小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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第45話 =少女=


=第22層=

「………あぅ!?………痛ったぁ…」

まさかオブジェクトの樹に頭ぶつけるなんてどこのギャグマンガだよ…
俺は今コラルで定期的に行われている朝市的なものに向かっている。朝まで小説を読んでいたためずっと起きててそろそろ寝ようかなって思ったときにサチに「ちょっと食材買ってきて」と言われ――そこで断れない俺もなんだけど――しぶしぶおつかいにきたというわけだ。
なんで断らなかったんだろうな…などと思って道を歩いていると湖で釣竿を振っている男性を見かけた。

「こんにちは、ニシダさん」

初見だとプレイヤーではなくNPCだと思ってしまう年齢を顔に刻んでいるたまに魚などを譲ってもらう釣り専門のプレイヤーだ。

「おぉ!お久しぶりですな、リクヤさん」

「…お見事」

やっぱりこの人が釣りプレイヤー最強の座に君臨しているんじゃないのかって思うくらいに見事に青い魚を釣り上げた。

「今から、朝市ですかな」

「はい。…よかったら行きます?」

十分、ニシダさんも獲物を捕ることが出来たらしく俺と一緒に朝市に行くということになり、つり道具を片付けたところで俺の横について歩いてきた。

「そういえば、リクヤさん」

「なんですか?」

「噂ですけどね…『出る』らしいですよ?」

『出る』を強調するということは普段ではお目にかかれないものなんだろう。この層でいうのなら…モンスターか?
俺がそのことを言うとどうやら違うらしく横に首を振り、ニシダさんは自信の胸の前で両手をダランとさせていた。

「……幽霊…ですか?」

俺がそう答えると満足そうに頷くニシダさん。ありがたく地図を広げながらのそこからの彼の説明によると1週間ほど前、木工職人プレイヤーが俺たちの住む家の近くの深い森に質のいい丸太を拾いに来たそうだ。
加工すれば高値で売れるいいものだから夢中で集めていたらこのあたりはすっかり暗くなってしまった。やっぱり人間は夜の森に恐怖でも感じるのかそのプレイヤーもあわてて帰ろうとしたところちょっと離れた場所に白いものが木の影から見えたらしい。モンスターだと思いさらに慌てたがどうやら違うらしい。その白いものは人間のようで長い黒髪に白い服でゆっくりと木立の向こうを歩いていく。モンスターでなければここにいるのはプレイヤーだろうとその白いものに視線を合わせると…

「――カーソルが出ないのです」

「…はい?」

カーソルが出ないのならただのバグじゃないか?と一瞬思ったけれどこのゲームは無駄に高性能…無駄はいらないか。とても高性能なのでバグどころかラグすらも発生しないらしい。そんなネット用語言われても知らないけど。

「まだありますよ。さらにその白い女の子が月明かりに照らされたとき、向こう側の木が――透けて見えたらしいんです」

「ま、マジですか…?」

「あくまでも噂、ですがね…では、私はここで」

「え…あ、はい。またこんど」

どうやらコラルにすでについていたらしく、ニシダさんは自分のホームに設定してある宿へと帰っていた。ここで少しまてばまた準備の終えたニシダさんが出てくると思うが、早く帰らないとあの4人が怖いのでそのまま市場の方向へと向かう。ここでは朝にプレイヤーが露店を出していてそれが結構な量あるのでどこぞの市場のようになっている。
話のネタをありがとう…と心の中で感謝しながら足を動かしていると市場につくが、今日はいつもよりか店数は少なかった。

「えっと…」と、頼まれたものをどんどん買っていきモンスターを狩って手に入る数少ない俺の小遣いでついでに新たな小説なんかを買っていく。いま俺が熱中して呼んでいるのは「ソード○ート・オ○ライ○」というシリーズだ。

「…これでいいか、な」

俺が買ったのはこの世界でよく食べられている一般的な野菜系のものと肉系のもの、あとはミルク系だな。今日はどうやら新刊がまだ出てないらしいので小説は買えなかった。
そして帰り道、行きとは違い誰にも会うことなく家へとついてしまい朝木にぶつかったこととかはなんだったんだと思い出し危うくテンションが沈みかけた…いや、寝てないからすでに下がってるけど。

「ただいまっと」

「おかえりー」

サチの出迎えに返事をしながら冷蔵庫&冷凍庫として活用しているアイテムボックスに今日買ってきた食材を全部放り込む。放り込むっていってもメニュー開いて移動するだけだけど…。

「…俺寝るから昼、起こして〜」

「生活リズム崩れるよ?」

睡眠をとらなきゃ俺がいろんな意味で死ぬ…ということでベッドへ直行し毛布へもぐると急激に眠気が襲ってくるのでそれに逆らわずに俺は目を閉じる。









そして数時間後…







「起きろーーーー!!」

「…んな!?」

何故かしらベッドの上から吹き飛ばされその衝撃によって俺は目を覚まし、寝ぼけ眼で見たのはメイスを構えているリズの姿が…。起こし方荒すぎるでしょ…ソードスキルをぶつけないでください…

「あんたが起きないのがいけないんでしょ」

正しすぎて何にも言えない。

「…もう皆ご飯食べてるから行くわよ」

「おう」

そのままリズの後ろについていきいわゆるダイニングまで行くと皆がいつか食べたハン○ーガー風サンドイッチをパクパクと食べていて俺も同じようにサンドイッチがいくつも乗っている皿に手を伸ばす。

「……ぁむ…ぁむ…」

やっぱりこれハン○ーガーだよな。

「…そういえば、噂なんだけどさ」

と今朝ニシダさんから聞いた例の幽霊話をハン……サンドイッチを手にしながら俺は思い出しながら口をする。俺はホラー系に対してはいわゆる普通だがリズ、サチ、シリカはそういうのは駄目なタイプで逆にユカは興味をもつタイプ、今回も案の定その通りにユカ以外の3人は昼間から耳をふさいで震えていた。

「ということで、キリトたち誘って捜しに行こうぜ!」

「私もそれ、賛成よ」

ここでまず5人中2人はもう決定、あとはどうにかしてこちらに引き込まないと…そんなことを思っていると耳をふさぎながらサチが口を開く。

「な、何でわざわざ行こうとするの…?」

…大体理由1つしかなくないか?

