小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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3話 妖精の一目惚れ












「…何をしているのですか…」

その少女は男達にそう解いていた。

「だれだ!!お前は!」

リーダー格の男の声とともに、他の男達も動き出す。

だが、先ほどの攻撃の影響か、もう魔力が残ってないのか、

その動きはかなり鈍くなっていた。

「ここは、私のギルドが管轄している地区です。 勝手に進入し、何をしているのか?と聞いています。」

その少女はそう言っていた。

口調は威圧するようなものではないが…

「!」

男達は…動けないようだ…

「あ…俺…知ってる… この女性…」

メンバーの1人がそう言った。

それとほぼ同時… 周囲もはっきりし、その少女の姿もはっきり見えたようだ。

気付いた男以外のメンバーも全員正体がわかったようだ…ざわついている。

リーダーの男が前に出て跪く。



「も…申し訳ありません… マスター・メイビス… ここが貴方のギルド管轄区だとは…」

すると…

その少女は、

「顔を上げなさい。過ちは誰にでもあります。でも… それを認め 矛を収め 頭を下げる事の出来る人は思いのほか少ないです。」

そう言うと…

微笑みながら。

「許しましょう。 早くギルドに帰りなさい… 後…」

少女は… 俺の方を見た。

「あの方は… あなた方が追っている妖魔とは違います。」

「!!」

突然そういわれたら当然驚く、

何をしていたのか…?その質問には答えてないのに…

心を見抜かれたようだ…

「わ… わかりました。」

そう言う他無かった。







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少女は・・・ 俺の元へとやってきた。

「大丈夫ですか?」

そう言いながら。

『問題ない。俺ももう直ぐに出て行くから安心しろ。』

そっけなくそう答える。

そう言うと…

「私は 貴方と少し…話しをしてみたいのですが?」

そう言って笑っていた…

人の世をめぐっていて・・・

沢山の笑顔は見ていたつもりだ。

だが… どの笑顔よりも…輝いているようだった。

まるで…

『妖精(フェアリー)…』

口ずさんでいた。

「はい。 私は|妖精の尻尾(フェアリー・テイル)と言うギルドのマスターをしています。」

その少女は…そう答えていた。

妖精…と呟いた事で、そう聞いていたのかと思われたようだ。

『|妖精の尻尾(フェアリーテイル)か… 良い名だな』

「ありがとうございますね。妖精に尻尾はあるのか?そもそも妖精は存在するのか?永遠の謎 そして永遠の冒険そう思い 私はそれをギルドの名にしました。」

弾けんばかりの笑顔…

『はは… 妖精なら存在するさ… 君は妖精なのだろう?』

笑いながらそう言っていた。

人前で笑うなんて初めてのことだな…

「あ…// あははは、ありがとうございます。褒め言葉として受け止めておきます。」

少女は… テレながら笑っていた。



暫く他愛のないことを話していた。

こんなに人間と話をしたのは初めてのことだ…

あのゼレフ以来か…

それにしても…同じ人間でまるで対極な存在のようだな…

ゼレフが闇ならばメイビスは光…といった感じか…

そう考えながら・・・本題に入った。

『この場に俺がいて良いのか? 先ほどの連中には出て行くように言っていたようだが?』

そのことだった。

この場所は自身の管轄区とも言っていた。

ならばなぜ…今この状況なのか。

この少女…メイビスと話すこと事態は苦じゃない。

寧ろ… 非情に楽しきものだ、

だが腑に落ちない事も多々…

『そして、先ほど俺を庇ったのは何故だ? あいつ等の言う妖魔ってのは十中八九…』

とまで言ったところで

「いいえ、貴方ではありません。妖魔と呼ばれているものはここ数日でフィオーレ王国内で大量虐殺をしている非道な者のことです。」

はっきりそう言いきった。

確かに飛び火してくるのを振り払ってはいるが、まだ殺しは一度もしてはいない。

ならば、その妖魔と俺は完全な別人と言えるだろう。

だが…わからない。

その事実、俺が殺しはしてないと知ってるのは俺自身のみだ。

『? わからんな。俺とお前はここであったばかりだ。 何故俺のことがわかる?』

それだ…

だが、メイビスは微笑を絶やす事は無かった。

「簡単な事です。貴方は…」

そう言ってメイビスは目を見つめた。

「良いヒトだからです!」

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『は?』

一瞬だが…思考がとまってしまった。

それだけ?

っていうか根拠は?

