小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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第29話 =攻略再開=




「アンタたちの来る方法ってなんかパターン化してない?」

「気のせいだっつうの…で、今日攻略に行こうと思ってんだけど」

リズの言うとおり何かやろうと決めてからリズの店によるのが定番と化している気がする。

「あたし?…この前さ、ボス戦一応参加した時にアスナに『リズは武器で私たちを支えてくれてるからボスは私たちに任せて』なんて言われてね…それで考えたんだ。このまま攻略もやっていい武器も作れるかって…」

「…答え、出たのか?」

「うん。あたしは…アンタたちを信じて武器、防具を作り続ける。だから…」

あいつの次に言う言葉は大体分かる。そのままリズが目の前に拳を突き出す。握手なんて綺麗なことはできないし、かといってこのまま別れるのもなんだか寂しい。俺たち流の挨拶だ。

「わかった…任せろ!」

「お、言ったわね!じゃあ、任せたわよ!」

そう言いあい、コツンと拳と拳をぶつける。そしてそのまま店を出てサチたちに今さっき会った出来事を伝える。やっぱりなのか皆寂しい顔になってしまい、なんかしんみりとした空気になった。

「そんなしんみりしないでよ、別にギルド辞めるわけじゃないんだし」

「リズ!?…どうして」

そんな空気の中店の中からリズ本人が出てきた。システム上音は伝わらないが空気は何故かしら伝わるのかもしれない。そんなことを俺が思っているとなにやらメニューを操作して全部で5つ、銀色の腕輪を取り出した。その腕輪には俺たちのギルドの紋章、1つの羽の傍らに星が1つという結構シンプルなものが入っていた。
腕輪は本来装飾スキルの高いプレイヤーの産物なのだが防具としての効果もあるため少々不恰好だが鍛冶屋も作ることが出来る。

「これ、渡そうと思ってね」

そういい1つ1つ手渡ししていく。こんな面倒な方法をしなくてもいいのだが…そこはリズの自由だ。ユカ、シリカ、サチは受け取ってすぐ自分の腕へと装着する。効果は後々聞けばいいだろう。
俺のとき、何かを思い出したのか口を開いた。

「アンタから預かってたあの腕輪だけど…」

腕輪というと例のソードスキル封印の腕輪か。術使えないにしても誘惑に負けて使いそうだったからあの後「素材にしてくれて構わない」と言ってリズに預けたっけ。

「それが…どうした?」

「全員の腕輪の素材につかったわ。ソードスキル封印のデメリットを削除できたから」

「マジか!?」

あの腕輪最大のデメリットを消したのだ。マスターメイサーが営んでる鍛冶屋の中ではほぼトップだろう。

「その代わり…えっと術使用…だっけ?あれもなくなってステータスとコルの上限率が3%になっちゃったけど…」

「…私たちメリットしかないじゃない…」

「リズさん、さすがです…」

俺たちの口からはもう尊敬を込めた言葉しか出ない…リズの実力がここまでだったとは…ユカがさっき「私たち」といったけど俺ももうメリットしかない…なんてったって術使用のための文章覚えてないからな。

「本当に…ありがとう、リズ!」

「きゃっ!?…サチ、いきなり抱きつかないでよ…」

そんな場面にもリズは微笑を見せていた。サチに引き続きシリカとユカもやってるし…俺が行ったら牢獄へジャンプだろうけどな。

「また、夜家で会えるんだしそろそろ行くぞー!…リズ、ありがとな」

「へっへん、どういたしまして。…じゃあいってらっしゃい!」

その言葉に俺たちはリズに手を振りながら背を向け転移門へと移動した。全員の腕には銀色に光る腕輪がここからでもよく見える。なんか死亡フラグっぽいけどそんなもの俺が…俺たちで軽々折ってやる!そんな気分だったと思う。

―――――――――――

=第73層=

「…リクヤじゃねーか!それに嬢ちゃんたちも!」

「ご無沙汰してます、クラインさん」

「まだ生きてるのね、クライン」

俺達が転移門を抜け少し歩くと紅い武士のような鎧を着た6人組ギルド「風林火山」が声をかけてきた。シリカはリーダーとしてなのかとても丁寧な対応だったが俺たちは…特にユカだけど、きつい言葉を浴びせる。

