小説『ハリーポッターの双子の妹は、“幻の瞬殺”と呼ばれた魔女 part1』
作者:梨那♪(小説大好き♪)

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「生き残った女の子」


ここは一目がつかないイギリス、プリベット通り十九番地の住人マーガレット夫妻が暮らしていた。
マーガレット氏は、かなりのチンピラ嫌いで日頃、車の中から気に入らない人達を愚痴愚痴と言っていた。
そしてその奥さんは、どこにも居ないというような心が寛大な人であった。
一人娘のメアリーが、大事にしていたコップを割ったとしても何一つ怒らずに娘の事を心配するばかりであった。
その娘のメアリーは誰もが憧れる歌手に憧れ、暇さえあればその歌手を皆に自慢していた程だった。
そして…その平穏なマーガレット家には、もう一人…誰も知らない女の子が小さな部屋に暮らしていた。
名前は「ハリーナルイリス=ポッター」だ。
そう。彼女こそ、悪の道へと走った「あの人」を倒したもう一人の英雄と呼ぶには相応しい人であった。

    ハリーナルイリス=ポッター

魔法使い・魔女なら誰でも知っている「ポッター一族」。
だが色々な人達は口にするのであった。

「もしかしたら…『例のあの人』が一緒に…殺したのかしら…?」
「あぁ…。かもしれないな…。」
「そんな…。」

11年前に起きた『例のあの人』が消えた日、誰もが双子の妹のハリーナは両親と共に殺された…
そう思う魔法使いや魔女は多かった。
だが彼女、ハリーナは死んではいなかった。
ハリーナは『例のあの人』によって死、寸前であった魔法使いに命を救われ、近くを通っていたマグルの老人にハリーナを預けて命を尽きてしまった…………。
そんな説が残っている。

誰も知らない彼女の物語は始まるのだった。


ここは平穏と呼ぶのには少し、相応しいマーガレット一家。
早朝に目を覚ますマーガレット氏はいつも決まって真っ先にハリーナルイリスを叩き起こすのであった。

「ドン!ドン!ドン!ドン!」
「早く起きんか!この馬鹿者!!」

マーガレット氏は決まっていつも、ハリーナの事を「馬鹿者」扱いをするのであった。
その大声に目を覚まし、ハリーナはのろのろと起き出しながら汚い窓から自分の顔や髪型をチェックしていた。

そしてようやく数分が経つと隣の部屋で寝ているメアリーがハリーナの部屋に入りながら髪の毛を溶かすのであった。

「ねえハリーナ、今日はどんな髪型にする?」マイペースで豊かなメアリーは、ハリーナを自分の妹のように接し、決まっていつもメアリーがハリーナの長くて黒い綺麗な髪を縛ってくれていた。
「私はなんでもいいよ。メアリーが好きなようにして?」
「駄目だよ!自分の髪の毛だし、女の子だからちゃんとしなきゃ。」
メアリーは決まっていつも同じ言葉を繰り返し、快く鬼のような父親と伯母とは真逆であった。

この家にはもう一人、ハリーナを心の底から嫌う人がもう一人いた。
それはこの家の主と呼ぶのにはかなり相応しいマーガレット伯母だった。
そんなハリーナも心の底からマーガレット氏とマーガレット伯母を嫌っていた。
心の中では(あの伯母さんを子豚にでも変えられたらなー…。)とずっと思い込んでいた。
ハリーナは昔から魔女の夢を見る事から自分も自由に空を飛べたらなぁ〜と夢見る事があった。

「それじゃー今日はカチューシャみたいな髪型でいい?」気付けば、メアリーは自分の部屋から持って来たのであろう『髪形一覧表』という雑誌を見て、何かを指差していた。
「私はいいけどー…難しくない?」肩を落としながら言うハリーナを見て、メアリーはニコッと微笑みながら言った。
「私にお任せください。」
メアリーは自信有り気に慣れた手際でハリーナの髪の毛を結び終えると、二人一緒に一階に下りるともう朝食の準備が出来ていた。

