小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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9話 …初めて知った醜さ









ここは高度1万m上空。

ほぼ・・・魔道士ギルド |妖精の尻尾(フェアリーテイル)の真上に位置する。

『騒がしい場所だ… 本当に…な。』

街を眺めながら…

そう呟く。

だが・・・本当に心地よい。

まるで・・・光だ。

眩しすぎて・・・直視できないほどに・・・

比喩ではない・・・


本当に暖かな場所・・・

『アクノロギア・・・人は・・・素晴らしい・・・じゃないか。 お前が無闇に人の命を奪うのは何故だ・・・?邪念があるからとは言え・・・ 問答無用でその場にいる全ての命を消すのは何故なんだ・・・?』


そう・・・同じ種族の竜・・・

黒き竜のアクノロギアのことを・・・考えていた。

奴は・・・

人をなんとも思ってない。

唯の害虫・・・

駆除すべき存在。

そこまで言い切っている。

奴に何があったのかは知らないし、知りたくも無い。

俺は・・・俺のが見て、俺が聞いて・・・・・

俺が信じた人間を・・・もっと見てみよう。

それが一番だ・・・

ゼルディウスはそう考えていた。

『・・・・・信じる・・・か・・・ 他人を信じるなんか初めてのことだな。』

うっすらと笑う・・・

『そろそろ・・・ 人間界(げかい)に降りるか・・・ 近くで彼らを見てみよう。』

そう呟くと・・・

人の多い、この街のど真ん中に下りるのは流石に問題があると判断し・・・

街から・・・少し離れた森へと向かった。









その森は・・・

『霧が濃いな・・・濃霧・・・ ここ特有のものか・・・』

竜人化をし・・・

降り立った場所は、街からかなり離れた場所。

警戒しすぎたか?

っと思ってしまっていた。

その時!


「きゃああ!!!」


叫び声が・・・聞えた!

『??』

こんな森の中に・・・人が来るものなのか?

ましてや視界の悪い、濃霧の中を?

『とりあえず言ってみるか・・・』

そう言い・・・

叫び声が聞えた方へと向かう。







サラ・ランド side


「ちょっとおおお!!放してよぉ!!」

その場所には3つの影・・・

そのうちの2つは小さな・・・そして1つは巨大な影だった。

「ウホッ!ウホホッ!!オマエ・・・かわいいな・・ オレの嫁になれ!」

巨大な影の正体は・・・森バルカンだ。


「だ・・・誰が 猿のなんか!!」

ジタバタするが・・・力が強く・・・はなれない!

「こらああああ!!!サラを放せえ!!」

そこへ突っ込んでいくのは、ランドだ。

「なんだぁ 小僧!こいつはもうオレの嫁だ!」

森バルカンはランドを見ると・・・


ドガン!!


蹴っ飛ばした。

「ぎゃあ!!!」

まだ子供の為・・・ 森バルカンの一撃はかなりの衝撃なのだろう。

かなり 吹き飛ばされてしまっていた。

「ランド!!」

サラは目を覆った・・・


「くっそ・・・・・ 」

ランドは・・・立ち上がる!


「ほーー 小僧の割りに頑張るじゃねーか!気に入った!土下座して ごめんなさい・・・ 返してください!バルカン様!!って言ったら、考えてやるぞ!ウホッ!」

嫌らしい目つきでそう言う。


「ぐ・・・ このぉ!! 空気砲(エアー・キャノン)!!」



ランドは手を翳し・・・その手に・・・空気を圧縮していった。


「ウホッ?オレと やろーってのか?」

森バルカンの方は余裕綽々・・・・


「・・・くっ (サラにも当たっちゃうよ・・・)」

ランドは1つの事に気がつく。

サラは、森バルカンの手の中にいる。

最大限まで溜める事が出来たなら・・・

森バルカンくらいは簡単に吹き飛ばすことが出来るだろう。

唯・・その手にいるサラも巻き込まれてしまうのだ・・・


「ランド!!わたしのことは良いから!!」


サラはそう言ってるけど・・・


「くっそぉぉ!!」


ランドは、自分の一番得意な魔法を使うのをやめ、突っ込んでいった!

「ウホッ!!」

バルカンは・・・そのまま足を上げ・・・


ドシィィィン!!


「ふぎゃ!!!」


ランドを踏み潰した!


