小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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第3話=1層 最後の街=


人間って…がんばれば1ヶ月1人でも生きていけるんだな…
第一層迷宮区前の街「トールバーナ」についてそう思った。
1人だったからこの1ヶ月何人死んだのか、何が起こったのかはわからないけど
この街の人だかりを見たところまだまだクリアって様子じゃなさそうだな

「なんか情報ねぇのかな〜なんてあるわけ…」

すると突然、奥のほうから関西弁の大声が聞こえてきた。

「ナイスタイミング!」

俺は声の発信源と思われる広場へと向かった。
そこでは腕に覚えのありそうなプレイヤーがほかの街に比べたら多数いた。
すると…

「ベータ上がり共は、こん糞ゲームがはじまったその日に、初心者見捨てて消えおった。
奴らは旨い狩場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なってその後もず〜っと知らんぷりや!」

そんな関西弁が聞こえてきた。さっき叫んだプレイヤーと一緒らしいな…
いろんな人がその話を真剣な眼差しで聞いていた。
さらに…

「こん中にもおるはずやで!ベータ上がりの奴等が!
そいつ等に土下座させて貯め込んだ金やアイテムを吐きだしてもらわな
パーティメンバーとして命は預けられんし預かれん!!」

…なんか自分の意見ばっかり言ってむかついてきたな…
そんな俺の脚はステージに向かうよう、動いていた。だが、俺よりも先に動いていた者がいた。

「発言いいか?」

前ラ変の席から太い声があがりその人は立ちあがった。
背中の武器を見るに、斧使いのようだ。
そして、その男は立ち上がると先ほどの関西弁プレイヤーのもとへ向かいステージに立つ。

「オレの名はエギルだ。キバオウさん、アンタの言いたいことはつまり…
元βテスターが面倒を見なかったから、ビギナーがたくさん死んだ。
その責任をとって謝罪、賠償しろ、と言う事だな?」

エギルというプレイヤーは先ほどの怒声の内容を簡潔にまとめた
どうやら関西弁プレイヤーの名前はキバオウというらしい。

「…そ、そうや!」

エギルの質問に、キバオウは短く答える。
すると、今度はエギルはポケットから、小さな本のようなものを取りだした。

「このガイドブック……アンタももらっただろ。道具屋で無料配布してるからな」

「もろたで……それがなんや!」

キバオウは返事をする。
俺、もらってねぇや…後でもらいに行こう…

そんな俺の心のうちの心配をよそにエギルは続けた。

「配布していたのは、元βテスター達だ」

その言葉が響いた途端、いっせいにざわめきはじめた。
それもそうだろう。先ほどのキバオウの意見に賛同していたものたちはβテスターを恨んでいる者だらけだ。
そんなβテスターが自分たちに対し、親切心で情報を渡すとは考えられなかったのだろう。

そして、エギルは周りの方を向き、声を上げた。

「いいか。情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに、たくさんのプレイヤーが死んだ。
その失敗をふまえて、オレ達は、どうボスに挑むべきなのか。
それが、この場で論議されると、オレは思っていたんだがな」

エギルの言葉を聴き先ほどまで騒いでいた観衆が少しずつ声を出さなくなった。
キバオウも鼻を鳴らすと、皆と同じように段差に座った。
俺は話を聞くため近くに座った。
するとそこにはフードをかぶったプレイヤー、そして見覚えのあるプレイヤーが一緒に座っていた。

「お前…キリトか?」

「…もしかして、リクヤ?」

俺の思ったとおり、その人物はキリトだった。
そしてこの広場で話されていることを聞き、パーティを作らなければいけないということだったので
キリトたちのパーティに参加させてもらうことにした。

「よし。再開していいかな。ボスの情報だが、実はさきほど、例のガイドブックの最新版は配布された」

前でたっていたプレイヤーが先ほどのガイドブックを取り出し情報の更新を知らせた。
キリトによるとあのプレイヤーはディアベルというらしい。

その途端、ざわめきが起きた。キバオウも少し反応した。
そして、ディアベルは続けた。


「それによると、ボスの名前はイルファング・ザ・コボルド・ロード。
それと、ルイン・コボルド・センチネルという取り巻きがいる。
ボスの武器は斧とバックラー。
四段あるHPバーの最後の一段がレッドゾーンに入ると曲刀カテゴリーのタルワールに武器を持ち替え
攻撃パターンも変わる、という事だ」

そのボス情報にざわめきはどんどん大きくなっていった。
おそらくギリギリで生き残った人物がこの穂情報を残してくれたのだろう…

「皆、情報通りに行かない事もあるかもしれない。十分に注意していこう!
作戦会議は以上だ。
最後に、アイテム分配についてだが…金は全員で均等割り、経験値はモンスターを倒したパーティのもの。
アイテムはゲットした人のものとする。依存は無いかな?」

話が終わると、周りを少し見てみた。見た感じ…その質問に全員OKを出したようだ。

「よし。明日は朝10時に出発する!では、解散!」

ディアベルの解散宣言を聞き、俺とキリト、フードのプレイヤー(正体わかるまで以下フード)は広場から離れる。

そして、夜。
路地の突き当たりで俺たち3人は座っていた。
正確には1人で座っていたフードの隣に俺たちが座っただけなんだけど。

「…味ないな…」

俺はパンを1つかじりそう呟く。

「そうか?俺はこの街に来てから1日1個食べてるよ」

工夫はするけど、とキリト。

「工夫?」

俺たちと同じパンを食べていたフードのプレイヤーはキリトに質問をする
するとビンを出しそれをつけて食べてみろと、アドバイスした。

「クリーム?」

フードはパンに塗りつけられたものを見て、そう答えた。
俺も同じようにつけて、食べてみる

「う、うまい!!」

その言葉を聴き、フードも1口、口に含んだ。
そして少しの間固まり、次の瞬間ものすごい勢いで食べ始めていた。

「一個前の村のクエストの報酬。やるならコツを教えるよ」

このクリームの出所に興味を持っていた俺たちにキリトはそういった。
でも、そんなことしてる場合じゃないんだよな…
フードも同じ考えだったらしく、
おいしいものを食べるためにこの街に来たわけじゃない、らしい。
その理由は深すぎて理解しがたかったけれど…
そこから、少しシリアスな話となり今日は解散となった。

-4-
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