「なんかたまたま道歩いてたらさー…いきなりめっちゃくちゃ服はだけた、
可愛い女の子が男どもに追われながら道に飛び出してきたからさー…
お!これはピンチなんじゃないのー?!とか思って助けたあげた訳よ」
「ふーん…」
リサ、ほんのこの前までとっても楽しそうだったのに…
別れちゃうのかな…
信じるって難しい。
「おいー!ちゃんと聞いてたか?」
あっちゃんがあたしを現実の世界に引き戻す。
「あ、う、うん。ありがとう」
「まーいいってことよ」
チラチラとファミレスをにいる人と目が合う。
なんだかんだ整った顔立ちで、センスのいいあっちゃんは目を引く。
「出よう」
あたしは一言言うとぼやくあっちゃんを無視してレジへ向かう。
「金は俺が出すよ」
「あたしのは自分で払う」
言い合ってるうちにあっちゃんは会計を済ませてしまった。
お礼を言って商店街を抜ける。
出口にさしかかる。
いつも路上ライブがやってるところだ。
「りょうこ、置いてくぞ」
「あ、うん」
知らぬ間に足止まっていたらしい。
結局名前も聞けなかったあの時を後悔しながら、
でも、あの一瞬の出来事を今でも大事に思いだしてる。
そんな自分が少しみじめに思えた。