「ひっでぇ…それにしても珍しいな。最近来なかったのによぉ」

「そろそろ収まってきたころだしな」

「そか…大変だな、ユニーク持ちも。俺は人間が出来てるからいいが…」

リズの話では最近ではもう双・大剣士について聞きにくるものはもうほぼいないそうだ。攻略組ギルドから発せられた噂だと中層プレイヤーは考え、自分のできる限り聞いたらしいが情報屋にもないスキルというのが分かり早々と諦めてしまったらしい。

「ねぇ、クライン。今どのくらいまでマッピングできたの?」

「ちょっと待ってろ…」

そういいメニューを開くクライン。普通こういう情報は金になるのだが同じ仲間としてのだろうか、快くマッピングデータをサチに送ってくれた

「あと少しで…ボス部屋?」

「そういいたいが、結構入り組んでてよ。なかなかたどり着けないんだコレが。」

「…なるほど…俺たちは今から挑戦しに行くけど、クラインたちは?」

「俺たちぁちょうど終わって戻ってきたんだ。同行はできねぇや」

そういったので別れを告げ俺たちとクラインたちは真逆の方向へと歩き出した。目指すは迷宮区、そしてボス部屋到達だな。さすがにボス部屋に入ったとしても偵察で終わりにしないとやばそうだけど…


―――――――――――


=第73層 迷宮区=

「だりゃああ!!…スイッチ!」

「任せて!」

俺がガードを崩し、その隙にユカの連続して投げた投剣が相手モンスターに突き刺さる。今回は鳥人が剣を持っているようなモンスターだったのだが俺が思うに70層からなのか最近人型モンスターが多くなったような気がするな。
あと、アルゴリズムに急激にイレギュラーが発生してきた。安全マージンを十分にとっている俺たちでもゲームオーバーの可能性…死ぬ可能性が急増してきて一瞬たりとも気が抜けなくなってきている。

「…ピナ!そこ!」

「きゅー!」

「追撃任せて!」

一旦2手に別れて空を飛んでいるその鳥人どもを蹴散らす作戦だ。2手に分かれるといってもお互いがお互いを普通に見れる距離なので万が一ピンチに陥ったときも助け合える…そんな距離だ。

「…ふぅ…さすがに疲れるなぁ…リクヤたちは大丈夫?」

「おぅ、大丈夫。それにしても…まだ着かないのかよ、たく」

歩き続けて早くも結構な時間が…その間にモンスターの塊に当たったのが10回近く…その塊も5,6体いたから単純計算でもう…50近く倒してる計算になるな…もうため息しかつけない…

「えっと…もうすぐでクラインたちのマッピングしたところ抜けるけど…」

「やっとですか!?…あぅぅ…」

「でも残り少し…がんばりましょ」

サチのマップ確認にコレからが本番だということを認識させられる。ここまで結構な距離だったから落胆するシリカだったけれどユカが励まし、また歩き始める。
このステージ、デザインなのか知らないけど道がボコボコしてて歩きにくいんだよな…戦うときも足場にも注意しないとな。

「きゃっ!?」

「おっと。…大丈夫か、サチ」

「あ、ありがとう……ひゃっ!?」

そんなことを思っているとちょっと山形になっている地面につまずいたのかサチが倒れてきた。それを俺は腕を出しそれを制する。そ
こまではよかったのだけど受け止めたとき、俺の手になにやら「ぷにっ」とした不思議な感触が伝わってきた。なんだろうと思い2回
、3回と軽くグーパーさせる。

「ひゃあっ!?…んあ…」

「アンタは何胸揉んでるのよ!!」

無理やりサチから引き剥がされ俺はますます混乱した。サチを見ると顔が赤く火照って両腕は胸の前でかたく交差されていた。

「……ぬぁ!?」

俺が腕を伸ばした場所、サチのその格好、ユカとシリカもサチとは違う顔の赤さをみてさっきまで力を入れていた場所の正体を理解してしまった。いまだにグーパーさせている右手、サチのその堅く閉ざされている場所を交互に見て顔が一気に一瞬、紅くなるが少し冷静になって青くなる。
えぇそのまま紅くなるんではなく青くなりました…だって目の前で相当な怒りを目に宿している3人の顔まで見えたんだから。

