小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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第31話 =ボス戦=


「結構…走ったわね…」

「でも、キリトの、言うとおり…ボス部屋だね」

鳥人どものところからから思いっきし走ったから全員息が上がっている。しゃべるのも切れ切れだ。
この世界じゃいくら全力疾走しても実際には走ってないのだから疲れるなんてことはないがこれは人間だから仕方がないと思う、うん。
一旦深呼吸で息を整え、サチが改めて言うがそこには1層で一回は見たことのあるゴツい扉がドーン!みたいな効果音を発しそうな感じで存在していた。

「リクヤさん、久しぶりだからって戦わないでくださいね。一応言っておきますけどキリトさんもですよ」

「「お、おう…」」

転移結晶も持たず扉を開けようとしたのに反応したのかシリカに釘を刺された白黒の剣士2人こと俺たち。そこには数ヶ月リーダーをやっていたからこそなのか威厳に満ち溢れていた。
リーダーに従い転移結晶をアイテム欄から取り出し握り締め扉に触れる。すると扉はいつもどおり軽い力でゴゴゴッと音を響かせながら開いていく。

「さて…どんなヤツなんだろうな…」


俺たちが部屋に足を入れると部屋の隅に炎が灯った。そのまた奥に炎が灯りすべての炎が灯ると今までの数倍の幅の道のような部屋が俺たちの目に入る。そして部屋の真ん中には羽をたたんだ紅い鳥がこちらに気づいて歩いてくる。

「今回は小さくて逆に難しいかもな…」

「……ねぇ…キリト…気のせい?どんどん大きくなってる気がするんだけど…」

「多分…気のせいじゃないわよ…私も同じこと思ってるから…」

最初はタカみたいな大きさで的が小さいかと思っていたらこちらに近づくにつれドスン、ドスンと音が立つ。
そして俺たちを見つけたのかその鳥は羽を最大限に広げてピナよりも甲高く音も大きい鳴き声を上げ、鳴き終わると同時にこちらに突っ込んで来た!

「み、みんな避けろ!!」

「きゃああああ!!!」

偶然近くにいたシリカを抱え横に飛ぶ。キリト、ユカ、サチも俺たちとは反対方向に飛び去りそれを避ける。その鳥が突っ込んできたおかげでヤツの頭の上にカーソル、そして名前が表示される。(Claws of a hawk)…クロウズ オブ ア ホーク?鷹の爪って意味か?
でもそんなことを追及する暇もないので着地と同時に武器を抜く。

「おぉぉぉ!!」

最近の持ち方である逆手で大剣を持ち掬い上げるようにして斬りかかる。だが翼を羽ばたかせ後ろに飛び去ってそれを避ける。さらにこのときに出来た風で距離を広げられてしまう。巨大な羽でやられるので周りの皆にも影響が出てしまい攻撃を躊躇せざるを得なかった。
ボス戦だというのにもう一本出してなかったことを思い出し早速装備しまた逆手でそれを持つ。その間にキリト、サチが相手に攻撃を仕掛けるが上空に飛んでまた避けられてしまう。

「ならっ!!」

思いっきし地面を蹴りほぼ垂直、鳥さんの目の前にいける様にジャンプする。いい案だと思ったけど跳んで気づいた。ここって無駄に天井も高いんだな…一応、目の前まで肉薄でき剣で薙ごうと横に振る。しかし、それはいとも簡単に避けられ風を起こされ無理やり地面に落とされる。でも優秀なシステムのおかげで空中で体制を整えられ無事に着地することが出来た。

「…っ!?」

不意に何かを感じ後方へと跳び下がる。するとその直後ドスン!という音とともに俺のさっきまで立っていた場所に鷹が突っ込んできたのだった。まだパワーはどうなのか知らないけど恐らく半分は削られた強い攻撃だったのだろう、おかげで一瞬隙ができた。

「やぁぁあ!!」

「うぉぉぉお!!」

後方から声があがり斬撃と打撃の2種類のダメージを与えているペアがいた。攻撃されそちらのほうを振り向くが逆にありがたい、続けて俺も攻撃、横からは遠距離でユカがナイフを投げ支援、シリカもピナとともに懸命に攻撃を仕掛ける。
相手も黙っておらず急に大声をあげ飛び立つ。そのときの羽ばたきで周りにいた俺たちはさらに後退を強いられる。
ある程度飛んだところでバサバサと羽を動かすと1枚1枚の紅く綺麗な羽根が風により矢のように飛んでくる。本体が巨大なのが関係しているのか羽根も大きくこれも致命傷になりそうな攻撃だった。だが伊達にソロで行動しているキリト、少ない人数での攻略組ギルドとして名が知れてきた俺たちじゃない。
皆はそれぞれ場所を移動して避けているが俺は剣で弾く。
また一瞬途切れた場所があるのでジャンプ、壁蹴りもしたのでちょっと斜めだが背中方面に付くことが出来た。

