小説『緑ヶ丘高校電算部ゲーム製作記』
作者:芳野()

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第一話 まずどの言語から始める?


「さて」
 ようやく落ち着きを取り戻した俺は、椅子に座りなおしてから言った。
「で、まず最初に何をすればいいんです?」

 立花先輩も隣の椅子に座り直す。
「そうね、やっぱり使う言語を決めるのからやろうよ」
「言語?」
「うん。プログラミング言語って沢山あるのよ。Visual Basic、C、C++、C#、Java、HSP、Action Script、JavaScript……」
「うわあああっ。せ、先輩、もういいです!」
 さっさと止めないと百以上は言いそうな先輩だった。
「うう、どれも英語かよ。わけわかんねぇ」
「仕方ないでしょー。コンピューターはアメリカで作られたんだし。一応、なでしこって日本語のもあるけど……」
「で、俺どれからやればいいんです?」
「難しい質問ね」先輩はうーん、と指を顎に当てて考え込む。
「RPG作りたいなら、RPGツクール。ノベルゲーム作りたいなら、吉里吉里。アクションゲームなら、アクションゲームツクールやMultimedia Fusion 2。簡単にゲームを作れるツールは色々あるけど、あたしはイツキくんに、そういう安易なルート取ってほしくないの」
「俺、安易なの大好きです」
 先輩は俺の抗議を軽く無視して続けた。
「ちゃんとしたプログラミング言語を使えるようになれば、アクションもRPGもノベルゲームもネットゲームも何でもそれで作れるようになるわ。だから――」
 先輩はうーん、と考えてから。
「やっぱりCから、かなぁ」
「いきなりですか。先輩、エロいですね」
「……どういう意味よ、それ?」先輩は俺のジョークを理解できなかったようだ。「とにかく、基本中の基本の言語だから、ここから始めるのがベターね」
「わかりました」
 本当はちっともわかっていないが、一応は答える。
「うん、よろしい。じゃ、Cのコンパイラをダウンロードするよー」
「コンパイラ?」
 また謎の言葉が。
「うん。もともとコンピューターが理解できる言語は、機械語ってやつだけなの。他のプログラミング言語は、みんな機械語に翻訳しないといけないの。で、いったん全て翻訳して機械語で出来た実行ファイルを作るプログラムがコンパイラ。あとね、一行ずつプログラムの実行中に同時翻訳するインタープリタって方法を使う言語もあるの。ま、この二つが主流ね」
「……はあ」さっぱりわかんね。「とにかく、そのコンパイラを使えばいいんですね」
「うん。一応、タダで使えるのが色々あるから、それをネットからダウンロードするわよ」
 先輩は、俺のPCのマウスを取ると、インターネットブラウザを開いて、こちこちと選んでいった。
「初心者にはマイクロソフト帝国のアレより、こっちの方がいいかなぁ……」
 ぶつぶつ言いながら、海外サイトへと先輩は向かっていった。

http://sourceforge.net/projects/mingw/files/

 そして先輩は、「Looking for the latest version? Download mingw-get-inst-20110530.exe (574.8 KB)」と書かれた文字をクリックする。
 しばらくしてmingw-get-inat.exeがダウンロード完了と出たので、先輩は実行をクリックした。
 すると黒いウィンドウが現れ、ズラズラと英字が表示され、高速にスクロールしていく。

「な、なにしてるんですか!」
 俺はビビりまくっていた。悪いウィルスでも入れているんじゃないか?
 俺のその表情が先輩にも伝わったのだろう。くすくす、と笑われた。
「ただのインストールだよー。mingwってコンパイラを入れてるの。これはGCCってLinuxの超有名コンパイラのWindows版なんだけど……しばらく待ちましょ」

 そうしているうちに、ウィンドウは閉じる。

「うんうん。インストール成功♪ では、最初のプログラムを作るよー」
 先輩はそう言うとキーボードをカタカタと打ち始めた。

 俺は固唾を飲んでじっとモニターを見つめていた。

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