が高ければ走っていけないこともなかったけど幸いここの壁はごつごつしてるから足場にはちょうどいいだろう。

「…やっぱり…馬鹿?」

「ひどっ!?…まぁいいや。やってみますか」

そういい軽く助走をつけるため壁から離れる。
そして走りだし、壁に向かって垂直にジャンプする。無駄に足をつけず減速したと思ったら氷のごつごつした場所を蹴る。その繰り返しだ。
いい調子で3分の1近く登ったところで蹴ろうとしたら氷を再現しているのかツルンとすべり蹴れなかった。

「へ?…マジかよぉぉぉ!!」

そのまま登ってきたのとは反対に垂直に落ち先ほどリズがいた場所に落ちていった。
上から見ればおそらく人の形のあとが深くついているだろう。

「氷がもうちょいごつごつしてたらいけたんだよ…」

「…んなわけねー」

その人型の穴から出てきた俺につぶやくリズ。正直ショックだからやめてほしい…

「仕方ない…今日は野宿だな…」

「そうね…」

そのリズの言葉を聴き俺はウィンドウをだすと指を走らせ野営用ランタン、鍋2つ、簡易テーブル、食材の入った袋、小さなガスコンロ的なもの、皿、コップなどをオブジェクト化する。

「アンタ、いつもこんなもの持ち歩いてるの?」

「…いろいろあるんだよ…聞くな…」

泊りがけでモンスター討伐とか今日みたいに高山で発掘とかやってこいってユカとかサチとかシリカに言われるんだよ…
金貯めてギルドホーム買いたいからって…

「…ドンマイね…」

あ、聞こえてたんだ…もうやめようかな…こういう心中で考えるの。
そう思いながらランタンをつける。ランタンのおかげで周りが少し明るくなった。

「って、悠香(ゆか)ちゃんもSAOやってるんだ…」

そういえばリズもユカと中学、高校と一緒だったから結構仲良かったよな、たしか。
高校ではこの2人は同じクラスだったような気がしたし。

「やってて、今は俺と同じギルドに所属してる」

「なんて名前?」

「あんま知られてないんだな…凛々の自由((ブレイブアドリビトム))って名前さ」

結成したのも結構最近だし、まだまだ活躍もしてないけど俺は宣伝してみた。
やはり知らないらしく頭にハテナを浮かべていた。

「さて、今日の料理でも作るか」

料理といえば、ということで称号を【黒衣の断罪者】に変更。
寒いのは仕方ない、我慢だ。
肉などの食材を出し触れることでそれを角切りにしたり、いろいろしたりする。
それをまとめて鍋に入れ煮込むを選択。ある程度煮込んだらNPCショップで売っていたカレールーを入れる。

「今日の晩飯、カレーの完成!」

「おぉ!!…リクヤって料理できたんだぁ…」

高1のころから1人暮らしだから自炊できないと。それにこの称号のおかげで料理はそろそろ習得できるし。
もう1つの鍋で米を炊いていたのでこれを皿によそう。そしてカレーをかければ完全に完成だ。
そしてテーブルに2つ乗せ俺たちは向かい合う

「「いただきます」」

正直味は心配だけど…

「…おいしい…」

「お、よかった…カレーは簡単だからな」

リズはどうか知らないけどやっぱり料理できる、もしくはできそうな人にほめられるのはうれしいな。
シリカもサチもユカも料理実は上手いからな。

「…なんか変な感じ…こんな初めての場所で同級生と2人きりでご飯食べるなんて…」

「同級生っていうのは俺も初めてだけど、初めての場所で知らない人とっていうのはよくあるな」

ダンジョンもぐって夜までかかってここからが本番だって時とかほかのギルドの人たちと一緒にご飯食べて仮眠とって、なんてことはよくあるからな。

「ふうん…聞かせてよ、ダンジョンの話」

「おっけ。…とその前に」

俺は使った鍋、皿、テーブルなどを片付けその代わりに2つ、ベッドロールを出す。

「結構高級品だぜ、これ。断熱完璧、対アクティブモンスター用のハンディング効果つきだ」

俺が作ったわけではないが少しドヤ顔してみる。そんな顔にリズは呆れているが、そんなことは予想通りだ。

「こんなものまで…よく持ち歩いてるわね…2つも…」

「実は4つあります」

「…悠香ちゃんたちのか…そういえば悠香ちゃんのプレイヤーネームって何?」

「そのまんまだよ」

「…え?ユカってこと」

リズがたどり着いた答えに俺はうなずく。正直本名使うなんて馬鹿げてるけど、何か納得したような表情をしていた。
そして俺は腰の大剣をはずし、リズはメイス、そして【うさんくさいおっさん】で出現したマントを脱ぎベッドロールに中にもぐりこんだ。