「断空牙!!!」

そこから背中めがけて2刀を回転しながら振り下ろし、叩きつける。不意をついたおかげで鳥はまた甲高い声をあげ高度を下げた。
キリトの空中に向けて発動するソードスキル、もともと棍術は空中では無類の強さを発揮するのでサチも戦闘再開、シリカはどうやら周りの状況を確認しているらしい、ユカはみんなのサポートに徹していた。
俺はというと…断空牙が一瞬その場に停止して攻撃というものなので今は背中に着地してチミチミと攻撃中だ。背中の上って結構なアドバンテージだけど動きわくったら落とされる可能性がものすごく高い。だから剣を刺しては抜いて刺しては抜いてを繰り返していた。
正直、俺のこの行動だけだと完璧に病んでる人だよな…
それはともかくずるい攻撃をしている俺、地面で頑張っている4人の攻撃を受けているのにもかかわらずそれでも無駄に硬いのかまだ1割も削れていない。

「どんだけ硬いのよ!」

「よっと!…下手な鉄製の鎧よりかは十分にあるんじゃね?」

攻撃の高いモンスターなら少人数でも勝てる気がするけど(それでも無謀だが)堅いとなるとその分攻撃が低いわけではなく硬ささを生かした強さになるので厄介だ…

「シリカ、転移結晶つかえるか!?」

「や、やってみます!…転移、アルゲ…きゃぁぁ!」

シリカは転移結晶をかざし商売などで騒がしい街の名前を叫ぼうとしたが、突然の突風に邪魔され結晶が効果を発揮することはなく、手から結晶が飛んでいってしまった。それを再度拾い試そうとするとまた風が起こり失敗してしまう。
よく見ると鷹が結晶を見るたびにその巨大な翼を羽ばたかせて妨害しているのが見えた。

「リクヤさん、無理です!」

「モンスターが結晶に反応してるのかよ!」

「多分ですけど…そうなるとここはモンスターによる結晶無効化空間?」

脱出はあとは入り口に行って扉を開けるしかないのだがそんな隙だらけの獲物をモンスターが逃がすはずもないので、ほぼ不可能。

「倒すしか、ねぇのかよ!!」

「こんなに硬いやつを!?…せぃっ!!」

驚きを隠せないサチだがその間にも攻撃を仕掛ける。ほぼ同じタイミングで俺も攻撃を顔面付近に仕掛け、キリトも俺と同じところを攻撃している。だがそれでも相手にクリーンヒットを与えることは誰にもできていなかった。

「…っ、本当に硬すぎだろ!!」

「リクヤ!顔壊せるか!?」

不意にキリトの出した言葉はつまり部位破壊で一回流れ変えろってことらしい。あいつ自身武器破壊が得意だけど、それ以上にボスモンスターの部位破壊は別にHPが設定されているらしくそれを削るにはさらに弱点の場所に当てなきゃいけないので相当難しい…
簡単に言いやがって…仕方ない、あれやってみるか。
キリトが攻撃を当ててくれて一瞬ひるんだ隙に俺はその一瞬にアイテム欄を開き、武器名をスライドさせ空中、ヤツの顔面前にオブジェクト化させる。

最近知ったことだけど武器名をタッチ、スライドさせ空中で指を離すと持てずともそのままオブジェクト化される。勢いが強すぎてそのままどっかとんでいくなんて場合もあるけど…でも今回はそれを利用して上へ投げる。それとついでに両手にある大剣も一緒に投げ、一旦息を整える。

「…全身全霊で叩く!!」

それと同時にジャンプ、顔…とくに鋭いくちばし付近でまず飛ばした4つの武器の1つ、リズ製ハンマーをキャッチする。

「1!!」

それをくちばしに叩きつけ、鳴き声を上げるのも無視し武器を投げ捨て2本目、売ろうと思っていたぼろぼろのハンマー。

「2!!」

やはり耐久値が限界だったのか音を立てポリゴンとなる。が、今回は都合がよく3本目のキャリバーンをすぐに持つことが出来た。

「3!!」

こいつはさすがに大事な武器…リズのハンマーも大事なものだけど…キャリバーンを地面に突き刺すように投げる。この攻撃のラストを飾る4本目はリズの作ったオータムリリィ、こいつを握り、振りかぶる。