「あら、おはよう。メアリー、ハリーナ。」と、最初に挨拶をしてきたのはマーガレット氏の奥さんであってハリーナが心の底から好きだと言える『マレーナおばさん』だった。
「おはようございます。」
「お母さん、おはよう!ねぇ見てみて!可愛いでしょ?」
メアリーがハリーナの髪の毛をゆっくりと撫でながら嬉しそうにマレーナおばさんに見せていると奥から金切り声が聞こえて来た。

「コラッ!メアリー!!何度言わせれば分かる!?
そいつにそこまで優しくしなくてもいいんだぞ!!」と、マーガレット氏がハリーナを睨みつけるように言った。
それを聞いたメアリーはハリーナに抱きつきながら言い返した。
「そんな事を言わないでよ、お父さん!
ハリーナだってもうウチ(家)の家族なんだよ!?」
「何だって!?」それを聞いていたマーガレット伯母さんが椅子から立ち上がりながら叫ぶように怒鳴った。
「いつからそいつがウチの家族だって!?ふざけるんじゃないよ!!
大体何だい、その髪型は!!女ならもっと短く切りなさいよ!!」
ハリーナは小さな手で小さい拳を作りながら言い返そうとしたけど、言わなかった。

それを見ていたマレーナおばさんは出来上がったスクランブルエッグを机の上に乗せ、ハリーナとメアリーを椅子に座らせながら二人の肩を叩いた。
「お伯母さんも、貴方もそんな事は言っちゃ駄目よ。
ハリーナは立派なウチの家族の一員だもの。それに女の子よ?私でさえも憧れる髪の毛を切るなんて最もだわ。」
いつも決まってマレーナおばさんは私の味方で入てくれて、いつものようにおでこをくっつけ、鼻を擦り合わせながら居た。
ハリーナは決まっていつも、この人たちは好き、と心の底から思えていた。
「フンッ。馬鹿馬鹿しい。
こんな糞ヤローのどこが良いんだか…。なぁ母さん?」マーガレット氏はゆっくりと椅子から立ち上がる伯母さんの手を取りながら、ハリーナを決まって睨みつけていた。
伯母さんもハリーナを睨み付けると、痛々しそうに腰を叩きながら向かい側の席に座り、朝食は始まるのだった。

「あ…フクロウだ。」
天気予報では降らないはずの雨が、プリベット通りには大雨と言っても過言では無いぐらいに沢山降っていた。
流石の大雨で今日は学校が休みという事でメアリーがハリーナの部屋に遊びに来ていた。
「フクロウ?空飛ぶあの生き物の事?」ハリーナはメアリーの方を見ながら言ったが、メアリーからしばらくは返事は無かった。
ようやく発した言葉は、「フクロウ…増えてる。それに猫も入るよ。」であった。
流石のハリーナも訳が分からなくなり、部屋の中から覗くと確かに何百匹と言っても良い程の猫とフクロウがいた。
「怪奇現象…。」ハリーナがそう呟くと、メアリーが「え?」と言いながら不審そうにハリーナの表情を読み取ろうとしていた。
「かいき…何?」
「怪奇現象!フクロウはこんな真昼に外に入るはずがないよ!
それに雨だよ?猫でさえ余り雨は好まないのに…しかもこんな大量に猫やフクロウがいるなんて…。」

ハリーナは気が滅入ったかのように、一階に向かって走り出し、三人がTVを見ながらくつろいでいた。
「あら?メアリー、ハリーナ?どうしたの?」近くに座っていたマレーナおばさんが優しい声音で尋ねて来た。
その事さえ聞いていなかったハリーナは痩せ細った肩を少しだけ揺らし、息を整えながら呟いた。
「…やっぱり…。」
TVの画面にはイギリスの各地で起こっている怪奇現象の事でニュースがいっぱいであった。

『続いてのニュースです。
何故か最近、動物園で動物が逃げ出すという事が多くなりました。
今日で10件もの動物園からライオンやフクロウ、狼、猫が逃亡していました。
今では…イギリス・プリベット通りに多く這い回っているとの事です。
イギリス・プリベット通り16〜19番地に住んでいる方は十分に気を付けて下さい。
窓やドアの鍵はちゃんと閉めて、この大雨の中を出歩くという事は絶対に止めて下さい。』

