小説『ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士』
作者:涙カノ()

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第46話 =幽霊の正体=



「…この子が幽霊の正体ね……」

リズがピナと遊んでいる少女、ユイを見ながらそういうとアスナもそれに頷く。どうやら昨日、俺がニシダさんから聞いた噂を
キリトも街で聞いたらしく遊びに行きたいと駄々をこねていたアスナと一緒に幽霊探しに行ったら噂どおり木の影から黒い髪で
白い服という―まぁ今の格好もそうなんだけど―ユイを見つけたらしい。だが不可解なことにいくら視点をあわせてみてもカー
ソルは表示されず、かといってここまで移動できたのでNPCでもなく、クエスト発生の鍵でもない…などとほぼ全部が噂どおり
のものだった。
それにしてもそんな不思議な存在に対しても対応がとれているピナも一体何者なんだろう…ユイと同じく不思議な存在だ。

「ピナはピナですよ。……それでユイちゃんは名前しか…知らないんですよね…」

「うん…名前は覚えてたらしいんだけどそれ以外は…」

「それ以外ってことは……親とかも…か?」

「あぁ…何も知らない…ってさ」

俺たちはこのユイには親がいると全員一緒のことを考えていた。ナーヴギアの年齢制限は13歳以上でこの8から9歳に見えるユイ
やシリカを含めたプレイヤーは普通この世界の架け橋となるものを使えないように設定はしてあるはずなのだが何人も13より下
のプレイヤーがこの世界にいるというのはすでに確認されている。
でもシリカにはピナという友達以上の存在が長い間いたけどユイは見たところ1人だった。もしも親がおらずこんな狂っている
世界に入っているとしたら……なんて考えたくもなかった。考えたくもないけど…

「……そんなの…おかしいよ、やっぱり」

サチの言うとおりだと俺も思う。2年前、このゲームを購入したほとんどがネトゲ中毒者、例外的にユカのように勧められて起
動した人や兄のを使ってるというアスナ、懸賞に当たったもので入っている俺のような人がいると思うけど…もし、興味を抱い
たというのがこの世界に閉じ込められた罪なのだとしたらこの少女は本当に何の罪も被ってないはずなのだ。それなのにこんな
目にあい、精神的にダメージを追ったとしたなら…

「残酷…ううん、もっと…最悪よりも酷い…」

「…ゆぅ姉(ゆぅねぇ)?」

「……あ、ゴメンなさい…心配させちゃったわね…」

と、ユカは精一杯の笑顔を見せてユイの頭をなでる。ちなみに「ゆぅ姉」というのはキリトが俺たちのことをユイに教えたとき
に名前を呼んでもらおうとしたのだがどうやら呼びやすい名前もあったのだが呼びにくい名前もあったために呼びやすい名前と
いうことでユイが命名したものだ。

ここで紹介しておくと

サチは「さー姉(さーねぇ)
シリカは「しー姉(しーねぇ)
リズは「りぅ姉(りぅねぇ)
そしてさっき呼ばれたユカは「ゆぅ姉(ゆぅねぇ)
最後の俺は「にぃ」だった。

俺の呼び方だけ平仮名なのはその方がユイらしさがでるというもの…と考えてる作者が字面を気にしたものだ。
(……本当に自分の都合だけで…すいません)

「なぁ…ソラに聞いてみるのはどうなんだ?」

「わかった…やってみる」

キリトの提案に俺は賛成、目を瞑り頭の中でソラに話しかける。たわいもない話とかなら普通にしゃべるんだけど今は内容が内容だからこの方法をとる。この方法をとることで俺とソラに限り顔と顔をあわせ対話が出来る。

今回も無事出来たらしく、俺の目の前には一番最初、ソラの存在を知った白い世界が広がっておりそこに【抜刀騎士】の時の服を着た俺で俺じゃない人が立っていた。俺は普通の私服だけど。あとここだけかどうか知らないけど一応違いが出来てるのか瞳の色が違う。俺は濃い青色に対してソラは黄色だ。色的にはちょっと羨ましい。

『よぉ、ソラ』

『…あぁ。なんのようだ?』

『いや聞いてただろ…。まぁ一応説明するけど…』

少しの間だけ俺の説明が入る。主に…というか全部ユイについてだ。

『そこで質問なんだけどさ、記憶がなくなったり言葉が上手くしゃべれない…ってことは起きるのか?』

『起きる…ではないがもし脳がそこへ信号を送送信できているのならそれは起こらない』

だったらユイはどうなるんだ?と聞こうとしたらその前に『だが』と被された。

『その信号を送る部分がその感情でやられている…というのならその現象が起きる。なにせ信号自体に不具合が生じているんだからな。いくら高性能なナーヴギアでも補うことは出来ない』

ユイが話せないあの状況の可能性はある…と。

『次の質問、カーソルが出ないなんてことって起きるの?』

『それは絶対にありえないはずなんだが…現に起こっているんだよな…』

『へぇ…ソラでもわからないことがあるんだな』

『俺はGMではない。…でも…いや…あの存在なら…もしかしたら…』

なにやらブツブツ考え始めていた。

『何か…わかったのか?』

『…すまない、確証のない不安定なことは言いたくない』

なんだそのゲームに出てくる鬼畜眼鏡と呼ばれてる某帝国軍大佐の台詞は…と思ったけどこいつは冗談を言わないので聞き出すのはまず無理だろう、諦めるか…。

『なら、言えるときになったら教えてくれ』

『…わかった』

ソラの言葉を聴き俺はまたこの空間でも目を閉じる。こっちに来るときはなんともないのだが逆に戻るときはフワッとした感覚があるのでなんか嫌だ。今回もぶれずにそれが起こり元へ戻ってきた。

