小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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32話 無言の涙
















































そして……時刻は夕刻……。




“ゴーン…ゴゴーン…ゴーン……ゴゴーン………”



マグノリアの街に鐘の音が響き渡る……。


「おお!ギルダーツが帰ってきた!!」


その音を聞いて真っ先にナツが反応した!

そして…街中でも…。



「ギルダーツが帰ってきたぞ。ってか今回は早いな…」

「なんでもいいから早く移動しようぜ?ここにいちゃあぶねえ!」

「そうだな!」


そう言う声がちらほら……。


そして、拡声器では…。


“マグノリアをギルダーツシフトに切り替えます!町民のみなさん!!すみやかに移動をお願いします。繰り返します………”


放送が街へ響き渡る…。






その後……。

街は割れ……ギルド、フェアリーテイルへの道ができていた。










【ギルダーツシフト】



ゆっくりとした足取りで近づいてくる影がくる……。

それを確認したナツは……

「おらーーー!!ギルダーツ!!!」

猛ダッシュ!!








それを冷やかに見ているのが……。

「馬鹿なのか?アイツは……」

グレイだ……。

グレイはいつも通りツッコんでいた……。

勿論半裸で。それもいつも通り…。

「グレイ!服!!もう!ギルダーツが帰ってきたんだから!」

早速注意されてるし……。














「いたなっ!!ギルダーツ!!朝の続きだ!!!ってあれ?」

ナツが…ギルダーツに飛び掛ろうとしたとき……。

ギルダーツが持っている…というか、誰かを抱きかかえている事に気がついていた。

「よぉ…ナツか?出迎えご苦労。」

手を上げてそういった。

「別に出迎えたんじゃねえって!勝負しにきたんだよ!って言うか…誰だ?」

ギルダーツが抱きかかえている子供にそう聞く。

「ん?ああ…こいつな。 後で説明するわ。とりあえず、マスターはいるか?」

ギルダーツがそう言うと…。

さすがのナツも寝ているのか意識を失っているのかわからない、子供を抱えているギルダーツに攻撃を仕掛ける事などできず…
「ん?じっちゃん?ギルドにいるぞ!」

そう言うだけだった。





そして、ギルドの中へ……。






「お帰り!!……って」

「いつもより早かったな?………って」

「ナツはどうしたんだ?………って」







次の瞬間にはいっせいに……。


「「「「誰だ??」」」」


ギルドの皆がそう聞いていた… 苦笑


「とりあえず、コイツについては後で説明するわ。マスターはいるか?」

集まってきたメンバーにそう言うと……。


「ここにおるぞい。」

奥からマカロフが出てきた。


「おっ!マスター。ちょいと話があるんだ。」

そう言って抱いている子供に目をやる。

「ふむ……その子が…例の?」

そう聞くと……。

ギルダーツは無言でうなずいた。

「ふむぅ……とりあえず奥の医務室じゃ。そこで安静にしてやろう。」

「ああ、そのほうがいい。」

そう言ってとりあえず2人と子供だけで、奥の部屋へ入っていった…。



その後、ギルドの中では子供についてうわさがたえることがなかった……。
















【医務室】



ベッドで…子供を寝かせる。

規則正しい寝息が聞こえてくるから…。

唯眠っているだけだとすぐに判断した。

だから、ポーリョシカを呼ぶまでもないと………。

「んで?どうしたんじゃ。この子は……。」

マカロフがギルダーツにそう聞く。

「んーそれがよお……オレにも実はわかんねーことがな……。」

そう言って…頭を掻いていた。









































【回想】




それは……

あの渾身の一撃が交わった時までにさかのぼる……。













あの2つの力の……衝撃音の後…

その衝撃からか、砂埃が舞い上がる。

そこには2つの影が見えた。

そして…片方の影が…崩れ落ちる…。




「ぐ……ぅ………く………」




地面に手をつく……。

それは小さい方の影……。

少年だった。


「やるな…お前。オレのあれを喰らってまだ萎えねえか?」


ギルダーツは地面に手をついて尚…

その背中から伝わる闘志を感じてそう言っていた。

…よほどこの場所が大切な場所だと見える。


「オレ…オレは……」


“ググググ……”


