小説『緑ヶ丘高校電算部ゲーム製作記』
作者:芳野()

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第三十五話 エンディング


「先輩、俺の願いを言いますよ。それは──」
「ごくりっ」
 先輩が喉を鳴らす。
 部室が俺の次の言葉を待って静まり返る。

「それは?」と西原さん。
「……」サヤちゃんもじっと見ている。
「わくわくっ」岸井先輩は目を輝かせている。

「それは──」俺は言った。「これからも、俺にプログラミングを教えてくださいってことです」
 ぬおおおっ。
 部室がどよめいた。
「えっ、そ、そんなので……いいの?」
「ええ。俺は先輩から教えてもらっている間、充実感を味わったんです。プログラミングの面白さに気づいたんです。だから……これからも、教えてください」
「う、うん。もちろんよっ」
 先輩もにこりと笑って、俺に手を差し伸べる。
 俺はその手を握った。

「なんだー。つまんないー。アカネが裸で校舎中をマラソンするとか期待してたのにー」
「なんなのよっ、そのマニアな設定は!」
 先輩二人がいがみあっている。ま、いつもの事だ。
「イツキくん」西原さんが言った。「私、感動しました。イツキくんの成長は、プログラミングの知識だけじゃなかったんですね」
「お兄ちゃん、私も、私の知っていること、教えるね」
 西原さんとサヤちゃんも俺を祝福してくれる。

 俺は頷く。
 これからも、ゲームプログラマとしての、長い修行の道が続くのだ。
 でも、先輩や仲間たちと一緒なら、それも苦じゃないだろう。


 終わり



あとがき

 プログラムというややこしい世界を小説で楽しく追体験できるようなものはないかと前々から考えていたので、実験作として作ってみました。
 第二部を始めるかは、まだ考え中。ま、このまま男坂エンディングで終わりでもいいかと思うが(笑)。

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