暫らくの沈黙を破ったのは伯母さんであった。
「何だって?え?10件の動物園から動物が逃げ出した?え?
そして家の近くに居るだってぇ?そんな馬鹿な話があって溜まらん!!」
伯母さんはそう言うと、近くにあったティッシュの箱をハリーナに投げ付けた。
「早く出ていかんか!!この不運を呼び起こす魔女めが!!」
それを聞いていたメアリーはハリーナを庇うように抱きつき、怒鳴るようにして言った。

「伯母ちゃん!!そんな事を言わないでよ!!」ハリーナはメアリーの瞳を見て、ハッと気付いた。
メアリーは目にいっぱいの涙を溜め、ハリーナを庇っていたのだった。


「やっぱり可笑しい…。」次の日の早朝。ハリーナはマーガレット氏が叩き起こしに来る前に起き上がり、汚い窓から外を見上げた。
外の景色は異常と言った方が合っている程、動物がもっと増えていた。
ハリーナは額に付いている黒色の星型の痣を抑えながら辺りを見回していた。
「嫌な予感がする…。何だろう、この感覚。」昨日は居なかった狼を見て、ハリーナは気分が悪くなり、カーテンを閉めながら昨日の見た夢の事を思い出していた。

昨日ハリーナが見た夢というのは自分の隣によく似たもう一人の赤ちゃんが居て、力強い緑色の閃光を食らう夢であった。
まるで成仏されない幽霊が、その人の周りをうろつくかのように、その悪夢は幾日無くハリーナを苦しめるのであった。
ある日は、気付けば黒い綺麗な髪の毛が「恐怖」という紅色で染まっていたり、そしてある日は気付けば、家の何かを破壊している事が多かった。
その度にハリーナはマーガレット氏に痛い罰を食らうはめになっていた。
だが今日は違っていた。
今日は何も起きていない。むしろ起きたと言えるのであれば、動物が外に増えただけ。ハリーナはそう思っていた。

そしてハリーナが起き出してから数時間後、突如窓の外から雷が鳴り出した。
「キャァァァアアアア!!!!!!!」隣の部屋で寝ていたはずのメアリーが飛び起き上がりながらハリーナの部屋へとやって来て、メソメソ泣き出した。
ハリーナは不安そうに窓の外を眺めながら、メアリーの背中を擦っていた。
「ハリーナ…ハリーナ……怖いよ……」
「メアリー、大丈夫だよ。私が一緒に居るから。安心して寝てて。」
雷が大の苦手のメアリーにとって、誰かが居ないと眠れないかなりの恐怖症であった。
それからようやく数分後、メアリーは静かに寝付き、規則正しい寝息を立てていた。

そんなハリーナは何度も窓の外を眺めながら額の痣を押さえ、溜息を漏らしていた。
魘されているメアリーの元に行こうと、クルッと回った時だった。

「「ゴロゴロゴロゴロゴロッ!!!!!!」」
「ッ!?」ハリーナは息を飲み込みながら慌てて後ろを振り向いた。
本当は開けてはいけないと、何度も伯母さんから言われていたが急いで開けると近くの森が焼かれた事に気が付いた。

「一体何…?何があったの?貴方?」
ドアを開けて下を覗くとマレーナおばさんが焦りながら、あちこち歩き回っていた。
「やっぱりこれは…可笑しいよ。イギリスでこんな怪奇現象ばかり起こるなんて…。」メアリーは誰にも聞かれないようにと、思わんばかりの小さな声で言ってから自分の部屋へと戻った。
今日は快晴になるはずの土曜日。
ハリーナは心の中で(快晴って…暴雨の間違いじゃないの?)と思わんばかりであった。
だがまさか…これも全て自分がやっている事だなんて、はっきり分かるのはまだ先の話であった。

そう…ハリーナに魔力があると分かる、ずっと先の話であるのだった。

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