体に…力を入れていた。

「この場所を離れたくない…か?わかってるよ。」

ギルダーツはそう言った。

「……………え?」

少年は…意外な言葉に耳を疑った…。

これまで、数多くの大人たちを追い返している。

それも1度や2度じゃないのだ。

力で…ものをいえば、さらに大きな力で反される。

それは…どこかで…頭のどこかでは、きっと わかって…いたんだ。

そして、そのときが…来たって思った……。

捕まえられて……って……。

だけど…目の前の男は……。

「……オレとここまで戦り合う奴なんて…おれ自身も初めてだったんだぜ?それにお前の意思の強さも十分見せてもらった。」


そう言って笑っていた。


ギルダーツは…。

本来の彼の目的はとりあえずさっさと、この少年の保護する事だったのだが…

この子の意思の強さ。

そして想いも。

全て見て…体感した。

恐らくはその強い思いがそのまま力となっているのだろう。

魔法とはそう言うものだ。

術者の強い思いから…奇跡を生む。

その奇跡が魔法なのだ。




「強引につれてくような真似はしねぇよ… ……だけどよ?お前さん寂しくねえのか?」

ギルダーツは少年に向かってそう聞く。

「お…オレ…そんな…こと…。」

まだ、息は上がっている。

魔力の消耗も生半可ではないのだ。

仕方のない事だろう。

「ははは…そうか?でもよ…お前さん、最初に会った時、そんな目をしてたんだぜ?オレも結構長い事 いろんな仕事をしてきたからな…多少なら目利きがきくんだ。」

そう言って笑う。

「…お前さんがこの場所に拘るのはなぜだ?そんなにここに思い入れがあるのか…?」

ギルダーツはそう聞く。

「…………………」

少年は…何も言わない。

いや…息を整えているようだ。

「って…わりーわりー… 無茶させた見てぇだ。」

ギルダーツは現状をみて…そう誤った。

それなりには本気でやったんだ。

並みの術者ならば……起き上がるどころか意識すらないだろう。

いや……。

飛んでいくだろうな、文字通り。

そんな一撃を防いでいるんだ。

子供が…。

なら、仕方ない。

「ほら、大丈夫か?」

ギルダーツは背中をさすっていた。

「……アンタがやったのに…わからない大人だな。」

少年は…少し落ち着いたのかスムーズに話せるようにはなっていた。

「まぁ…そりゃあそうか…。いやぁよ?あんな場面だったら…やるだろ?普通。」

けろっ…としてるな…。

「知らないよ…そんなの。」

そう返していた。

「んで?さっきの質問は答えてくれるのか?まあ…無理にはきかねぇが。」

そう言うと…

「………んだ。」

小さな声で…

「ん?」

聞こえなかったため、ギルダーツは少しそばによる。

「わから…ないんだ。オレ…なんでここにいるのか。なんで…この場所が大切なのか…全部……。」

そう言って…俯いていた。

「え…?」

ギルダーツは思いもしない返答に言葉を失う。

「ただ……わかるのは この場所がとても大切な……大切な場所だって事……オレ…気がついたらこの場所にいたから……なのかもしれないけど……。」

そう言っていた。

数年…この場所でサバイバルをしていたらしい。

実戦については…体が覚えていたこともあり…そして、動物を捕ったりしてるうちに力もつき…そして魔力も…。

……それであの強さっていうのはおかしいと思うが…

「アンタ…オレに寂しくないか?っていったけど、そう言うのは無いっとまでは言わないけど。薄いんだと思う……オレはそんなに感情ないんだって………。だから…前に来た人たち…追い返してるし…中には怪我させちゃった人だっている。そんな事が平気で出来るんだから。」

