「そーや……」
めいが俺を無表情に見つめていた。
「血、でてるよー……?」
言われて気付いた。頬が鋭く痛む。手の甲で拭うと、結構な量が出ていた。
「いたいー……?」
「や、平気……って!めい、歩いたら……」
めいがガラスを踏んで俺の方へ寄ってきた。平然とした顔で。そして、俺の前にしゃがみこむ。
「……痛く、ねぇの……?」
「ああ、痛いのかなぁ……。でも……、そーやがつらそうだから……。そばにいてあげたかったの……」
そう言って、ふわりと微笑む。俺は不意に泣きそうになった。あの時だって、涙なんて出なかった、むしろ、惨め過ぎる自分に笑ったくらい、なのに。
俺はめいを抱きしめた。
小柄な、美しい、狂った少女。この少女が、俺には必要だと、切に思った。
めいが俺の首に腕を回した。
しばらくそうして、俺たちは動かないままでいた。めいの鼓動と、体温を感じる。
「……片付けなきゃ、な」
俺が小さく笑うと、めいは少し安心したように離れた。けれどもう一度俺に接近する。それから、ちろり、と俺の頬を舐めた。あたたかな舌は、少しくすぐったかった。
「まだ血がでてたから」
俺の目を見て、めいはまた笑った。