小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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35話 笑顔と力比べ







































「え…?え…??しょーぶ??」



突然の宣戦布告に動揺を隠せないのはゼクト。

……っと言うか、どういう意味か…はっきりしてないみたいだ。  苦笑

「そーだ!ギルダーツから聞いたぞ!お前!すっげー強えーらしーじゃん!!」

ナツは両手に炎を灯しながらビシッッ!!っと指を突きつける。


「はぁ……これ、ナツ。ちったー落ち着かんかい。」

マカロフは、やれやれ…って感じだ。

「でもよー じっちゃん!コイツ、新人だろ??オレなりのかんげーってやつだ!」

ナツはニカッ!っといい笑顔だ。

「あ…あの〜……。」

ゼクトはついていけない。 苦笑

「はぁ〜〜〜〜〜……しょーがないのぉ〜…」

マカロフは…何か勝手に納得してるし…。

本人の意思そっちのけで……。

「ええっと……いったい…コレは…?」

恐る恐る…聞いてみる…。

「すまんの〜。ちょっともんでやってくれんか?ちょっとでいいんじゃ。」

これまたマカロフもナツばりにニカッ…っと良い笑顔で。

「そーだ!いっちょやろーぜ?」

ナツはやる気満々!

「ええええ!!いきなり?」

突然の事に大パニック!!

やる…戦る……闘る……殺る……?

「で……でも、オレは…そんな…」

ゼクトは…混乱からこんどは、戸惑いを隠せない。

「「?」」

そんなゼクトを不思議そうに…見ているのはこの2人。


“何か変な事言ったか??”


ってな感じだ。

いくらなんでも……ねぇ?


「オレ…は、その…フェアリー…テイルの人と…敵対なんて……。」

ゼクトが感じた事はそこなのだ。

勝負…。

ナツの感じから十中八九、戦いの申し入れだろう。

だが……。

ナツは、フェアリーテイルの魔道士。

心から、大切と思えるギルドの……。

そんな人と戦うなんて……できっこない。

恨みも無ければ、理由も無い……。

表情がドンドン……曇る。

戦うって考えただけで…なのだろう。


そんな時……。


「ゼクトよぉ。なーに勘違いしてんだ?」


そこへ入ってきたのは……


「アンタは……ギルダーツ…。」

さっき?まで戦っていた人だ。

それは…その、フェアリーテイルの魔道士って知らなかったから…だ。

今戦れって言われても……。

「おいおい…深刻に考えるなって。」

ナツは…ちょっと混乱している。

強いと聞いたのはギルダーツからだ。

だからちょっと、力比べ!をしたかったんだが……。

なんでか、かなり戸惑ってるから。

………マカロフは、事情がわかったようだ。


「はぁ…あのな?まあ、お前さんが通ってきた道を考えたらそうなんだろーが……。」

ギルダーツは、頭を掻きながらそう言う。

「え?」

ゼクトは、ただ…まだ戸惑っていた。

「そんなガチなモンじゃねえって事だ。遊びだよ遊び。」

笑ってそう言う…。


「なにーーー!!遊びじゃねえぞ??オレは本気だッ!!」


“ボゥーーー!!”

っと口から火を出しながら叫ぶ!

「はははっ…わーってるって。なあゼクト。」

ギルダーツが、目を見る。

「え?」

当然、まだよくわかってない、ゼクトは言われるがままにギルダーツを見ていた。

「今までの様な戦いじゃなく…純粋な力比べって事だ。お前さん。オレと戦った時は理屈抜きで楽しかったろ?それとおんなじノリでやっていいんだ。」

そう言って笑う。

「戦いを…楽しむ…?」

確かに…楽しかったか?と聞かれれば…少しわくわくしてたのかもしれない。

自分より…強くて……そんな男と……。

「あ……。」

ゼクトは…あの時の気持ちを…完全に思い出した。

「ほれ。わかったろ?今のナツはお前さんと大体おんなじ気持ちってわけだ。」

そう言って頭を撫でる…。

「……うん。わかった。」

ゼクトはうなずいた。

「マジか?いよっしゃーーー!お前に勝てたらギルダーツにだって勝てる!!」

なにやらナツはガッツポーズ!!

「はぁ?ってかよーナツ。いつオレがゼクトより弱えーってことになってんだよ。ただ、アイツは強えーぞ?って言っただけだろ?」

やれやれ…って感じのギルダーツ。

そして、ゼクトに近づいて……。

(あんまし、思いっきりやらねえでくれよ?お前がやったら、シャレじゃすまねえかもしれねえから。命とらねーくらいにボコボコにしてやれ。)

なにやら…ナツを心配しているのか物騒な事をけしかけてるのかわからないな…。

「え…?ま…まあ、とりあえずやってみます。」

そう言うと、ナツと一緒に外へ……。


















医務室に残ったのは2人…。

「ギルダーツ。すまんかったのぉ…ワシとした事が、ガキの気持ちをわかってなかったわい。」

マカロフはギルダーツにそう言い謝罪する。

「なーに…仕方ねーさ。アイツとの付き合いは俺の方が長げーんだし…一度ぶつかり合ってるからな。力いっぱいぶつかり合うってのは、これ以上無いコミュニケーションだって思ってるよ。だから、今回の事も丁度いいってな?………でもなぁ…」

ギルダーツはそういった後…ちょっと歯切れを悪くする。

「ん?どうしたんじゃ?」

「アイツが力いっぱいやったら…ナツがやべえかもな?一応は釘さしたけど。」

そう言って苦笑する。

「その点は大丈夫じゃろ?…さっきずぅーっと話しておったが…あやつは仲間思いの心を持っておる。そうでもないと、大切なもの…なんて思わんじゃろ?いったい何があったかはわからんがな…。」

