小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

34話 目覚めたら……
































医務室……。


少年…ゼクトはその場所で目が覚めた。


「う………ん……… あ…れ?…オレ…いったい…」


記憶が…はっきりしない。

頭の中に靄が出来ているように…。

中々…払えなかった。


「オレ……あの場所で…確か……」


順を追って…思い出す。


気がついたら…あの場所に……渓谷いいて…。

なぜだかわからない。

あの殺風景な場所が……。

とても…とても大切な場所に思えたのだ。

この場所に対して……何も…記憶に残ってないというのに…。

何か…大切な事だ……。

目を瞑れば……浮かび上がりかける。

目の前の……誰か…わからないけど…。

男なのか女なのか、

それすらわからない。

ただ……目の前に【そのひと】がいて………。

【そのひと】……笑ってる。

顔は見えないのに…笑ってる感じがするんだ。

その笑顔は…素敵で……。

愛おしくて……。

でも……触れれなくて……。



それで………そこまでしか…思い出せない。


「う…ん……。」


思い出せないのは今までもずっとだ。






だから、それはおいて置いて……。




今の自分の状況だ。

「え……っと……。」

確か……。

今まで、変な連中に…連れて行かされそうになってて……。

拒んでも…拒んでも…

最終的には……実力行使で出てきた。

だから、抗った。

大切な場所だから…。

離れたくなかったから……。

でも……不可解なところがある。


「ここ……は……あの場所じゃない…。でも……なんで? ここも…こうも落ち着くのは…なんで?」


そう…そう言うことだ。

あの場所から…離れるときは、狩をしに森や山へ行くときくらい。

そういった理由があるのだから、離れるのは問題ない。

別に縛られている…と言った訳ではない。

あくまで自分の意思に従っているだけ…だ。

それが……。今は…この場所にいるのが……。

何故かわからない。


「ええ…っと……この場所…は後だ…ええっと……。」


更に…記憶を揺り起こそうとする。


あの時……。

明らかに違う男………。

そうだ……!今までとは明らかに違う実力者が来た。

その男に…完全に撃ち負けた。

……報いを受けるときがきたのか…?

そう思ってたとき……。


「あっ!」


全部…今までの事、思い出した。


「と…言う事は…ここは、この場所は……妖精の…。」


ふっと…したとき。






「そうじゃよ。」






誰かが…入ってきた。

「ッッ……!」

驚いて…振り返る。

そこに…小柄な老人がいた。

「すまんのぉ…。驚かせてしまったか?無理はせんでええぞ。キミが望むのならば、あの場所に…渓谷にも送ろう。だが、その前に……。」

ちょこんと…ベッドの傍の椅子に座る。

「聞かせてもらえんか?お前さんが何故…あの場所が好きなのか…とかな?」

ニカっと笑う。

およそ…敵意を感じない…

そんな感じがするんだ。

「ん……いいです…が…。貴方は?」

そう聞く。

「おおっと……そうじゃったの。子供に諭されるとは…わしもダメじゃなぁ…?ワシは、マカロフという。このギルド…フェアリーテイルのギルド・マスターじゃ。っと…ギルドってわかるかのぉ?」

マカロフはそう聞く。

すると……ゼクトは頷いていた……。

大体は……分かるみたいだ。








【魔道士ギルド・フェアリーテイル】



その名の意味は……

妖精の…尻尾。

何故なんだろう……?

その言葉を…聞くだけで…心が震える。

何故なのか…それはわからない。

あの場所が何で好きなのかがわからない。

それとまったく同じだった。

「あ…その…よろしくお願いします。」

頭を下げた。

誰かに…下げるなど初めてのことだが…。


「ふむぅ……。よろしくのぉ。キミの名は聞いておるぞい?ゼクト。」

マカロフは…少年…ゼクトを見て、一瞬首を傾げそうになった。
















評議員達の魔道士を退け……その上ギルダーツと戦りあう子供。

その子供が…こんなに礼儀正しい?

おおよそのイメージと離れている…。

ギルドのガキどもを見習わせたい程だ… 苦笑











「あ…はい。そう…オレの名はゼクト…です。」

そう言った。

「ふむ。よろしくのー!」

手を…差し出した。

「……はい。」

その手をつかむ…。

何故だろう…?

これまでの大人と違う。

ああ…あの大人…ギルダーツも…そうだったけど…。

安心できる…といった方がいい…かな?



