序章1
『都市伝説は秘めやかに産声を上(あ)げる』
――断章1――
何がきっかけかなんて、よく覚えていない。
確か、一人目の時は、すごく足が綺麗に見えて、欲しくて仕方なかったのだ。
だから、足の付け根から切り落として持ち帰った。
次の二人目は、確か腕だ。そう。
蝶のような痣が二の腕のところにあって、それがとても愛らしく見えた。
だから、同じように付け根から切り落として持ち帰った。
三人目は唇。厚くて果実のように赤かったのを覚えている。
唇だけ切り落として持ち帰ったが、無理に切り落としたため、形が少し崩れた。それだけが残念。
四人目は耳。福耳で、白い耳たぶが愛しかった。
切り落として持ち帰った。今でもお気に入りで、ホルマリン漬けにして身近に置いている。
五人目は鼻。高くて、細い鼻梁が魅力的だった。
これも唇と一緒で、切り落とすと、少し形が崩れてしまった。
六人目は胸。ホクロが三つ並んだ白い乳房が美しかった。
切り落として持ち帰った。ホルマリン漬けにしたが、耳ほど綺麗に保存できなかった。
七人目は髪。闇のような綺麗な黒髪。頭皮ごと剥ぎ取った。
やはり髪はいい。頭皮は腐り始めたが、髪自体は劣化することはない。
そして、この八人目だ。
彼女は、目が綺麗だった。
有名な私立校の制服を着た女子高生で、一ヶ月ストーキングして、彼女の日課を調べた。そして、バイト帰りで人気(ひとけ)のない道を歩くのを狙って、背後から頭を殴りつけた。
倒れた少女の背にナイフを突き立てる。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……………!!
ナイフを突き立てるたびに、私の中に、何とも言えない快感が突き抜ける。
ああ、でも、ここで終わらせてはいけない。お楽しみは、これからなのだから。
それから、少女を仰向けにし、月明かりに照らされた生気の無くなった目を見つめてうっとりとした。やはり美しい目だ。
私は彼女の眼球を潰さないように注意しながら、目に指を突っ込む。
ぐじゅっという音が響く。掌に眼球の感触を感じながら、腕を引くと、視神経と繋がった眼球が抉り出される。
私はナイフで繋がっていた部分を切ると、美しい眼球を用意していたホルマリンの瓶の中にしまった。
もう片方の目も同じように抉り出すと、私はもう少女には興味を無くしていた。
だって、私が欲しいのは、この眼球だけなのだから。
こうして、私は新たなコレクションを抱き締めて、家路へ急ぐのだった。
家では、今まで集めたコレクションたちが、私の帰りを待っている。早く帰ってあげないといけない。
ああ。今日は何ていい夜なんだろう。