「やっぱ暖けぇ…」

「うん…ね、さっきの話してよ」

「ダンジョンの話…か…」

それから俺はリズに今まで起こった話をした。
さすがに、月夜の黒猫団の話とか、ユカが引きこもってたなんてそういう話はしなかったけど。
ボスモンスターからゲットしたレアアイテムの配分でじゃんけんして決めたり、MPKされそうになった話とか…
俺がこのゲームを楽しんだ結果をずっと話していた。

「ねぇ…リクヤくん…」

「別にリクヤでいいって」

「じゃあ…リクヤ…なんであの時私を助けたの?助かる保証なんて…ううん、死ぬ確率のほうが高かった…なのに…」

あの時は俺も体が勝手に動いてたからな…なんでっていわれても…そんなに思いつくわけじゃないけど1つだけあるとしたら…

「…誰かを守れないのはもう嫌だから…それくらいなら俺も死んだほうがまだマシ…それがリズみたいな女の子や同級生ならなおさら」

「……昔に比べて馬鹿が増したね…そんなやつなかなかいないわよ」

この世界に来て苦い経験もしたから、逆に馬鹿になったのか…
でもそれが今の行動理由でもあるんだよな…誰かを守りたいっていうのが。

そんなことを思っていると突然リズが手を外へ出した。

「ね、手を握って…」

「…わかった…」

俺も同じように手を出し手のひらをリズの上へと乗せる。
リズの手はさっきのカレーに比べれないほど温かい、けどなにか冷たいものも感じた。

「温かい…」

「だな…」

「…私もリクヤも…仮想世界のデータにすぎないのに…」

実際には俺たちの体はどこかのベッドの上だから頭の中だけの処理なんだけどそれでも温かさを感じた。
リズはここは仮想世界ということが根強く心の中にあるらしくおそらくそれが先ほど俺が感じた冷たさだったんだろう。

「こんな世界でも…人の温かさって感じれるんだね…」

「…そうだな…俺もそう思うよ」

そしてそのままリズは目を閉じ眠ってしまった。それに続き俺も目を瞑りそのまま意識を手放した。

―チュンチュンという音がここでも響くんだな…
そんなことにちょっとした感動を覚えながら俺は目を覚ました。
隣ではリズが昨夜出した右手がそのままにされているのでそれをベッドロールの中へ戻す。
そして昨日のように鍋とかをいろいろだし朝食の準備をする。
準備って言っても食材がないので味噌汁とご飯作るだけだから片方に米、片方に食材をいれ待ち時間のウィンドウを出す。
そして数分待つ。はい、終了。

「…おはよう…」

「おはよう、ご飯できたぞー」

まだ眠いのか瞼をこすりながらこちらへやってくる。
朝が寒いのは現実、仮想どちらも共通らしくリズは上着をオブジェクト化させるとそれをはおう。
それに手を口に当て息を吐いているようだった。

「それじゃあ「いただきます」」

「…やっぱおいしい…」

「どういたしまして」

そのまま味噌汁とご飯という寂しい朝食だったがどんどん俺たちは食べていき20分くらいでなくなった。

「…ねぇ、このまま出られなかったらどうするの?」

「そうだな…寝てすごすかな」

「もっと悩みなさいよ…」

リズはでも…と言葉を切って俺の隣に来た。

「それも…いいかもね………きゃ!?」

「…あ、ごめん」

俺が地面に何か光るものを見つけそこに行こうとしたら頭を俺に乗せようとしたのか体を傾けていたので支えを失いそのまま倒れていった。

「一体どうしたってのよ…」

「いや、ちょっと…」

先ほど見えた光ったものがあるところを掘って掘って掘りまくる。

「なぁリズ」

「何よ…」

「俺たちが探しに来た金属って…」

そういい俺はリズに水晶のような輝きをもつ金属を見せる。
名前は≪クリスタル・インゴット≫。

「こ、これよ…でもなんで埋まってるのよ…」

「ドラゴンは水晶を食べ、腹の中で生成する…」

これって…人間でいうあれですかね?
あの茶色くて臭くてソフトクリームの茶色みたいな形で書かれる…ここまで来てそんな最悪な答えにたどり着くとは思わなかった。

「リズ、持ってて」

「別に…いいけど…」

「あと、ここトラップじゃなくて巣だよ…」

「え…えぇ!?」

なんで、という顔をしているリズ。多分そこから推測するに「なんでそんなことが判るのよ」って続くんだろうな…

「動物って大体巣とかその身近なところでトイレするだろ…あのドラゴンも一緒なんだよ…その金属見て判った…」

「つまり…これって…」

俺の説明にリズもうわさの金属の正体がわかったらしい。

「あぁ…例のあれだよ…」

「ぎえっ」

そうリズが預けた金属もとい糞をこちらへ投げ返してくる。
なるべく触りたくないので指先でデコピンの要領ではじき返しリズへと返す。さらにリズはそれを俺にはじき返すというラリーを数回にわたって行った。
なんとかリズが上へ放ってくれてその隙にウィンドウを開きアイテム欄に入れてそれは終わったが。

