小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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1話 闇との出会い









『俺は…人間をよく知りたい… 彼らをもっとよく…』

ゼルディウスはアクノロギアと別れた後・・・

思いが膨れて行くのは人間への興味だ。

彼は…見た。

人の光と…そして闇を…


〜1年前〜

『アクノロギア…また、潰してきたのか?』

めんどくさそうに降りてくる竜にそう言った。

『ああ、我を呼ぶ声がしたのでな…』

そう言って降りてくる。

『いつまで そんなことを続けるつもりだ?人間が滅びるまでか?』

『奴らは害虫… 何匹やろうが いくらでも湧いてでてくる。 我は呼ぶ声がするたびに赴くつもりだ…』

害虫… まあ的を得てはいる…か。

『…まあ、俺の知ったこっちゃねえか…』

そう呟くと空を飛んだ。

『何処へ行くのだ?』

そう聞くと。

『しらねえ… 唯気のむくままに… 世界を見て回る、それだけだ。』

そう言い、空のかなたへ。

『ふん…我に言わせれば貴様もだ、ゼルディウス。いつまで 気ままに生きてゆくつもりなのだ…?』

飛び去る竜を見ながらそう呟いた。




『ふむ… これほどの高度であれば…人ならば絶対に気付く事は無いか…』

遥か上空で人の世界を見下ろしていた。

そこは戦乱の続く街…

争いの怒号が、千里眼を通して伝わってくる。

『同じ者同士でなぜこうも争うのか… 確かに理解に苦しむな…』

人間が人間の命を奪い合う…

即ち相対の敵といつまでも戦い続ける…

なぜなのか…

『理解に苦しむな…』

そして、千里眼を使うのを止めようとしたその時。


ヴヴヴヴヴヴヴ… ヴォン!!


黒き波動が、あたり一面を覆っていた。

そして…争いの怒号が一気に鎮火する…

『あれは… 暗黒魔法?』

命を吸う魔法だ。

アレを使える人間がいたと言うのか…?

人間が扱えるレベルではないのは確かな魔法だ。

我ら竜種が扱う魔法 滅竜の魔法にも匹敵しかねないほどに強力な禁忌魔法…

『興味が湧いた…な、久しぶりに。』

そう呟くと…


自身を光で包む…

すると…

竜の姿は徐々に小さくなり…

そして…


『ふむ… 竜人化…久しぶりにするな、これをしてないと迂闊には人の世には入って行けんからな… 上手くいってるのか?』

竜の体は 人間体へと変わったのだった。

そして、徐々に高度を落としていく。

『さて… 行くか』

そして、人間の世界へと入っていった。




「ごめんよ… 名も知らない人たち…」

自身から放たれた暗黒の波動によって絶命された人間達を見ながら呟く…

「また…闇を…背負った。」

そう言って、倒れた人たちの見開かれた目を・・・閉じてやった。

「いつまで…続くんだろう…こんな事…」

そして…惨劇の前から背を向け歩き出す。

『お前か…あの暗黒の波動を生み出したのは…』

突然!

後ろから声が聞えた…

「ッ!!」

思わず、距離をとる。

この尋常ではない圧力(プレッシャー)…

ここまで近付かれるまで気付かなかったと言うのか?

「だ…誰?」

そして後ろを振り向いた。

そこには青年が…立っていた。

この尋常では無い気配をこんな青年が…??

『そう身構えるな… どうこうしようって訳じゃない。ただ、興味が湧いたから近付いてきただけだ。』

静かに…そう呟いた。

「君は… いったい…」

だが… この気配は感じた事があるものだ…

あの…アクノロギアのような…

絶対的な威圧感…

「まさか…アクノ…」

そう口走ろうとしたとき。

『俺と奴を一緒にするな… そんな 見境の無い奴といっしょにされては困る。』

割り込むように否定する。

その人間は驚きを隠せなかった。

あの絶対的な存在を奴呼ばわり、そして この言い方だと同等の存在だと言っているも同然…

「竜なの…か? アクノロギアと同種の…」

そう呟く…

自然に出た。

意識してしゃべったわけではない。

『ふむ・・・ まあ そうなるな。自分で言うのもなんだがその中でも変り種と言ったところだ。』

笑いながら答える。

威圧感は確かにあるものの・・・

よくよく見てみれば…悪意の感じるものではない。

「変り種… 竜が人の姿をすることが出来るのか…?」

あの強大な力。体が人の姿になるとは…

『まあ… 人とはまた違う、竜人化…というのだがな。 まあいい。お前はここで何をしているのだ?それにさっきの暗黒の波動はお前がやったものか?』

辺りを見てみれば一目瞭然。

この男以外に生きているものはいない。

だが、本人の口から聞いて見なければわからない。

「…ああ その通りだよ… 君は僕を壊してくれるのかい?」

男はそう言う。

危ない魔法を身につけてるとはいえ、悪戯に人の命を奪う事なんて俺はしない、

アイツと違う。

人間を害虫見たく思ってるあいつとはな、

とは言っても、俺は人間にたいして感情がそこまであるわけでもない。

どうでもいいっちゃどうでも良い存在だ。

だが…

この男の言い方…が気になった。

まるで壊してくれるのを望んでいるかのような。

『悪いが、俺にそんなつもりは全く無い。』

キッパリと否定。

唯興味が湧いたから降りてきた。

それだけだった。

「そう…」

男は凄く落ち込んだような目をしていた。

面白い人間だ。

自らを壊せと頼んだりそれが叶わなければ落ち込んでみたり…

『ふふ… 貴様、名はなんと言う?』

好奇心からか聞いてみた。

人間の名を聞くというのは初めてのことだ。

「僕の名は…ゼレフ…だよ。」

男は静かにそう答える。

ゼレフか…

『覚えておこう。俺の名はゼルディウスだ。アクノロギアとは違うぞ。それも覚えておけ。』

そう言って、空に飛ぶ…

「ゼルディウス…」

ゼレフはそう呟いた。

『ではな ゼレフ』

空高く飛ぶ…

ゼレフ…

人の世を混沌に陥れた男の名も確かゼレフといった名だったか…

黒魔道士ゼレフ。

暗黒の魔法をも使い、悪魔を作ることが出来る…

そんな男が…

他を滅してあのような顔をするのか?

数知れないほどの人間を恐らくは滅ぼしているだろう。

あの力を見ればよくわかる。

なぜ、そのような男があのように変わったのか…

そこにも興味をえた。

人間…とは。

いったい…


-2-
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