「さて……互いに自己紹介はすんだのぉ?先程の話じゃが…」

そう話しだす…けど。

「すみません… 理由なのですけど…その…オレもよくわからないんです。」

直ぐにそう話す。

「むぅ?」

マカロフは、疑問符をあげる。

「オレは…初めて目が覚めたとき、あの場所でした。その瞬間から…想いが募ってました。大切な…って。だから、どんな所…場所よりも…特別な場所だったんです。だから…あの場所にいたら…いつの間にかこういう事態に…。」

こういう事態…。

沢山の大人たちが押しかけてきて……。

そして、今に至る。

「なるほど… そういったわけか……。」

腕を組み…そう言う。

どうやら…悪意があった。と言った類は皆無のようだ。

もともと…ギルダーツの話も聞いている。

いや…あった時点でそんな気などは失せてはいたが。

「合点はいった。すまなかったのぉ……。理由も知らず、強行的なことに出てしまって。」

マカロフは謝っていた。

「い…いえッ。元々は……オレが…」

あわててそう言う。

そんな姿を見て……。



「はっはっはっ!」



マカロフは笑い出した。

「……えっ?ええッ??」

何で笑い出したのか?がわからないから、オロオロしていた…。

「はっはっは!すまんすまん。評議員…前におぬしを捕まえようとしていた連中の話とは似ても似つかん印象を感じたからな?つい笑ってしまった。」

そう言って笑い…とまらないようだ。

















ゼクトは……マカロフの笑顔と温かい感じからか……

意外と早く打解けつつあった。

その後も…他愛も無い事を…話して…。

そして…。

「はははっ…まったく、評議員の連中は…。」

次第に、愚痴っぽくなっていた。

もともと…ギルダーツの前の大人は…どう考えても…… まったく良い印象が無いものばかりだったから…。

そう言った意味では同意だった。

それに……

こんなに…他人と話すのは初めてかもしれない。

ギルダーツといい…この人といい……。

でも…不快ではまったく無かった。

「あははは…。」

だから……つられて笑ってしまうのだ。










「ふむぅ…おお!そうじゃったそうじゃった……。」

マカロフは…何かを思い出したようにそう言う。

「わしらのギルドについてじゃ。」

そう言うと…。

「ッ……。」

一瞬だ。

一瞬…また、胸が高鳴った。

「ふむ…何を言わんとするか。もう察したか?その通りじゃ、初めて自我ができたころ 大まかな所は覚えておらんと言っておったじゃろ?なら…」

マカロフは…向きなおす。

「なぜ…フェアリーテイルの名を聞き…あそこまで、取り乱したのかを聞きたい。」

そう聞いた。

「…………。」

言葉を…失う。

「話せぬ…内容なのかのォ……?」

マカロフは…そう聞く。

間違いなく、この少年はフェアリーテイルを知っている。

実際に見たわけじゃないからゼクトの涙の種類は…わからない。

喜怒哀楽…どれなのかを。

だから、少し心配になる……。

(うちのギルドに酷いことされて…って可能性も無いとはいえないからのぉ……。)

そうなのだ…。

まだ、ガキとは言え…血の気の多い者が多いし……。


考えていたとき…。


「あ……あの……。」


少年が口を開いた。

「おおう!すまんかったわい。」

マカロフは直ぐに少年…ゼクトのほうを見た。

「フェアリーテイル……ですが……。名前は聞き覚えはあるんです。だけど……。」

ゼクトは…マカロフの目を見て…。

「わからないんです。聞いたとたん……、ギルドの人に会えたとたん………名前を聞いた途端……涙が止まらなかったんです。自分でも…わかりません。今は…大丈夫なんです。」

そういった。

嘘は…言っているようには見えない。

それに、こんな嘘を言う意味も無い。

「そうか……。」

マカロフはそう言う。

「ウチのギルドの名もそんなに大切なものだと、感じるのか?」

そう聞いた。

「ッ……。はい。」

ゼクトは頷いた。

こんな感覚は…初めてのことだったが…。

それでも…愛しく感じるのだ。

この…ギルドが……。

そのときだ!





「じっちゃん!!新人起きたかーーーーーっ??」




“バァン!!”



っと勢いよく入ってくるのは…

「ッ!!」

いきなり過ぎてビックリだ…。

驚いて振り向いた先には……。

「なんじゃいナツ。いきなり…。」

マカロフはため息を出しながらそう言う……。

「仮にも医務室じゃ、もうちっとこう…静かに入ってくる事はできんのか?……ああ、無理じゃのぉ……。」

即効で否定するの…… 苦笑

「え…っと……。」

いきなりの事でゼクトは面を食らってしまっていた。

「ははっ!わりーな!じっちゃん!それより……。」

その…ナツと呼ばれる同い年?くらいの男の子がこっちを見てる……?




「お前!オレと勝負しろッ!!!」




入るなりいきなり戦いを申し込まれた……。

この事にも再び面を食らったと…言うまでもないだろう。

マカロフも……再びため息を……










-35-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




アニメ「FAIRY TAIL」オープニング&エンディングテーマソングスVol.2 【初回限定盤(CD+DVD)】
新品 \3288
中古 \2578
(参考価格:\3800)