「私は… 大体はヒトの目を見ればわかります。貴方の瞳は…とても澄んでいて… 悪人にはどうしても見れませんし、見えません。私が保証します!」

ぐっと拳を突き出してそう言う…

ええっと…

『なんだそれ…』

ため息しか出ない。

仕方ないだろう…

見ず知らずの男をいきなり信用する?

ンな馬鹿な…

いくら俺でもそのくらいはわかる…

「まあ… 凄く困惑してるかあきれているかしていると思いますけど…」

自分でそれ言うのか?

「私が初めて見惚れたヒトでもあります!」

『はぁ?』

何を言ってるんだ?この人間は…

確かに話していて楽しいが…ここまで…その…なんだ?変り種だとは…

あぁ 俺も変り種か・・・?

『一応聞くが… あったばかりだぞ?ほんの数十分前くらいに。』

「あら?時間は関係ありませんよ。一目惚れなんですから。」

またまたはちきれんばかりの笑顔…

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・・・・・・・・・・・・・・・・

『む…』

考えてもわからないな…

だが、個として生きてきた自分は愛だとか、好きと言った感情…

見ていて微笑ましいとは思うがまだ良く分からないのも事実…

ただ…

悪くは無い…

「あ… ごめんなさい。混乱させるつもりじゃ…」

メイビスは申し訳なさそうに言う。

そして…ゼルディウスは背を向けた。

「あ…まって!」

そのまま立ち去っていくと思い、慌てて呼んだ。

だが…

歩き出す…

メイビスは… 間違ったことをしてしまったのか…?

突然そんなことを言われ…困惑させてしまい・・・気分を害してしまったのか…?

不安に思ってしまった。






|妖精の尻尾(フェアリーテイル)を作って…

年月がたった。

ギルドの仲間も増え…

仕事依頼数も安定してて…

毎日忙しい日々だけど…信頼できる仲間と共に…懸命に生きてきた。

そんな時、

管轄区で暴れている者がいるという報告を受けた。

かなりの規模で暴れているとの事・・・

だから 私が確認しに行く事になった。

仲間(みんな)には心配をかけたと思う。でも…私もマスターとしての誇りだってある。

自分の家で暴れられているのと同じ事だ。

心配ないことを告げ、1人で行く事も共に告げた。

例の妖魔の件もあるし、ギルドの皆も出払っていてまともに動ける人数がいないのも理由の1つだ。

皆…本当に心配をしてくれていた。

それこそ家族のように…

それがとても嬉しかったし、これが魔道士ギルド|妖精の尻尾(フェアリーテイル)なんだって胸をはれた。

だからこそ私は笑えた。

心配ないよって…

すると 皆は安心してくれた。

私の笑顔には不思議な説得力があるから…だって…

なにそれ・・・って更に笑った。

でも あまり時間を掛けてられないのも事実…

私は笑顔で見送られながら…

家(ギルド)を出た。

そこで出会ったのは… 恐らくは同じ魔道士数名… そして…とても不思議な空気を纏った青年だった。

複数対1人…それも 複数の方は、魔力の方も高い…

直ぐに止めようと割って入ろうとしたのだが…

直ぐに異変に気付く。

数名の魔道士の攻撃…

簡単に言うと、まあ 滅多打ち?地水火風…あらゆる属性の多角攻撃?

青年…は一歩も動いていない。直撃してるはずなのだが…

衣服すら破れていなかった。

そして…男は立ち去ろうとしてるけど…

魔道士の人たちも諦めてなかったみたい。

最後の攻撃をしようとして…でも、通じなくて… 男の方が怒っちゃって…

いけない!止めないと…

でも… 何だろう?あの人…

不思議な感じ…

私が…こんな気持ちになるんだなんて…

家族に向けるような愛情じゃない…

この感情…






暫く話していて…

気持ちが高ぶる…

愛しさが…膨れてくる…

そして… ついつい、思いをはっきりと告げた。

初めてのことだったけど… はっきりとストレートに伝えた。

すると… 彼は…困惑したような表情をしていた。

そして…背を向け歩き出した…

私は失敗した…と思った。

と同時に…落ち込んだ…


でも…

彼は…手を上げた。

そして…一言だけ…

『またな…… 妖精(フェアリー)…』

そう言って…空高く…飛び去っていった。

彼は後姿だったけど…

表情はきっと笑っているんだ。

「あ…ははは。 またな…妖精(フェアリー)…か…」

そして…

私もギルドへ…

「本当に…会えると良いな。」

そうポツリと…呟いた

-4-
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