「「楽しいから(よ)!!」」

どうやらユカも同じ考えらしい。理由は多分違うけど…俺はこういう探検も好きだし、皆といったらその分だけさらに楽しいって思ってるからな。

「…う、うわぁ……」

「大丈夫だって。ほぼ2年ずっとだから忘れかけてるけどゲームだぜ?」

あきれているサチにそんなものは存在しないとない頭を振り絞って説得を試みる。いまここがゲームって考えてしまうと必ず隙が生じてしまうため意識的にその考えを排除しているプレイヤーは多いだろう、攻略組は特に。でも俺はテイルズの技を放つたびに「ゲームなんだよな」と何度も感じている。
あのタイトルが生まれてもうすぐで30年がたつ結構古いゲームだが最新作は今でも発売されているし、その昔のソフトをハードまで買って何週もプレイしてきたのだ、それが染み付いてしまっている。
……SAOから帰還したらテレビにずっと張り付いてコントローラをガシャガシャしてる自分が簡単に想像できるのは気のせい?


「…そ、そうだけどさ」

リズが納得しかけているところにさらにユカが追い討ちをかける。

「大丈夫よ。幽霊なんていないから……きっと」

「最後に「きっと」ってつけるのやめてくださいよ!」

「きゅー!」

そこから何度か会話のキャッチボールが続き、なんとか想いが伝わったのかしぶしぶながら一緒に行くことを承諾してくれた。
その顔に少しだけ笑顔があるのはなんだかんだ言っているこの3人も皆と一緒に行けるのがうれしいのだろう。俺と一緒に行け
るのがうれしい…とは超がいくつもつくほどのチャラ男っぽくなりそうなので考えたくないけど告白された身から考えるとそう
考えてしまう部分が少しだけでもあるのは仕方がないと思う。

「………昔はこんなことすら考えなかったのにな」

「…なにか言った?」

サチがこちらに声を出してくるので「なんでもない」と苦笑いで返す。俺もこの4人と一緒に行けるのはうれしい、キリトたちを誘うのはいつもとは違う人がいると楽しい感じが大きくなるんじゃないか?という浅はかな考えだけど。

「さ、まずはキリトんち行こうぜ」

俺は今も私服として着ているオレンジ色のシャツに遊びで外出する用の黒いパーカーを羽織る。サチたちは…ご想像にお任せだよ。出かけるたび待たされるけどそれをなかったことににしてもいいかな、て思う似合ってる格好だよ。

『なにニヤニヤしてるんだか』とソラにつっこまれて何もいえなかったのは………認めたくないけど事実です…。

とまぁ、皆でキリトの家に歩いて移動、すぐ近くにあるので数分とかからずについた。


「キリトーいるかー?」

俺の声に反応したのが数秒後、さらにそこから10秒くらいで家の扉が少しだけ開いた。

「ど…どうした?」

「幽霊が出るって言う噂が本当かどうか確かめてこようってことで一緒に行こうぜ」

「あー…えっと……その……」

断るなら普通に「今日はいけない」とでも言えばいいのにずっと言葉を探している。それを不審に思ったのかユカが索敵をかけ
ておりニヤリとしながら口を開いた。

「……家の中に反応がキリト合わせて3つあるんだけど」

「なっ!?」

「リクヤ、絶対なんか隠してるわ」

行動力のよさに少々あわてながらも俺はユカに返事をし微妙にあけられているドアを筋力値の限り引っ張る。当然、パワーは俺の方が強いわけで…ドアと一緒にそれを開かれないように逆に引っ張っていたキリトもこちらへ引っ張られ投げ出されてきた。
だが俺には男を抱える趣味もなし、他の女性陣が支えようとしたら恐らく巻き添えを食らうので全員避けてしまい、キリトは地面に顔を強打していた。

「「「お邪魔しまーす……」」」

と他人の家に索敵をかけたり他人を地面に強打させたりといった迷惑をまったくかけてない3人は後ろで挨拶していたけど。

「リクヤ君!?それにお姉ちゃんも!?」

「おっす」

先に入った俺とユカの姿を見たアスナがその手に持っていた辛そうなサンドイッチを地面に落としかけていた。というかサンドイッチ率多いな、と思いながら部屋を見渡すと黒髪を持っている小さな後姿だけがソファの上から見えた。

「……その子…だれなの?」

ユカもどうやら見えたらしく自身の妹にその頭をもつ子のことを聞く。

「えっとね、お姉ちゃん…これには深いわけが…」

などとアスナ自身の夫そっくりにあわてている。後ろからドタドタと聞こえるので後ろを見るとサチ、シリカ、リズが。それに主人のキリトが同じくリビングに入ってきていた。

「ねぇキリト。ソファに座ってる子って?」

どうやらサチも見つけたらしくユカと同じ内容をキリトに聞いていた。
だがここでこちらに気づいたのか俺たちの疑問になっていた少女が鈴のような―俺には聞いたことのある声だけど―声を響かせ発言をした。

「……パパ?……ママ?」

こんな部屋全体の空気が凍る感じの言葉を。


























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