小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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第23話 =風唄う地=


=第68層=【称号 抜刀騎士】

「早いな、2人とも」

「よぉ、リクヤ。それにみんなも」

近道と噂のあるこの迷宮入り口に俺たちが来たときにはすでにキリト、アスナも先に到着していた。
俺達が来たことで会話も途中で終わったらしく邪魔をしてしまったらしい。

「いいな〜、キリトはラブラブで」

「サチさんの言うとおりです!人前でラブラブしないでくださいよ」

「「ら、ラブラブって!?」」

恋に悩む?女子2人が絶賛リア充の2人に反応するとその2人は顔を赤くして黙ってしまった。
初心だ、初心すぎる!!

「鈍感なアンタには言われたくないと思うけどね…」

「まったくよ…」

どうやらまた口に出していたらしい。
でも、俺が鈍感なわけないと思うんだけどな…俺だって相手欲しいよ。

「と、ともかく今日はその近道とやらに行ってみようぜ」

あ、急に話を変えてきた。女子(凛々の自由だけだが)の恋愛トークに耐え切れないのか相当あわてている。

「その前に、風唄う地だ。場所は聞いてるか?」

「ちょっと待ってくれ…」

そういいマップを開くキリト。そしてそのまま可視状態にしてくれてこの世界の風唄う地の場所を指で示してくれた。
行き止まりだが案外近いところにあったのでそのまま出発することにした。



「せぃ!!」

「そこ!!」

目的地に向け歩いているともちろんモンスターは現れる。
しかしさすが姉妹といおうか、前衛をアスナ、後衛としてユカがばっちりサポートして刺し倒していく。
このバーサーカー姉妹のおかげで正直暇だ。

「…ふぁあ…」

「こんなところであくびしないでよ…」

暇だから仕方がない。
あの2人を見ているとここが最前線ではなくどっかの下の層だと錯覚してしまいそうだった。

「「ただいまー!」」

どうやらしばらく前の敵を除去したらしく姉妹が帰ってきた。

「おかえり、どうだった?」

「アスナ、強くなってた。私もうかうかしたら簡単に突き放されちゃう」

「お姉ちゃんだってさすがだよ。毎回のようにいいサポートしてくれるから」

なにやら、姉妹で健闘を称えあってるらしいな。
いまさらながらに気づくけど、目の形とかいろんなところがやっぱり似てるよな…

「何見てるのよ…」

「やっぱり姉妹なんだなって…キリト、まだか?」

風唄う地までのマップを持っているのがキリトしかいなく、送信してもらうのも面倒なのですっかりマップ係となったキリトにたずねる。
帰ってきたのはそろそろ、という一言だけだ。全体的に風が強くて聞こえないだけかもしれないけど。

「っ…風強いな…」

女子は全員スカートを抑えているが目線をそこにやったら殺されそうな気がするのでやめておこう。といってももしめくれたら濡れ衣は間違いなくかかるけど。


少々歩くと落下防止のためか崖のところが柵でさえぎられその奥にいくつもの山が連なっている行き止まりを発見した。
ご丁寧にその柵の前には何かを置く石の台が存在していた。

「ここか?」

「あぁ、風唄う地だ!」

どうやらビンゴらしい。
その証拠ともいえる強風と山の岩盤で鳴り響く美しい音色がこちらの耳にも聞こえている。
俺は自分のアイテム一覧から『エコー・フラワー』の種を選択、そして手の中に出現させ、アスナも昨日ヒースクリフさんか
ら預かった『トワイライト・モス』を取り出す。そしてアスナのを下に敷き、その上に種をあしらった。

「〜〜♪〜〜〜〜♪」

するといつしか見たプネウマの花の高速再生のようにエコー・フラワーも咲き出した。
さらに開花した花はその名の通り音を真似だした。
しかし、その音はキリトの恥ずかしがるような叫ぶ声ではなく、そこで鳴り響く音色を一寸の狂いもなく真似しだし完全なエコーとなった。