「へ、へ、変態!!」

「最低です!」

「こんな場所で何やってんの!!」

「そ、そんなつもりじゃないって!ただ、その…」

「「「その?」」」

ここで言動ミスったら殺される…3人は一応武器を抜いてはいないし殺人もないと思うけど…精神的に殺される!
でも、分からなかったとはいえ好奇心なんて絶対言えない…

「あ、あははは…」

返答できなかったためしばらくの間、精神的にいろいろやられましたさ…
いろいろって…幼馴染しか知らない情報をサチとシリカに教えられそれから広がっていった言葉を浴びせられたよ…


「あの、本当にすいません」

そして土下座中の俺。迷宮区なのに緊張感なんてまったくねぇ…というかこの3人のせいなのかモンスターが近づいてこない…
あ、安全地帯だからか…。

「…どんだけ恥ずかしいか、分かる?」

「すいません…」

「…はぁ…もういいよ……」

サチが許してくれたかどうか走らないがその声にやっと顔を上げる。…長時間やってたせいであちこち痛いな…精神的に。
シリカとユカの目は…無視しよう、なんて思っていると不意に索敵スキルを上げているサチが街側の通路から人が近づいてくるのが分かったのかその方向に注目し始めた。

「…あれ、リクヤたちじゃないか」

「キリト!」

その人は通称黒い剣士のキリトだった。

「攻略に来るなんてずいぶん久しぶりだな」

「似たようなことをクラインにも言われたわよ…」

「確かに…それで、キリトさんも攻略ですか?」

シリカの質問に「あぁ」と答えるキリト。俺がどこまでマッピングできたのかと聞くと、キリトも同じく快くウィンドウを開きそれを
可視モードにする。そこにはクラインたちよりも先の道を記された地図が載っていた。風林火山らとキリトのマッピングはお互いに助
け合っていてマッピング率は同じくらいなのだが今回だけは違っていたことに疑問を抱き、それを聞くと最近、キリトは風林火山と会
っていなかったらしい…

「ここらへんから少し進むとボス部屋なんじゃないかって俺は踏んでるんだけど…」

「なら、そこまで一緒に行くか?…この先ソロじゃさすがに危険じゃないのか?」

「それはうれしいんだけどさ…」

一旦言葉を切るキリト。そして俺、サチ、シリカ、ユカと軽く見渡してからまた口を開いた。

「俺の場合、助けより邪魔になる場合が多いからな…」

「…ちょ!?……はぁ」

強がっているのかキリトが続いてそんなことをいいだす。その瞬間、我らが女性陣が動き出すのが分かってしまいそれに一瞬驚いたせ
いで止めることが出来なかった。

「足手まといにはならないと…」

と、キリトの後ろで棍を構えるサチ。

「思ってるんですけど…」

ピナの軽い威嚇と喉元にダガーを添えるシリカ

「感想聞かせてもらえないかしら?」

そして顔の目の前に3,4本のナイフをちらつかせるユカ。この3人…いやリズも入れれば4人か…は足手まといになる、もしくはそう思われるのが嫌いらしく俺も似たようなことを言ったときこんな感じでやられたことを思い出した。宿屋の中だったからそのままぶちのめされたけど…
会った頃からは想像も出来ないほど…好戦的になったんじゃないか?だってサチはモンスターの前に出ることすら怖がっていたし、シリカもモンスターに恐怖を覚えていたらしいし、ユカも引きこもってたし…

「こいつ等の前でそういうの、言わないほうが…」

「そういうのは早く言ってくれよ……分かった。サチたちは別だよ」

そういうと3人は流れるような腕の操作で武器を収める。

「よかったぁ」

「ははは…」

この層だけだけど俺たちはキリトとパーティを組むこととなり仲間のHP欄に新しく、というか久しぶりにキリトの名前が追加された。
それを確認し、安全地帯からボス部屋と思われる場所に続く道を歩き始めた。








=あとがき=
そういえばキャラ設定を全然書いていなかった気がする…早いうちに投稿しておきます…








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