小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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第33話 =74層攻略開始、の前=


「…ふぁあ…」

もうすぐ冬なのでかまだ朝が暗い時間からキッチンに立ちフライパンの上でメニューを開き料理を作ってる俺。
理由は昨日の帰り際の出来事でどうすればいいのか考えすぎて全然寝れなかったから気晴らし程度…といってもむずいけど料理スキ
ルを完全習得しようと朝っぱらからいろんな朝食を作ってる。どうせ昼前には耐久値無くなって消えるんだけどな。

「リクヤさん、今日早いですね…」

「なぁ、シリカ…ちゃんと服くらい着てこいよな」

俺に指摘され寝ぼけ眼で自分の服装を見たのか彼女の服装はいかにも今起きました、と表現されているように着崩されていた。顔を服に向けた途端「え、嘘!?」とか叫びながら自分の部屋―といっても部屋数は全然なく合計3部屋しかないのでシリカはサチと同じ部屋なのだが…ほかにはリズとユカが同じ部屋だ。…俺は残った最後の1部屋で寝ている。この部屋で飯とか食ってるけど―に戻りいろいろ慌てながらいつもの装備、俺が渡したやつの強化型を着て戻てきた。ちなみに色はずっと赤だ、理由は知らないけど。

「お、おはようございます…」

「おう、おはよう」

シリカが改めて挨拶し俺が返すと、その隣の部屋の扉が開き2つの人影が見えた。

「…さっそく作ってるの?アンタも暇よね〜」

「リズ…鍛冶と一緒のような気がするけどな…」

「年下に対抗意識燃やすのって恥ずかしくないの?」

「う、うるせぇよ……おはよう、リズにユカ」

リズにユカがそれぞれ毒ついてくるので頑張って反論する。それほど俺が朝早くに起きるのが珍しいのか?…確かに、こんな早くに起きるのは1ヶ月に1回有るか無いかだけどさ。

「…お、おはよ…リクヤ」

「お、おはよう…」

今日は珍しくサチが最後に起きてきて挨拶してくるがどうも昨日のこと気にしてるらしく…俺もだけどなんかよそよそしくなっていた。その態度に不思議と思ったのか「何があった?」とサチに聞くほかの女子3人。やめさせようと声をかけようとしても昨日のことを思い出してしまい俺も声が出せずうつむいてしまう…なんとかサチ自身で切り抜けてくれてばれなかったのはよかったけどなんかほかの3人の目が痛いです。
そんな状況で朝食を食べ終わるとユカが何か思い出したかのようにメニューを開く。

「そういえば…昨日、アスナからこんなメッセージきたんだけど」

そこに書かれていたのは『今日、74層攻略にキリト君とパーティを組んでいくことになった』という内容だった。…そういえば俺もキリトからメッセージが来ていたことを思い出し確認する。するとそこにもほぼ同じ内容が書かれていた。

「キリトからも来てるぞ…どうする?」

「どうせ攻略再開するんだからいきましょうよ!」

「私も賛成。アスナとキリトの発展がどこまで行くか見たいわ!」

なんかノリノリの女子2人。…いや、リズまで参加したから3人か…リズはダンジョンには行かずその前の町でいろいろ話してから自
分の店に行くらしいけど。

「俺も賛成として…さ、サチ…は?」

駄目だ、どうしても意識してしまう…意識するというよりは昨日を思い出してしまう…

「う、うん。私も行く」

こうしてキリトとアスナの恋路…じゃなくて攻略を俺たちは見守る兼いっしょに攻略することにし、74層へ向かうために準備をし、家を出る。そのとき、最初に出た俺がギルドの紋章の入った腕話というとんでもない忘れ物をしてしまい一旦戻ると、今から出ようとしているサチを見かけ俺は、声をかけてしまった。声をかけた理由は謝りたいからなのだが。

「…どうしたの?」

「き、昨日はさ…本当にごめん!!」

「へっ!?…あぁ…うん、別にいいよ……私もうれしかったし」

「…最後らへんなんていった?」

「な、なんでもないわよ!!」

綺麗に頭を下げ、謝罪する。昨日は「うん」としか言わなかったけど今日は許してくれたような言葉を耳にできたのは正直うれしかった。そのあとのごにょごにょ言っていたのは残念ながら聞こえ無かったが…でも関係が崩れるようなことがなくて本当よかった。