「…きれい…」

「感動、しちゃいますね」

「えぇ…」

「この世界で音で感動できるなんて…ね…」

「うん、思ってもみなかったよ…」

女性陣全員は感動でその場から動けなくなっているが俺とキリトの行動は意外と早かった。
トラップの可能性もあり、すぐさまキリトは背中の剣、俺は腰の大剣を抜きあたりを見渡す。
すると、その部屋の片隅に今までなかった宝箱が出現しているのに気づいたキリトは剣を持ちながら、でも好奇心が強かったのか宝箱を開けてしまう。
幸いモンスターが出る、なんてことはなく宝箱に入っていたものはキリトのアイテム欄に収納された。

「なんだろう…これっ!?」

どういったものかが気になったのかオブジェクト化させ持ってみようとするキリト。
その剣の刀身は白銀で出来て、剣の真ん中が少し全体より少し細くなっており上から見た竜のような形をしており細くなっている下の部分には赤い宝石もついていた。だが相当な重さらしく持っている手が震えていた。そのマヌケな声に反応し感動していた女性陣がキリトの前に集まる。ついでに俺もだが。

「…どうしたの、キリト君」

「い、いや…そこにあった宝箱の中から出てきたんだが…」

「ちょっと見せてくれない?」

さすがマスターメイサー+武具屋としてか新しい武器に対して興味心身だった。
でもリズでも持ちながらの鑑定は無理なのか、キリトに持ってもらいながらやっていた。

「えっと…固有名は『キャリバーン』…私も聞いたことないわね…」

「でもキリト君が持てない重さなら不必要なんじゃない?」

「…いるわよ、ここに1人」

俺も大剣と聞き、興味を持ちキリトの手におさめられているそれを見ていると何故だか全員の視線が集まっていることに気づいた。
よく見るとユカが親指で俺をさしている。

「俺が…どうした?」

「リクヤ、これもってみてくれ」

そういい、白銀の大剣を渡される。
意外とずっしりとくる重さだったが持てない重さじゃないし、俺のもともと持っていたオータムリリィと同じくらいの重さだと感じ、振ってみたかった。
今、オータムリリィを片手で持ってるからいっぺんしまい、キャリバーンを装備する。

「そんなに重すぎるってわけでもないな」

「はぁ!?」

キリトの声が一番大きかったがその叫び声は風唄う地にいた俺以外のプレイヤー全員から発せられた声だった。

「でも、まだオータムリリィのほうが使いやすい…かな」

そういいキリトに返そうとする。が、キリトは「俺には扱えないからやる」といってそれを拒んだ。持つだけで精一杯な姿を見れば当たり前だが正直この剣の存在は俺の新たな2本目としてふさわしいって思った。
俺のユニークスキルのもう1本に。

「…近道確認しに行こうぜ」

呆れた口調で本来の目的を改めて口に出すキリト。
みんなあの音や、俺はキャリバーンの感動で少々忘れていたがそれを思い出し一旦戻ることとした。
だがしかし…風唄う地を抜けて数分、俺たちの身長よりも普通にでかい斧を持った人のような何かが現れた。

「…っ!?…誰だ、お前は…」

「プレイヤー…じゃないよね…」

キリトがまず、その存在に気づき、声を上げるも反応はなかった。サチもキリトの後に気づき、目を凝らすもいままでであんなプレイヤーは見たことがないというくらい恐怖を感じさせられた。
その何かにはボスモンスターと同じく固有名がHPの上に存在していた。
固有名がある、ということはフィールドボスか扉を守る層のボスのどちらかだ。だがここに扉はないためおそらく前者なのだろう。俺が名前を読み取った瞬間、その何かは声を荒げ叫んだ。


「さぁ、…死合うとしよう……」


現実にいるとき、ゲーム内で強制的に強烈な縛りをされ何度となく苦しめられた敵と名前、格好が一緒だった。
全身が青く手には巨大な斧を持っているそいつの名前は『バルバトス・ゲーティア』
多分、俺の知ってる中で最強クラスのボスキャラクターが俺たちに戦闘を仕掛けてきた。






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