「轟覇連刃、インパクトぉ!!」

最後の1撃を当てたとき、何かが壊れるような高い音が俺の周辺に響き渡りその直後、目の前の鷹がもだえながらとてつもなく大きな声で鳴く姿が目に入った。その姿をよく見るとくちばしの先が少し欠けていて、さらに付け根辺りには大きな亀裂が何本も入っているのが見えた。部位破壊の成功の証だった。そのおかげか、HPもいままでチビチビ減っていたのとは比べ物にならないくらい大きく減っておりやっとゲージ一本分減ってくれた。

「よしっ!!…ソラ、バトンタッチ!」

『任された!』

その掛け声で体の支配権が俺からソラに変わり戦い方も変化する。キャリバーンを背に収めて、一本だけで戦うというのがソラの戦闘方法。その分、筋力値の余った分でスピードが出せるのでこっから連撃を与えるつもりらしい。意外にも顔面付近が弱点らしく、ソラはそこを集中攻撃、背後のほうはサチ、ユカ、シリカ、キリトのソラ以外の全員がスイッチを繰り返し一気にダメージを与えていく。

ソラと交代している時は俺は背後霊みたいなソラの後ろから全体を見ることが出来るので状況をしばらくしてから見ると、さっきの部位破壊が火種になったのかみるみる削っていってもう2本目のゲージもなくなって3本目へ突入した。この層ならいつもの通り大人数でやれば30分かからずに終わった気がするけど、いまは仕方がない。俺たちが戦い始めてすでに1時間はたっていると思う。

「…そろそろカーディナルが気づくか…?リクヤ!」

『おっけ!』

ソラに戦ってもらう=システムが味方をしているということなのでSAOの優秀なシステムではバグとして消されてしまう可能性がある、とソラ自身が行っておりそんなに長い間代わってもらうことは出来ない。なので今日はコレが限界だ。

「サチ、共鳴!!」

「分かったわ!!」

俺とサチの掛け合いで共鳴が発動した。共鳴と同時に手招きしてサチをこちらに呼びかける。サチがこちらに歩み始めたのと同時に、大剣初級ソードスキル『アッパード』を放ち下あごらへんを剣を横にし叩き上げる。

「「ヘブンズレポート!!」」

その行動により共鳴技へのいわゆるステップ1が成功したのでサチがシステムの加護を受けジャンプ、野球みたいに打ち上げた顎を棍で打ちつける。
モンスターって時点で現実じゃないけど頭を叩かれればどんなやつも少なからずクラクラするというものは何故だか取り入られておりいまの攻撃はそれの発動率が高く狙い通りそのクラクラ状態になってくれた。

「いまだよ!ユカ、シリカ!!」

「えぇ!!」

「はい!」

ユカとシリカがいつの間にか共鳴しており技を繋げる。ユカが投剣をまとめて投げそれをピナとシリカで軌道修正し確実に全弾当てるソードスキル『シュートレイン』だ。知り合いのビーストテイマー、投剣使いがあの2人しか知らないから分からないけどあれほどの連携出来るコンビはなかなかいないんじゃないか?システムサポートだけど…

「「キリト(さん)!!」」

「うぉぉぉ!!」

2人の呼びかけにキリトが一気に距離をつめ、剣を青白い残光と共に4連続で振るう技を行いゲージを一気に削っていく。その斬撃の痕が四角く残る技『バーチカル・スクエア』だ。ほかが硬いせいか弱点部分に攻撃を与えていくと面白いくらいにゲージを削れてすでに4本目に差し掛かった。

「ここからが本番だな…」

「うん…どうなるんだろうね…」

ボス戦では4分の1を削られると武器持っているやつは武器変更したりと、特殊攻撃が追加されたりと厄介なものが追加される。こいつはどんなものが追加されるんだろうな。
すると今まで聞いていた声の中では恐らく一番大きな音が何度も響き渡る。あまりにも大きな音なので聞き耳スキルを上げているキリトやシリカ、ユカ、サチ…つまり俺以外はもちろん、ろくに上げていない俺でさえ耳をふさがなければキツすぎて倒れそうだった。

「…っ!?ぐぅっ!!」

「リクヤ!?」

多分これが特殊攻撃なのだろう、相手は高く飛び俺めがけて一気に降下してきた。それにより吹き飛ばされHPが一気に削られる。手が耳に行っていたので防御も出来ずモロに喰らってしまいゲージを確認すると半分持ってかれていた。

「…痛っ…まだ来るのか、よ!!」

この世界に痛みがなくて本当によかった…そう思いながら再度突っ込んでくる鷹を地面を蹴り退避する。突っ込んだところから砂埃が立っているが一瞬、風が吹いたと思ったらすでに態勢を立て直し空に浮かんでいる。獲物を変えたのかキリトの方を向き体の方向も変えてさっきと同じように突進攻撃を繰り出しているのが見えた。

