小説『ハリーポッターの双子の妹は、“幻の瞬殺”と呼ばれた魔女 part1』
作者:梨那♪(小説大好き♪)

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「ダイアゴン横丁」



「何ですって!?」ようやく暴雨が収まってからの二週間。
時期は秋であり、長袖を着る人が増えて来た年頃でもあり、またマーガレット家では平穏な日常が壊れる程の出来事が起こったのであった。

「ホグワーツだと!?マレーナ!!お前は正気か!!」一階からは伯母さんの声が金切り声となってキーキーハリーナの部屋にまで届いていた。
ハリーナは今、伯母さんが言っていた「ホグワーツ」という言葉を聞いてゆっくりと外に出るとメアリーが下を覗いていた。

「あ!ハリーナ、おはよう!」ニコッとメアリーが微笑みかけながら言うとハリーナも小さな声で「おはよう。」と返し、言った。
「何が起きてるの?」
「私もよく分からない。何だかホグワー何だかが…。」メアリーも起きたばかりらしく、髪の毛がボサボサであった。

一階からは冷静そうなマレーナおばさんの声が聞こえた。
「えぇ。私はいつも正気ですわ。
何故ですか?たまには私の言葉も聞き受け入れてくれては宜しいんじゃないんですか?お伯母さん。」
「何を言っているんだ!!ホグワーツだぞ!?どれだけ危険か、お前も分かっとるだろ!!」
ハリーナはずっと、マレーナ伯母さんを引き止めているのかと思っていたがそれは後になって初めて知った事であった。

「何故です?ハリーナの母、リリーはホグワーツ出身なのですよ?
それにハリーナにだって、自分が生きたい道に行かせるべきです。私はそう思っていますよ。」
その言葉を聞いた途端、メアリーは急に泣き出しながら一階に下りていった。
まだ状況を理解出来ていないハリーナはメアリーの後を追いながら一階に下りた。
そしてようやく状況を飲み込めたのであった。

「ハリーナ!!メアリー!!…」マレーナおばさんは私たちの顔を見ながら驚きを隠せない顔でいた。
それからゆっくりと深呼吸をしながらハリーナとメアリーを椅子に座らせた。
「二人とも…今から言う話は真剣な話だからね。」そう言った時のマレーナおばさんの目がいつもとは違う真剣な目だとハリーナもメアリーもそれに気付き、ただ頷く事しか出来なかった。

それからマレーナおばさんは何か白い封の中から、白い紙を取り出し、ハリーナに読ませるようにした。



『親愛なるポッター殿へ
 このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。
教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。
 新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

                                          敬具

    副校長ミネルバ・マクゴナガル』



それを呼んだハリーナは息を飲み込みながらゆっくりと机の上に白い手紙を置き、メアリーは只々泣く事しか出来なかった。
「お母さん!…ハリーナを…行かせるの!?」ようやくの事で口を開いたのは、メアリーだった。
マレーナおばさんは何も言わず、黙って何かを見ているだけであった。
それを聞いていた伯母さんは「フンッ」と鼻で笑いながら、部屋から出て行った。
「…ハリーナ。貴女の母親のリリーはね、魔女だったの。」それを聞いた途端、メアリーとハリーナは同時に頭を上げながらいた。
「私はね、リリーと凄く仲が良かったの。
彼女とは小学校三年生の時に出会い、中学に上がる時にそこに行ったわ。
リリーの家族は、お姉さん以外は皆、リリーの事が好きだったの。私もそうだったわ。
リリーはいつも言ってたわ。“自分に子供が出来たら、素晴らしい生活を送らせたい”って。
…それからリリーは休みがある度、こっちに戻ってホグワーツでの話をよく聞かせてくれたの。
私もその話を毎度毎度、楽しんで聞いてたわ。だけどある日…リリーは辛そうな顔で私に尋ねたの。」