「…どうだった?」

「……わからないってよ」

確証がないので言えない、とソラがいったことそのまま言えば恐らく1人には「聞いて来い」と怒られそうな気がする…なんて理由じゃないけど一応それに似ていると思う表現を使う。

「なら…足で探すしかないか…」

「新聞とかはもう調べたの?」

「うん…でも何にも書いてなかった」

サチの言葉にもアスナは顔をうつむかせて答える。無意識のうちに親がもういないという考えがどんどん浮かんできているくるのだろう。

「そういえば、ユイちゃん寒くない?」

「さ…さむく?」

ユカが言うがどうやら言葉の意味がわからないらしい…ここまで重症なのはやばくないか?

「えっと…体がブルブルッてなるかな?」

それをシリカが補足する。やっぱり小さい同士何か通じるものがあるのか?

「…失礼なこと考えませんでした?」

「いえ、なんにも」

よかった、今回は口に出していないみたいだ。どうやらシリカの補足でわかったらしくユイはそれに頷いた。さて…女性陣たちは何でいっせいにメニューを広げているんだ?という質問は野暮だろう。あの人形みたく白くて小さいユイは本当の人形みたいにされるんだろうな〜と意味はわかってないだろうユイに心の中で合掌しておく。


そして数分後…

「これ、どうかな?」

「こっちの方がいいわよ」

「えぇ?こっちじゃないですか?」

「こっちの方がいいと思うけど…」


などと、女性陣(リズを除いた)がユイの体に服を次々と目の前に掲げていく。最初は頭にハテナを浮かべていたユイだが面白くなってきたのか今はニコニコしてる。

「リズはやらないのか?」

「あたしはやられる立場だから」

アハハ、と苦笑いしているリズ。そういえば今の…というか店での格好ってアスナのコーディネートだっけか。
本当に俺…男でよかった気がするな…どうやらキリトも同じことを考えてるらしく「被害にあわなくてよかった」と顔に書いてある。

そして数十分後、やっと服が決まったらしくそれ以外のものは片付けていた。そして服を着せようとメニューを開くように言うがどうやらやり方がわからないらしい。キリトが見本を見せるように右手を振るとユイも同じく右手をふった。しかし、メニュー画面は現れず、何度繰り返しても画面が出ることはなかった。だが思いついたのか普通なら何もでない左手を振ると…

「でた!!」

喜ぶユイだが俺たちにはもう何がなんだかわからない…。そこでアスナがユイの後ろまで行き手を握る。どうやら可視モードにするらしい。普通はウィンドウを開くと名前、レベル、EXPが一番最初に表れるためマナー違反の行為だ。なのでさっさとアイテム欄に行こうとしているのがわかるがそこで不意にアスナの…アスナの握っていたユイの手が止まった。

「な、なにこれ…?」

「どうした…の……って…何よ…これ…」

姉妹そろって同じ反応に少し笑いそうになるがこの2人は妙なことでは驚かないはずなんだけど…。と思いながら俺たちは全員ユイの後ろへと行く。それを見たときには絶句するしかなかった。
さっきも言ったとおり通常メニュー画面は最上部に名前、HPバー、EXPバーの1つのエリア。そして下の右半分には装備フィギュアの2つ目のエリア。そして左半分にはコマンドボタン一覧の3つ目がある。俺の場合はその3つ目の部分の下辺が上に上がっておりそれで開いた場所が【称号】となっているが通常は基本的には変わらない。そのために俺もユイのおかしくなっている部分に気づくことが出来た。
ユイのメニューは『Yui-MHCP001』という奇怪なネームのみでHP、レベルもEXPもなんにもない。ゲージがないではなく、存在自体ないのだ。さらに装備フィギュアはあるもののコマンドが明らかに少なく『アイテム』と『オプション』の2種類しかないというおかしさ満天のものだった。
一応、着替えは出来るということなので結構時間がかかって決まった淡いピンクのセーターをユイに着せるアスナ。服が新しくなったことに瞳をキラキラさせているユイにスカート、タイツ、靴を次々服を着替えるという名の装備を行い、最後に今まで来ていたワンピースをユイのアイテム欄にしまった。

「どう?ユイちゃん」

「うん!ふわふわぁ!」

どうやら喜んでいるようで頬にこすりつけたりスカートを引っ張ったりしている。

「小さな子供がいるって話は聞いたことあるわ。確か…第1層だっけ、お店に来た人が話してた」

「でも今の第1層って…軍のテリトリーじゃないでしたっけ…?」

「あぁ…だから一応武装できる用意はしといてくれ」

キリトの声にそれぞれの武器を確認しておく。第1層は武器を持ってうろつく場所でもないのですぐに出せるようにしまってお
くだけなのだが…ま、念には念をということで一応俺は2つの大剣をセットしておく。

「それじゃあ行こうか」

「にぃ…どこ行くの?」

「ユイを助けてくれる人を捜しに行くんだ、もちろんユイも行くよな?」

「うん!パパとママ、にぃやねぇたちと行く!」

と元気に頷くのを見て俺はベッドの上からユイが倒れないように手を握りながら下ろす。そしてキリトにバトンタッチしてから
俺たちはキリト宅からまずは転移門のあるコラルに向けて足を進めた。




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