「あと3分!? やっばぁっ!」
このまま走り続ければ間に合うのだろうか。
本当はこんなことをしている暇もないが、とりあえず自己紹介をしておこう。
俺の名前は『八神 玄人(やがみ げんと)』
今年から、今目指している 『私立詠城学園高校』通称:詠城学園 に通うことになった16歳。
入試で主席合格を果たし、この日入学式でこれからの抱負を生徒代表として述べる予定だったのだが、
もう一度携帯を見ると
9:04
入学式は9時からだ。 この時点俺の遅刻は決定した。
家は8時40分に出た。余裕で着くと思ったのに…。
ハァ…、ハァッ…と息を切らせながら走っているとやっと校舎の影が見えてきた。
「うおぉ・・・」
一言で言うと、デカい。
詠城学園の『城』はここからきてるんだろうなぁ。
大きく開かれた校門の前で俺は思わず立ち尽くしてしまった。
―――――― いそいでいることも忘れて。
ハッ!と我に返ったときは、すでに遅し・・・
入学式が執り行われている体育館のドアの前に来たとき、時計の針は9時10分過ぎを指していた。
ドアの向こうでは校長だと思わしき人物がしきりに「えー、えー」とくり返しているのが聞こえる。
「すっげぇ入りづらいな、これ・・・」
いつ入ろうかと思案しながら、中々一歩が踏み出せずにいると
「君、なんでここにいるの?」
と、いきなり後ろから声がした。
なんだ? 先生か!?
驚いて後ろを向くと、そこには俺と同じ学生服に身を包んだひとりの男子生徒がいた。