マレーナおばさんは一度、深呼吸をしてから話し続けた。

「彼女は、リリーはお腹に双子の赤ちゃんが出来たって嬉しそうな顔をしていたけど内心は辛そうだった。
そしてそのお腹の中に入たのが貴女なの、ハリーナ。
リリーは断固として絶対に産むって言ってたわ。周りの大人は魔法使いとの結婚を反対するばかりだったの。
二人は何か、危険な事に関わっていて私も余り、リリーとは連絡が取れていなかった。
でもある日、リリーから手紙が来たの。…内容はもう少しで死ぬかもしれないって。
それもハロウィンに近い日に送られた手紙だったわ。………そうね…丁度、メアリーが一歳になった日、つまり誕生日の日ね…。
重大な手紙が届いた時、私はどうすれば良いのか分からなかったわ。
今すぐにでもリリーの元へ行った方が良いんだって。思ってたわ。
……でもその数週間後、リリーは誰かに殺され、私の元に老人が尋ねて来たの。
その時、手に抱えていたのは小さな幼い赤ちゃんがいたの。
それから…リリーからの添えつけの手紙もあったわ。そこにはこう書かれてたの。
“無責任な親だと思ってもいい。だけど…貴女にしか頼めない。娘を預かって”と。
それから…“嫌がるかもしれないけど、この子は…正真正銘の魔女なの。”って書かれてたのを今でもハッキリ覚えてるわ。
…だから私はそれでもハリーナを自分の娘のように可愛がって、やりたい事はやらせるつもりよ。」

マレーナおばさんの瞳には涙が溜まっていて、目が赤く腫れ上がっていた。
メアリーでさえ、机に伏してずっと泣いていた。

マレーナおばさんがゆっくりと口を開いた。
「ハリーナ…ホグワーツに行って、立派な魔女になりなさい。」
「そんな…!!」ハリーナは大粒の涙が頬から流れるのを感じながら言った。
「駄目よ。貴女は…リリーのように立派な魔女になるの。」
「お母さんッ…!ハリーナを…行かせないでよ!!お母さん!!」メアリーはずっと泣きながらマレーナおばさんにせがみ、マレーナおばさんは首を横に振るだけであった。
ハリーナでさえも、何を言っていいのか分からずに只々泣く事しか出来なかったのであった。


その日の夜。ハリーナは一歩も部屋から出ず、ベッドに突っ伏していた。
マレーナおばさんが言っていた本当のお母さんの話、自分が魔女だと言う事がどうしても自覚出来ていないハリーナは何度も脳を回転させようとしていた。
「私…どうすれば良いのかな、お母さん…。」
こんな時、お母さんは何て言葉をかけてくれるのかな?とばかりにハリーナは考えていた。
だけどそんな思いはすぐに打ち砕かれ、数時間後。大荷物をまとめてマーガレット氏がハリーナの部屋へとやって来た。

「ふぅー…」マーガレット氏は一息付きながら大きなトランクを持っていた。
ハリーナはそれを不審に思いながら恐る恐る聞いた。
「おじさん…それ、何ですか?」
「何だと?お前の荷物まとめに決まってるだろ。九月上旬までにはこの部屋を片付けようと思ってな。」
ハリーナは近くにあったカレンダーの日付には『七月二七日』に○が付いていた。
「え?」
「お前さん、出て行くそうだな?ハッハッハッ」そう言った時のマーガレット氏の顔には満面の笑みが浮かんでいて、ハリーナは軽く睨むと奥からマレーナおばさんの怒った声が聞こえて来た。
マレーナおばさんは滅多に怒る事が無く、ハリーナはこれまたと不審に思った。


それから時間もあっと言う間に過ぎて行き、八月の中旬に迫っていた。
メアリーはようやく部屋から出て来て、一番最初にハリーナに抱きついていた。
この時、マレーナおばさんは「本物の姉妹みたいね。」と微笑みながら言っていたが、それをマーガレット氏が馬鹿にしたように笑いかけていた。
朝食を食べている時でさえ、メアリーはずっとハリーナの傍に居た。
ハリーナはずっと、短い時間だから思い出作りでもしたいのかなって思い込んでいたけどそれは違った。


「それじゃー…ロンドンに行きましょう。」
ようやく空っぽになった食器をメアリーとハリーナが洗っていた時、マレーナおばさんが楽しそうに言った。
「ロンドン?」メアリーが食器を拭きながら言った。
「お母さん、ロンドンで何をするの?観光?旅行?」
「違うわよ。まぁ…観光より旅行の方が合ってるわね。
ハリーナの学校で必要な物を買いに行こうかと思ってるの。」それを聞いたメアリーの顔が一瞬曇ったが、ハリーナは疑問に思って言った。
「ロンドンで…買えるんですか?魔法薬学とか…フクロウは買えるかもしれませんが…」
「大丈夫よ、ハリーナ。心配しないで。」マレーナおばさんは嬉しそうに言い、椅子に座り、もう一枚の手紙を開いた。
「これをね、全部ロンドンで買うのよ!」