「リクヤ、大丈夫…よね…」

「俺は大丈夫だけど…ほかの皆は?」

「なんとか、ね…」

ユカにポーションを渡されそれを口に含む。ほのかにレモンの味がして徐々に緑の部分が増えていく。そんなことよりも俺はあのボスをどうやって倒すかをずっと考えていた。あんなに動かれると攻撃を当てたくても当てられず、逆にこっちが当てられる。

「…同じくらいの威力で相殺するしかないのか?」

「でも、その方法は相殺する人は相当危ないわよ…」

「ま、いけるだろ」

こんなところで危ないとか危なくないとか言ってられない、というかボス戦では全域が危ないんだ。もう無理やりにでも気楽に考えなきゃなやってられないんだよな。

「ユカ、この作戦をキリトたちに伝えてくれないか?」

作戦といってもない頭で考えるからとても単純なものだ。この5人の中で一番防御できるのは俺なのでアイツに対するタンクとして攻撃を相殺、その隙に皆で一気に攻撃だ。

「…分かったわ…」

作戦っていえるものでもないけれど伝えにユカが走る。…さ、相手の気を引きますか!
ユカから1本投げナイフを借りて、相手に投げる。それと同時にわざと目の前に来るような場所に移動する。
運のいいことに投げたナイフが当たりこちらに関心を持ってくれて俺のほうを振り向き、例の突進攻撃を繰り出してくる。まだユカたちは話しているようなので今は避ける。

「よっと!…絶風刃!!…もういっちょ!!」

空中でクロスに剣を振りそれによる剣圧による斬撃を飛ばす。それを片方ずつすらして行いあくまでこちらに気を向けるだけ…危ない橋を渡ってるけどそれは仕方がない!

どうやら話が終わったのかシリカがこちらに手を振ってくる。4人の数メートル離れたくらいの場所まで移動し、武器を構える。後ろではソードスキルを発動する構えをそれぞれ4人が取っている。

「…スゥ…ハァ…ぜやぁぁぁ!!!」

リズの腕を信じキャリバーンをしまい、オータムリリィを両手で持つ。さすがに片手であんなでかいやつは受け止め切れないからな…
掛け声とともに剣を振りまとめて始末しようとしたヤツのくちばしとが衝突する。俺との間にまぶしいようなエフェクトもかかっているけどそんなものはカット。皆を守るためにこいつを吹き飛ばす!その思いだけが俺の中にあった。

「うぉぉぉぉぉ!!!」

みんな、これで決めてくれると信じて剣を思いっきり振りぬく。数値で言えば恐らく微妙だったのだろうが俺が競り合いには勝った。それによって目の前にいるクロウオブアホーク―名前をしっかりと認識できたのも競り合いに勝てたおかげだろう―はどうぞ攻撃してくさいというような隙を見せてくれた。

そこからは体の力が抜けてしまい、後ろで剣で斬る音、棍による打撃音、投剣の刺さる音やらを聞いているしかなかった。皆必死に攻撃してくれて数十秒後にはポリゴンの破裂するような、この世界での消滅音が聞こえてきた。どうやら倒したらしい。


―――――――

「でさ、ラストアタックボーナスなんだった?」

「…ラスト、俺じゃないぞ?」

気力が回復し、めちゃくちゃ広い部屋の奥にある階段を目指し歩いている中キリトに聞いてみた。キリトは首を振って否定しラストアタックボーナスを取ったと思われるサチを指差した。

「ふーん……今思ったけどボス俺らだけで倒してよかったのかな…」

「いまさらだな…」

「KoBはともかく聖竜連合が黙っちゃいないだろ?…一応俺ら、ギルドだし」

「生きるためだった、しょうがない。とでも言っとけ」

聖竜連合は何人もの強者タンクが何人もいる頼れるギルドなんだけど反面、いろいろと黒い噂もあるから面倒なんだよな…あそこだけいまだにシリカをリーダーと認めてないし…

「いろいろと頑張るか…」

「そういえば」

いきなりキリトがこちらをいい笑顔で振り向いてきた。

「攻略復活、おめでとうな!」

「…あぁ!」

俺らがハイタッチしているなか、チラッとユカたちが見えたけどユカが少し興奮していたのは見なかったことにしよう…
ボス部屋で何かあったら怖いけど何もなく扉に近づき、開く。そして74層をアクティベートするため俺たちは階段を登っていった。





=あとがき=

やっと…やっと…ソードアートオンライン第一巻の内容に行くことが出来ます!!
なのでまた話が飛ぶよ〜ww
つぎはラグーラビット…かなww
ではではー







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