そう言っていた。

淡々と話をしているようだが。

「いーや、俺そんな風には思わねぇな。」

あっさりと否定。

「え…?」

困惑する。

「だってよ?大切な場所なんだろ?ここ。理由はわからねえかも知れねえが、そう言う強い気持ちを持ってる奴が薄いわけねえだろ。それにお前…気づいてるか?」

笑いながら顔を見ると…

「お前、オレとやってるとき、すげえ自然な顔をしてたんだぜ?あの戦う前よりな。感情が薄い奴にんな顔は出来やしねえ。」



“ポン……”なで…なで……。




そう言って頭をなでる。

「ッ!!」

頭をなでられたなんて…初めての事だ。

だから…戸惑ってしまった。

「お前はまだまだガキだ。確かに力は目を見張るものがあるが、内面はまったく見たとおりに…な?そう言う奴には大人が教育する必要があるんだよ。」

そう言ってわっしわっしとなでる。

…すごく雑に…。 苦笑

「つーわけで、やっぱし、つれて帰りたいと思ってるんだが……。」

そう言うと…

少年の体が一瞬だが震えた。

「……とりあえずは今は止めとくわ。長い時間をかけて様子を見る。」

頭をパッと離し…。

「寂しくなったらいつでも相手してやるからな。お前はもう1人じゃねえ。」

そう言って…




“ポンポン……”




頭を…軽く2度叩たたいた…。

「でも…オレは……。」

「お前は悔しくなかったのか?オレに負けてよ?」

ギルダーツがそう言うと…。

「なっ!オレはまだ負けてない!」

咄嗟にそう言ってしまった。

考えていった言葉じゃない。

「ははっ、だろ?男ってのはそう言うもんだ。オレもお前には負けたくねえ。歳とか関係なくな?」

そう言ってさらに笑う…。

「ッ!!もう…ほんとによく笑う人だ……。」

うっすらと…笑みがこぼれていた。

「はははっ!笑いてえ時に笑わねえと損だぜ?」

ギルダーツはそう言っていた。

「お!そうだ… お前さんは名はあんのか?ここに拘る理由はわからねえっていってたけど。」

そう聞く。

「オレの名……ん……」

少年は…思い出すように考え出していた。

名乗る…普通の事だが、これまで無かったのだろう。

「ゼ……ゼ……。」

思い出しながら…口ずさむ。

「お?」

ギルダーツは出てきそうで出てこない感じを楽しんでいた… 苦笑

「ゼ…ク…ト……。だと思う……。」

そう言っていた。

「ゼクト…ってんだな?よぉしわかった。オレの名はギルダーツってんだ。よろしくな?ゼクト。」

そう言って手を差し出す。

「え……う…うん。」

ゼクトは戸惑いながら…手をとろうとしたとき!


“ビュオオオ……”



風が…吹いてきて…

ギルダーツがつけていたマントが…めくれた……。

「え……?」

そして…一瞬見えた…体のついていたマークを見て………

体が固まる…。

「ん?どうしたんだ?」

ギルダーツは不思議そうに聞く。

「そ…それ……。」

ゼクトはギルダーツの胸の部分についているマークを指差した。

「ん?ああ……これか?これはギルドの紋章でな?オレはギルドに所属している魔道士だからだ。……ってわかるか?」

ガキならわからねえかもしれねえな…っと考えていると…。

「そ…その…ぎるどのなまえ…は?」

驚いたように…そう聞いていた。



「ああ…知ってんのか?【フェアリーテイル】っていうんだが?」




“   ド   キ   ン  ッ   ”



胸が…高鳴ったのを感じた。

そして……。


「おっ?おおっ??ど…どーしたんだよっ!!」

ギルダーツがあわてていた。


なぜなら……。







“ポロポロポロポロポロ…………”







ゼクトは…大粒の涙を流していたからだ。

「どうしたんだよ?どっか、痛てーのか?オレ!やりすぎちゃったのか??」

あまりの事にあわててそう聞くが…。

何も言わない。

唯唯……涙だけが……。

眼から……零れ落ちていた…。







Side out



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