「お母さん…どこにダイアゴン横丁なんて、あるの?」
家を出てから約二時間半。ハリーナたちは車の中に入て、ロンドンを歩き回っていた。
メアリーは不機嫌そうに窓の外を眺めていたが、ハリーナはさっきからとんがり帽子やマントを着た人達を見て不審に思うばかりであった。
「ちょっと待っててねー。」
「それで7回目!!」メアリーは吹っ切れながら、身を乗り出すのうにして言ったがマレーナおばさんは駐車場を捜すのに精一杯であった。

ようやく駐車場も見つかり、一同はどこかの路地裏へと向かっていた。
「ねぇお母さん?」何も無い色取り取りの障壁を見て、メアリーが片方の眉をくぃっと上げながら言った。
「お母さん、お酒でも飲んで酔ってる?」
「そんな事無いわよ。」
「じゃあ何でダイアゴン横丁の扉はこんな何も無い障壁だって言うの?」メアリーは腕を組みながらマレーナおばさんに言っていたが、マレーナおばさんは「懐かしい」という顔だった。
「今からダイアゴン横丁に行くのよ。さぁ二人とも、下がってて。」
「何をするんですか?」マレーナおばさんはポケットの中から何か白いチョークを取り出し、無言で鼻歌を歌いながら壁のタイルを叩いた。

するとー…。

三人の目の前でタイルが自由自在に姿、形を変えながら、その先に知らない見たことも無い景色があった。
「すっごーい…」ハリーナが息を飲み込みながら言うと、メアリーは驚いて声も出なかった。
「ふふん♪私を誰だと思ってるの?魔女の友達よ?
よくリリーに連れて貰ってたの。マグルだと思われてるけど、リリーは私の事を魔女だって呼ぶの。
魔力とかはハリーナに比べて、何にも無いって状態なんだけどもね。さぁ行きましょう。」
マレーナおばさんが二人の手を引いて、最初にやって来たのは色んな本が並べられている図書館のような所だった。
「基本呪文集…一学年用…。」マレーナおばさんは本の谷間を指で滑らせながら訳の分からない事ばかりを連発していた時、メアリーがハリーナの手を握りながら言った。
「ハリーナ…私も一緒に行きたいよ…。ホグワーツに…。」
「でもメアリー…貴女はエドウィーグナリー女子高等寮に行くんじゃないの?
医者になりたいって言ってたでしょ?私の為にその夢を諦めちゃ駄目だよ。」
「医者にならなくたってもいいの!ハリーナと一緒に入れるなら…私…。」
「メアリー…」
ハリーナは複雑な気持ちでメアリーを抱きしめた。
半分嬉しいが、半分どうしても喜べない自分がいる事に気が付いているのであった。



「お母さん…」
ようやく教科書を買い終えると、次は制服を見に出かけていたが、メアリーが不思議そうな顔でマレーナおばさんに訊ねたのであった。
「お母さん、そういえば“マグル”って何?」
ハリーナは自分の制服のサイズを決めに行っている為、今は居なかった。
「マグルって言うのは魔力を持たない、つまりー…魔法を使わない人達の事かしらね。どうして?」
「お母さん…私ってマグルなの?」メアリーは俯きながら、消えそうな声で尋ねた。
「そうねー…私が少しだけ魔法を使えるって事は、貴女も魔女かもね?」マレーナおばさんはとても嬉しそうにしていたが、メアリーは笑う気には到底なれなかった。
「お母さん…一生の一度のお願いなの。
私も…私をホグワーツに行かせて!ハリーナと一緒に居たいの!!」
それを聞いたマレーナおばさんは目を見開き、メアリーが口にするとは思っていない言葉を言ったので吃驚していた。
それとは裏腹に、その言葉を待っていたかのようにマレーナおばさんはゆっくりと口を開いた。
「…もし、貴女がホグワーツに行って…お母さんの知らない所で、即刻退学になったらどうするの?
“この子は魔力を持っていないので、学校には置いておけません。”なんて言われたらどうするの?」
「…分かってる。私に魔力が無い事ぐらい。でも…やっぱり行きたい。
ハリーナと一緒に居て、色んな物を見てみたいの。」その時のメアリーの瞳は、今までに無い強い想いが秘められている事にマレーナおばさんは気付いていたのだった。

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