小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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18話 ジャックの過去と妖魔の真実












それは、人助けの内容だった。

依頼人の… 子供が、攫われたという内容だ・・・

地方でも有名な盗賊団の仕業だった。

誘拐をすることもあり、派遣されたギルドの魔道士を返り討ちにすることもある。



両親は…涙ながらに助けてくれと…

実際にあった後に。

何度も何度も…涙ながらに…

泣き続ける両親の手を取り…

必ず助けると言った。

必ず・・・と・・・・











そして・・・アジトに乗り込み…

首領をとッ捕まえ・・・

仲間たちも返り討ちにした。

そして、全員捕縛…役所へ届ける準備をして…

いや・・・その前に、両親に連絡した。

親子が再開した時は・・・

こちらも涙が出そうな光景だった。

それは、とても・・・微笑ましかった…



悲劇が起きたのはその後・・・だ。


お礼をしたいと言われ、街中を…その家族と共に歩いていると・・・

あたり一面が・・・漆黒の闇に包まれた。

そして… 街の住民が叫んでいた…

≪妖魔がでた!≫…と・・・

闇を纏う怪物は… 一斉に暗黒の波動を見境無しに…無差別に…放ち…

全ての命を奪っていった…

オレも・・・あまりに突然の出来事だった為に完全に油断をしていた。

道中は、家族が再開できてよかった…

ずっとそう考えていたのだ・・・・・・





波動がやんだ時…目の前に…闇を身に纏う人間?が立っていた・・・

その…目は赤い…

まるで血のように・・・・

そして…周りを見渡すと…

そいつは…去っていった…


残ったのは…魔力を有していた者・・・

即ち耐性があるものだけ…

そう…それだけだった・・・

依頼人・・・家族は皆亡くなっていた・・・・・・・・










「あの時から・・・ オレは貴様を追っていた。」

ジャックは・・・そう告げる…

『ジャック・・・』


「・・・・・・・・」

妖魔は何も言わない・・・


「あの時・・・ 必ず助けると言った大切な約束を破ってしまった元凶である・・・貴様をな!!!」



ドガアアアアアアアアアア!!!!!!!!




圧縮した魔法を自身の融合させ 放った!



が・・・・・


「・・・・・・・・・・・」

何事も無かったかのように…

再び現れた。

傷らしい傷は・・・無い。


「貴様は・・・何なんだ・・・?」


ジャックは睨めつけながらそう言う。

その時・・・

僅かに妖魔が動いた。

「・・・・我は・・・闇・・・ 存在がある限り・・・ 命を奪う・・・」

静かに・・・そう言いはなった・・・

そして・・・

纏う闇から・・・人間が・・・出てきた。

その人間は力なく、地面に崩れ落ちる…


「!!」


ジャックは驚いた!

『・・・・依頼主のギルドのもの・・・か?』

ジャックにそう聞くと・・・

ジャックは怒りをあらわにしながら頷いた。

「我が存在に・・・意味など無い・・・ 唯・・・滅ぼす・・・のみ・・・」

ただ・・・そう繰り返すばかり・・・

『コイツの波動・・・コレは・・・ゼレフのそれに似ている。』

ゼルがそう言うと・・・ジャックが驚いていた。

「ゼレフ!? 黒魔道士ゼレフのことか??」

『ああ・・・ あの男の纏っていた・・・そして放った魔法にそっくりだ。だが・・・ こいつ・・・生きている感じが全くしない・・・』

ゼルは・・・じっとその男を見る。

どうやら声からして男のようだ。

男は・・・壊れたおもちゃのように・・・ずっと先ほどの言葉を繰り返していた。



「ゼ・・・レフ卿・・・・」


その何反応したのか、今度は名を繰り返しながら叫んでいた。

そして・・・



ゴオオオオオオオオオオオオオッ!!!!



命を奪う暗黒の波動を一気に放つ!

辺りの…全てが…壊れてゆく…

岩や火山地帯特有の植物も…チリと化していった…!


『ッ!』

突然の出来事だ。

波動があたりに迫るのは殆ど一瞬の出来事だった。

「ぐッ・・・がっ・・・」

ジャックは…波動を防いではいたが…

胸を押さえ、膝を落とす。

『チッ…』

ゼルがジャックの前に立つ。

「ゼ…ゼル!何してやがる・・・!」

ジャックは自分を庇ってくれているゼルに驚きながらそう言う。

『オレは兎も角、お前はマズい。魔力が切れた途端j殺られる。そのまま、じっとしていろ。』

ジャックは…蹲りながら、ゼルを見る。

「なっ!てめッ!ゼル!お前があぶねえだろっ!」

まともに受け止めているんだ。

この、この場にいるだけで、死んでもおかしくない不穏なオーラをすべて請け負っているのだ。

『オレなら大丈夫だ。問題ない。 それより、アイツ…だ。』



「ゼレ…フ… るぐあああああああああ!!!!!」



いまだ、ゼレフの名を叫びながら辺りに凶悪な波動を撒き散らしている。

「くッ… アイツ… あの時…ココまでの力は無かった…筈なのに…!」

ジャックは、苦しそうに妖魔の方を見る。

あの時…

一瞬の出来事だったが、防げないレベルではなかった。

だが…今は一撃でこのザマだ、

…ゼルがいてくれなければ…間違いなく…やられていただろう。

『…なるほどな…』

ゼルは何かを悟ったように呟く。

『ジャック、ここからでるぞ!』

そう言って、ジャックの方を向く。

そして、肩を貸すように立ち上がる。

「な!オレは…アイツを!!」

ジャックは…まだ、私怨を棄ててはいなかった。

アイツは…オレが刺し違えても…

そう想っていたのだ。

『馬鹿野郎が、そんな事をすれば、メイビスが悲しむだろ。家族を失う気持ちを悟っているお前が何故それをわからない。』

ジャックにそう言う。

メイビスを見てればよくわかる。

仲間を想う絆が・・・

人が人を愛する事も…

難解だ…そう想っていたこれまでの自分がいかに無知だったのかを。

…そして、それはとても暖かいものだということも…知った。

「ぜ・・・ゼル…」

ジャックは…ゼルの顔を見る…

そして…妖魔の方も…

あれは…間違いなく暴走している。

ゼルや自分を狙ったりしていない。

ゼレフ・・・・という言葉を聞いてから…だ…

「くそお・・・」

ジャックは…自分の力じゃどうにもならないことを…今痛感していた。

『ギルドというものは、助け合うんだろう?ならば、今はオレを頼ってくれ。今までも随分お前たちには頼っていたからな。』

ゼルは、真顔でそんなことを言う。

…純粋にそう考えているという事がよくわかる。

「わかった… わりいが頼んだ・・・ゼル…」

ジャックはそう言い…ゼルの肩を借りながら、何とか、この地獄を脱した。






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