「きゃああ!!ランド!!!」

ランドは目を回していた・・・。


「ウッホウッホ!!さあ・・・邪魔者はいなくなった!!オレのウチで たのしくくらそーぜ〜!!」

そう言って、サラにキスをしようとした!

「やだっ!やだったらぁああ!!」

サラは何とかキスは回避するが・・・

逃げられないのは間違いない・・・



「ま・・・まて!」

ランドは・・・必死に立ち上がる!


「なんだ〜 オマエ・・・しつこいぞぉ〜」

バルカンは ランドを見下ろす・・・



「ぐっ・・・ こんな奴に・・・ サラを・・・」

ランドは・・・サラを守りたい・・・そう考えていたが。

自分の力量のなさを呪った・・・


そして・・・決心する。


「ウホッ?」

ランドは・・・そのまま・・・両手を地面に付く・・・


「ご・・・ごめんなさい・・・ 返してください・・・ ばる・・・バルカン・・・さ・・・ま・・・」


悔しそうに・・・そう言う。

そういわなければ・・・サラを助けられないのだ・・・


「ランド・・・・・・・」

サラは・・・目に涙を・・・溜めていた。


「ウホッホ!!よく出来ました〜といいたいトコだが・・・」

森バルカンは巨大な大木を抜き!構える!!


「さっきいっときゃあ 返したんだけど〜〜 オマエ・・・拒否したろ?」

にらめつけるように言う。


「ちょっと!ランド!謝ってるじゃない!!貴方それでも男なの!!」


サラは必死に抵抗しながら叫ぶが・・・・


「ウッホホォ♪ オレ・・・まちがっちゃいねーもん!ちゃんと|考えて(・・・)やった! 返さないし!  オマエを 潰す事にした!」


「この・・・!!」

ランドは必死に立ち上がろうとしたが・・・

先ほどの一撃のダメージが足に来ているようだ・・・


「ランド!!!」

ふらつくランドを見て・・・悲鳴を上げる。


「ぐっへへ〜〜!!オマエ!潰れちまえぇぇぇ!!!」


そして!巨大な大木は振り下ろされた!!!



ドガアアアアアア!!!


サラは・・・目を瞑る・・・

ランドも・・・目を瞑った・・・

凄まじい音が響き渡るが・・・

衝撃は来ない・・・

「え・・・?」

ランドは・・・目を開くと・・・

『ここまで・・・醜いものだったのか・・・ 弱者をいたぶる強者の姿ってのは・・・』

1人の・・・男が・・・攻撃を止めていたのだ。

「え・・・」

サラも・・・それに気付いた。

「ウホ!!!誰だ!!オマエ!!」

バルカンも気付いて叫ぶ!

『・・・・・・』

男は何もいわない。

『おい・・・・ 離れてろ』

そう、倒れたランドに向かってそう言う。

「え・・・あ・・・・」

ランドは腰が抜けてか・・・動けないようだ。

『無理も無いか・・・』

そんなランドを見てそう呟く。


「こっの!!くっそ!何で うごかねーんだ!!これ!!」

バルカンは振り下ろした大木を使って再び攻撃しようとしたが・・・

その木がまったく動かない!


『ったく・・・ 猿が・・・・』


ドシィィン!!!


ゼルディウスは大木を横にそらし・・・地面に打ちつけた!


「なっ!!」

いきなり、大木がサイドに触れた為・・・体制を崩してしまう。

その一瞬の間に・・・

バルカンののど元を掴む!

『3つ数えるぞ・・・?その子を放せ。1つ・・・』

バルカンの目を至近距離で睨む。

「ッッッ!!!!」

バルカンは・・・ 驚愕の表情を作る!

この森で住んでる生物で・・・ 自分よりも強大な生物はいなかったはず・・・なのに・・・

目の前の男を見ると・・・

自分が・・・食われる方の立場の生物だと思えるほどの・・・差を感じていた。

体格からしたら・・・自分の半分にも満たないこんな男が・・・

『2つ・・・』

「ッッッッッ!!!!」

コクコクコクコク!!!

スゴイ速さで、首を上下に振る。

そして・・・

サラを 地面へと下ろした。

『・・・よし、さぁ、さっさと消えろ。』

そして、手を放すと・・・


ぴゅ〜〜〜〜!!っと いう感じであっという間に・・・・ 森の奥へと消えていった・・・・・・


叫び声はひえぇぇぇぇぇ〜〜〜かな? 苦笑






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