=第74層=

ここについた途端、転移門広場ではキリトが眠たそうに相棒のアスナを待っているのが目に見えた。

「おーっす、キリト」

「…よぉ、リクヤ…ふぁあ…」

「眠たそうだね…どうしたの?」

「アスナとの待ち合わせ時間が9時なんだけどさ…まだこないんだよ…」

俺が時計を確認するとただいまの時間は09:05と表示されていた。人間誰にも遅刻することは1度や2度あると思うけどアスナにしては5分の遅刻は珍しい。攻略会議の時とかなんか、ザ・学級委員長みたいな存在感出してて俺が遅刻するとめちゃめちゃ怒られたという、少し苦い思いでもある。それがたとえ5分でも…。

「…で、なんで一緒になったんだ?」

「昨日、アスナの家でラグー・ラビット御馳走になったのは知ってるだろ?そのあとラッキーカラーが黒だなんだで…押し切られた」

隣で「一緒にご飯!?」と驚いている投剣使いのお姉さんがいるが、このテンションのときに構うと疲れるので無視する。女子同士は疲れる事がないのか逆に花を咲かせるが…

『…転移門に反応が来たな…これは、走りながらの転移か?リクヤ、一応避難しとけ』

「避難って…まぁいいけど」

その言葉と同時に俺が一歩後ろに下がるとほかの皆も俺を真似し同じく一歩下がる。するとソラの言ったとおり転移門が光りだす。
誰かが来る証だが、いつもとは違ってその光の中から一歩下がったキリトに突撃するんじゃないかっていう勢いで光から飛び出す紅白制服のアスナが転移してきた。案の定キリトにぶつかり一緒に倒れこむ。さすがだな、キリト…女子のクッションになってあげるなんて俺には出来ない行動だよ…と、そこまでは尊敬していたけどいきなりキリトは右手をあげ何かを揉もうとした。

「キ、キリトさん!!そこは…「や、や────っ!?」…あ、遅かった…」

シリカが止めようとするも叶わず、アスナの上半身にある何か、もとい胸を何度も何度ももみ始めていた。まるで俺がサチにやったみたいに…さすがにアスナも自己防衛が働いてキリトを地面に叩きつけその場に立つ。
「お、おはよう。アスナ」と手を握る動作をしながらの挨拶にアスナはキリトに対し自慢の細剣を抜こうとしていたが転移門がさらに光だしその中から人影が2つ出てくるのを見た瞬間にアスナはキリトの後ろに素早く隠れた。

「ア……アスナ様、勝手なことをされては困ります……!」

「我々のことも考えてください」

成人男性にしては、おおよそ高いと言えるだろう声、それと高校生にしては低い声の2つの声が続けてアスナに降りかかる。
確かクラディール、そしてマルベリーだったか…様づけするのはちょっと…いや、ものすごい引く。

「さあ、アスナ様、ギルド本部まで戻りましょう」

「嫌よ、今日は活動日じゃないでしょ?……そもそもアンタたち、なんで朝から家の前に張り込んでるのよ!?」

おっと、目の前の護衛らしき男性2人にスで始まってカーで始まる犯罪者疑惑が?

「ふふ、どうせこんなこともあろうと思いまして、私一ヶ月前からずっとセムルブルグで早朝より監視の任務についておりました」

さっそく成人の方の護衛にストーカー疑惑が…もう1人は「今日は偶然」らしい。
「アスナ様に取り付こうとする弱小ギルドにも用がありますしね」と続けて言われても何故だろう、そんなに悔しくない…目線はユカの方を向いていて少々体をビクリとさせたがそれは気にしないでもいいだろう。

「それ、団長の指示じゃないわよね……?」

「私の任務はアスナ様の護衛です!それには当然ご自宅の監視も……」

「ふ、含まれる訳ないでしょバカ!」

アスナが自慢げに言うクラディールをさえぎってそう言った瞬間、怒りを目に宿すが怒りをあらわにしたいのはアスナのほうじゃないか?だが、それを突っ込ませない勢いでアスナはクラディールによって無理矢理連れて行かれそうになる。でもその間に割り込む1人の黒ずくめの剣士が逆にクラディールの手をつかむ。

「悪いな、お前さんトコの副団長は、今日は俺の貸切りなんだ」

「おぉ、言うわねぇキリト」

どうやらユカさん、さっきまでクラディールに対し大事な妹をストーカーされた怒りを(俺いわく)オーラで滲み出させていたがキリ
トには信頼を置いているのかそのオーラ的なものも消え去った。
向こうは向こうで任せておこう…問題は今まで黙っているマルベリーだ。