「これで目的達成だけど…」

「問題はどうやってここから出るかよねぇ…」

問題は一番でかかったここからの脱出方法だった。
トラップじゃないので逆に絶対死の可能性はなくなったがほかに出る可能性も絶対とはいえなくなった。

「ドラゴンみたいに羽があれば…」

リズが不満のような声を出し、その声は途中で止まった。

「ねぇ、リクヤ…ここドラゴンの巣っていったわよね…」

「あぁ…例のぶつがあったからな」

「それはどうでもいいわよ!…それでドラゴンは夜行性…そして今は朝…」

リズの推理に俺たちは上を見上げる。上は光が作った白い世界しか見えないが突如その世界に黒い影が現れた。
その影はだんだんでかくなっていく。

「「き、きたーーーー!!!?」」

巣に向かって急降下してきた白竜は俺たちを見つけると甲高い鳴き声を上げ襲ってきた。

「よいしょっと!」

「え、え、…きゃぁ!!」

俺はすぐさまリズを抱え地面の雪をえぐり振り上げることで砂煙ならぬ、雪煙を立てる。
その隙に壁に向かってジャンプし白竜の死角へと入る。

「しっかり掴まってろよ!!」

二度ほどジャンプし竜の背中に跳び乗れる高さになったら逆側にけり背中に深々と大剣をさす。
その痛みなのか、敵を排除しようとするのかは不明だけど外に飛び上がっていく白竜。

「きゃぁぁあああぁ!!!」

「ぐ、ぐぐ…。っ外だ!!」

そのまま外へ折れた津は脱出し十分なところで白竜が回転してしまったので剣が背中から抜けそのまま放り出された。
そしてその煙が晴れ見えたのは…

「綺麗…」

「あぁ、綺麗な朝日だな」

空中に放り出されてもなお俺たちに感動を覚えさせるほど綺麗な朝日だった。
いままでは横に飛んでたがどんどん下へ落ちていく。

「脱出せいこ−−−!!」

「いぇーい!!」

俺は下に穴がないのを確認しそう喜びの声を上げるとリズも同じく喜んでいた。
そして俺たちは昨夜と同じように手を繋ぐ。
結構なスピードで落ちてるので耳元ではゴオッと言う音しか聞こえない

「リクヤー!!」

「なにっ!?」

「あたし、あんたのこと好きになっちゃったかも!!」

「なんだってー!?全然聞こえない!!!」

「なんでもなーい!!」

最後のリズの叫び声の直後リズが手を引っ張り抱きついてきた。これにはびっくりしたけどなぜか一応会話として成立してるのは気のせいなのか?
よくもまぁリズはこの中で俺の声が聞こえるな…なんてことを思いながら俺たちはどんどん落ちていく。

「せぇっっっの!!!」

俺は大剣をスノーボードのようにして乗り空気の抵抗をさらにつけた。
そしてそのまま雪で覆われた地表に着陸し長い間本当にスノーボードのように滑りブレーキをかけ止まった。

「…ふぅ…無事着陸っと」

俺は一息つきながらリズを地面に下ろす。上空では俺たちを見失った白竜が旋回している。
スノーボードに使った大剣をいつものように手の周辺で回し鞘に収める。

「アイテムの取り方は広めておくからさ、お前はのんびり暮らせよ…じゃあな!」

以前モンスターは一定のアルゴリズムで動いているという考えを完全に破壊されたことがあるので俺はそうつぶやき手を振る。
俺の真似か、リズも同じように手を振っていた。
それが見えたのか、聞こえたのか判らないがそのまま白竜は巣へ戻っていった。

「それじゃあ帰るか」

「そうね」

「昨日使えなかったクリスタルでも使うか?」

そういい俺は転移結晶を出すがリズがそれを制し歩いて帰ろうと提案した。
俺もそれに乗っかり55層の転移門に向けて歩き出した。
途中でリズが俺の手を握り隣についたことには少々驚いたけど。




=あとがき=
最近SAOしか書いてない気がする…
面白いからいいですよね!!
…書くこと少ないな〜…あ、次はグダグダな気がしますので…



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