マカロフはそう言って笑った。

「ああ…ちげーねえ。オレも口ではそう言ったが、内心心配しちゃあいねえよ。ナツには同級の目標ができる。そして、周りのガキ共も刺激になるだろ。」

そう言って笑う…。

「そうじゃな!」

マカロフも一緒になって笑っていた。


























そして……。

ギルドの外では…。


「いよっしゃあ!戦ろーぜ?」

ナツが両方の拳をがっちりとあわせてそう言う。

「うん。いいよ。」

ゼクトも…体に力を入れていた。

ギルダーツを見ているから、ナツもきっと強い。

そう感じていた。


「手ェ抜くなよッ!!?お前!!」

ナツはそう言うと。

「うん。あっ…そうだ。オレはゼクトって言うんだ。よろしく。」

ゼクトはそう言うと…。

「そっか!わかった!!オレはナツってんだ!」

ニカっとナツは笑っていた。



なんだろう……。

さっきのマスターやギルダーツもそうだったけど……。

このギルドの…みんなの笑顔は…。

自然と落ち着くんだ。

心地いいっていうのかな?



ゼクトも自然と笑顔になる。





「おおーい!さっさとやれよ!」

何やら見ていたギャラリーがそう叫ぶ。

「よぉー!ゼクトっていったな??ナツなんかボコボコにしちまえ!!」

…半裸のコがこれまた物騒な… 苦笑

「うっせーぞ!グレイ!この後はお前だかんな!!」

ナツはガーって吼えてるし……。

「ねーねー!エルザ?あのコはだーれ?」

違う場所では…

「レビィか。ふむ。私もよくは知らないのだが、ギルダーツの客人っと思っておったが、どうやら、新人らしいな。」

青い髪の女の子と、赤い髪の女の子…が話をしている。

「なーんでいきなり、ナツはその新人に戦いを求めてんだ?ってかんじだよな。実際問題。」

今度は…白い髪の女の子……。

「ふむ。私もそう思ってとめようと思ったのだが…あのギルダーツがつれて来た男だ。何かあるだろう。」

エルザは、うでを組んでそう言う。

「けっ…相変わらず偉そうな口調だな?エルザは。」

そう言うと……。

「何だ?言いたい事があるなら、はっきりと言ったらどうだ?貴様も相変わらずものをはっきりと言えんようだな?ミラジェーン!」

あっちはあっちで……揉め事が……。

「あーあー!誰が言えないだ!何度でも言ってやるよ!上から目線!えらそーデブ女!」

「何だと!このガリガリ女が!!」

取っ組み合い……。とまらないし……



「あーもう!なんかほんとにうるさくなってきたな!さっさとやろうぜ!!」



ナツ……。

キミもその【うるさい】のメンバーの一人なんだけど……。

でも…でも………。


ゼクトは我慢ができないようだった。




「プっ……」

「ん?」


「あはははは!」




ゼクトは気がつけば…大きな声で笑っていた。

「??何笑ってんだ?」

ナツは不思議そうにそう聞く。

「あ…いや、ただ……なんだか良いな?って……思えて。このギルド……フェアリーテイルがさ?」

そう言って笑い涙を拭う。




そう…自分の感情に間違いなかった。

凄く…暖かい感じがするんだ。

このギルド…全体から。




「へへ!そーだろっ?」

ナツも笑う。

ギルドのことをそう褒めているんだ。

自分自身も嬉しく感じたんだろう。



















「ほら みろよ?マスター。アイツ…あんな笑顔作れるみたいだぜ?」

少し離れた位置で見ていたのはギルダーツとマカロフだ。

「ふむ。いー笑顔じゃ。」

マカロフも…笑っている。

「はははは。正解だったな?ウチに引っ張ってきて。」

ギルダーツはそう言うと…。

2人の方へ…。

「ふむ?どうするんじゃ?」

「和やかなのはいいけどよ?男が一度戦いを宣言してんだ。有耶無耶になんかできねえだろ?かといってあの感じじゃいつまでもはじまんねーと思うし。ちーっと合図してくるわ。」

手を上げて2人の方へ……。






















「ほれ。挨拶はすんだんだろ?」

ギルダーツが…入ってきた。

「あ!ギルダーツ!!約束だぞ!こいつに勝ったら!!オレとまた勝負だ!!」

ナツが気がつきそう叫ぶ。

「おいおい…オレは、んな約束した覚えねえぞ?っつーか、んな約束無くたっていつでも相手してやるよ。」

ギルダーツは苦笑い。

「だが……ちっとおもしれえな?その約束…。」

ギルダーツが…なにやら意味深ある笑いを…。

「「??」」

当然2人はわけわからない。

「ゼクトに勝てたら…何でも言う事聞いてやるよ。勝負だろうと何だろうとな…。」

そう言って笑っていた。

「ほんとかーーーー!!」

ナツは俄然やる気に!

「ハッピーのマネしろ〜〜〜!!」

そう指差して宣言!!

「あい!!」

ハッピーも…すぐ傍にいたからか、手を上げていた。

「なんだそりゃ?まあ良いさ。勝てれば…の話だけどな?」

「あの……オレをそっちのけで、妙な事を言うのはやめて…・・・。」

自分をダシにされているようだ。

ちょっと…複雑……。

「はははっ…わりーな?んじゃあ、お前さんが勝ったら、ナツに何でも好きなこといっていいぞ?」

そう言って笑う。

ナツは怒るかと思いきや…。

「それ良いな!!燃えてきたぞ!!」

更に更にやる気アップ!!

炎率上昇傾向!!

「あ…はははは。うん。わかった。……戦ろう!」

自然とまた…笑顔になる。

幼きドラゴンの魔道士との対決が今始まろうとしていた













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