「…で、血盟騎士団のアンタが何のよう?」

「いや、用があるのはその投剣使いのほうさ」

リズに聞かれたにも関わらずそれを無視、いいながらかっこつけた顔をしながらユカに近づく。やっぱりトップギルドのメンバーなのか意外と素早くなっておりユカは腕をつかまれた。そして耳元で何か言ったらしく、その言葉により力を入れて腕を振り払う。

「…そっちが最初にしてきたんじゃない…!!」

「酷いな…今まで守ってあげたのは俺じゃないか。その恩返しだと思ってさ」

「ふざけないで!!アンタに上げるくらいならリクヤに上げたほうが十分ましだわ!」

何をくれるのかは知らないけれど俺、こんな人と比べられてるんだな…正直言おう、外見はかっこいいと思う…現実でもクラスの女子に話しかけられた覚えがあるから、名前は覚えてないけど。でも中身がな…なんか見下しすぎで残念…

「俺がこんなやつに比べられる…だと!?…俺と勝負し俺がお前に勝ったら俺に初キッス…いや、それ以上のことをしてもらうかな」

「わ、分かったわよ!」

…へぇ、この2人が付き合ってたときにキスしたことなかったんだな…初知りだ。あいつは一瞬俺を見たけど負けたことを思い出したのかあえてユカにデュエル申請をしていた。完璧にこいつ、ユカなめてるな。単に素早さだけなら恐らくユカはトップレベルだろうに。ちょっと血が上っているのか申請されたデュエルを承諾するユカ。それと同時に向こうではキリトが武器破壊をクラディールに行い、降参させてデュエルは終了した。負けたほうは野次馬かき分け転移して行ったが。

「ユカさん…勝てますかね…」

「…アイツの強さは俺たちはよく知ってるだろ。勝つぜ」

秒数が10をきろうとしたときにはユカは5,6本の投剣を指と指の間に、マルベリーは俺と戦ったときと同じく大剣を。正直ユカが負けるはずがないとこの時点で確信できた。敏捷対筋力ならまず敏捷有利だし投剣には対プレイヤー用のソードスキルがありユカはそれをものにしている。

「…楽しみだな!お前のを奪うのは!!」

「……っ!」

その発言に思い切りにらむユカだったがデュエル開始の音がなるとともに1人は走り出し、ユカはその場から消えた。
俺の目ではユカがその場から消えたように見えたのだ。多分ほかの人にも消えたと思う人は多いはずだ。そして次の瞬間、ユカがマルベリーの後ろに立っておりそれと同時にマルベリーが地面に倒れる。HPが減ってないところを見るとどうやら麻痺毒つきのナイフで終わらしたらしい。そして例のソードスキル『レイン・モーメント』も使ったのがナイフの刺さっている場所で確認できる。

あの技は投剣専用ソードスキルでそれ以外にも敏捷、そしてクリティカル部分を見つけるために目に関するパラメータを上げなければ使用できない。面倒な条件の変わりに、対プレイヤー戦では相当な強さをえる。
後方担当のデュエルに対する主な考え方は「デュエルは始まる前から始まっている」らしい。俺にはよくわからないけど…それで鎧の隙間を的確に、瞬時に見つけ開始とともに走りこみ超至近距離で投剣で攻撃するものだ。

「降参すれば、麻痺も解けるわよ…」

「ぐ…こ、降参…」

その言葉とともにユカにWiner表示が出てマルベリーの麻痺も溶ける。相当悔しいのかユカのほうをにらみながら「覚えておけ」みたいなと捨て台詞とともに転移門に移動、転移した。

「…ふぅ……」

「ナイスデュエルだったわよ!」

「…ありがと、リズ」

なにかすっきりした顔でリズに引っ張られながら立ち上がるユカ。立った瞬間アスナも近づいてきて自身の姉を心配しようとするが逆に心配されてるな、あれ。

「…アスナもあいつの前じゃ形無しだな」

「お、キリトか。…だな、ああ見ると本当に姉妹なんだよな」

向こうじゃアスナ、ユカ、サチ、シリカ、リズの女子5人が恐らく今さっきのことを語っている。キリトはアスナと一緒に行きたいと思うから仕方なく、俺もその場に待つ。
一区切りついたのか全員でこちらにやってきてフィールドに続く道を歩いていく。途中、ユカに「気持ちの整理がついたら…話すから」と言われそういわれてしまっては仕方ないので待つことにしよう、ユカが言いたいことを言ってくれる日を。
そして境界線で俺たちはリズと別れ迷宮へ続く圏外の道をどんどん進んでいった。





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