小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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40話 友達に………


































ミラの頭によぎったのは……。


【敗北】の文字。


それも……明らかに相手は全然全力じゃないって感じる。

なぜなら相手は、攻撃の【こ】の字も使ってないのだ。

攻撃らしい攻撃なんかない。

ミラに触れたのでさえ……最後の撫でるようなあれだけ。

こんな…完璧な敗北は……初めてで……。

他のヤツとの喧嘩でも……。

エルザとの喧嘩ででも…………。

はじ……めてで………。

「う……うぅぅ………」

そして、涙を流すのも初めてのことだ。

ぬぐってもぬぐっても……

止め処なく、流れてくる……。





『モード・解除……「ふぅ……。」

ゼクトから魔力が静まっていく……。

それに集中していたせいか…。

ミラが泣いている事に今気がついた。

「あっ……その、大丈夫…?ひょっとして……痛かった?」

ゼクトは、申し訳なさそうにそう言う。

泣いている姿なんて……初めてのことだった。

だから……思った以上に取り乱していた。








その姿に………。

ミラは悔しさからか……腹が立った。

「悔しい…悔しいんだよっ!何よっ……アンタ……攻撃はいっさいしなくてッ。私を嘲笑うようにしてっ……!」

ミラは…そう言って泣き続けた。

これが、八つ当たりだってこと。

敗者が何を叫んでも……負け惜しみにしか聞こえないって言うのは…わかる。

ナツだって…私に負けて…騒いた。

そのとき…。

私はそう聞こえていたから……。

「……………」

ゼクトは、黙っていた。

「なによっ………!なんか言ったらどうなのッ!」

言いたくないのに…

言ってしまって……

更に全然とまらないのだ。

涙も……言葉も……。

こんなに傲慢で…怒鳴り散らすように言ったら……。

それも勝者にそんな事を言ってしまったら……。

相手がどう思うかなんかよくわかる。

………自分もそうだったから、




「……ッ!」


だから……これから、何を言われても……覚悟していた。

耐えられるかどうか………わからないけど。

「……今、オレが何言っても、信じてもらえないかもしれないけど…。」

ゼクトが話す。

「え……?」

ミラは思っていた返答じゃない事に少し驚く。

その声は…

一瞬だけど……

凄く柔らかくて…やさしくて…。

そんな感じがしていた。

「オレは、ギルダーツに言ったし、初めにも…似たような事言ったけど、女の子と戦うなんて、本当は嫌だった。それは君と戦うのが嫌だ。ナツとは戦ったけど、でもキミは嫌だ。って言うのじゃなくて……女の子を傷つけるなんて…男がすることじゃないからって…思って。」

そう言うと………。

「それがキミに対して……、侮辱だったんだよ……ね?ゴメン…。」

頭を………。


ゼクトは手をださない…そう、攻撃しなかった事、女だから戦いたくないって思ったこと、それが相手に対して侮辱だった。

改めてそう感じる。

わかってなかった。わかったって勘違いしていた……そう思い頭を下げていた。

「え……え?なん…で?」

ミラは……コレから、何を言われるのか……。

それを言われてもしょうがないって思っていたのに。

考え付かないような事だった。

「わたし…アンタに負けたのにっ、こんな事言って…なのになんで?」

ミラは…思わずそう言っていた。

「オレは…このギルドが大好きなんだ。だから、皆と仲良くしたい…よ。でも…考え無しに、そう言う戦い方をして…キミを傷つけたから……本当に申し訳ないなって思ったから…。」

更に頭を下げた。

頭を下げるなんて……そんなの……そんなのッ!勝者がすることじゃない!

………敗者にそんなことをするなんて……。




『だから、それも私に対する侮辱なんだ!』って言ってしまいたかったけど……。




心から、このギルドが好き…皆と仲良くしたい…。

その言葉が嘘偽りなく響いてきて……。

……そう感じて…そんなこと言えなかった。

「あ…う……。」

ミラは…何もいえない。





「ほら。ミラ。」



固まっていたミラを、ギルダーツがひょいと手を引っ張りあげた。

「きゃっ!」

ミラは、驚いていた。

周りが見えてなかったようだ。

「ミラよぉ。悔しいって思う事はいいんだぜ?自分が登り、たどりつく為によ?今お前は目標を知ったんだぜ?明日へ歩き出すためのな?それに……。」

ゼクトの方を見る。

「コイツは、ちぃとばっか、人付き合いってヤツをあんましてなくてな。正直付き合い方をあんましわかってないみたいなんだよ。……本気でそう思ってんだ。だから、お前にそう言われて普通なら怒るって思うような事いっても……、アイツはそう言う。本気でな?中々、気持ちに整理がつけれないと思うが、ここは、ノーサイドって事で握手してやれ。ゼクトも、コレだけ思いっきりぶつかり合えたんだ。嫌われるわけないだろ?確かにお前さんの今の戦い方じゃそうとられても無理はないと思うがな。」

ギルダーツは、そういった。

「え?…どーいうことっ……?」

ミラは、ギルダーツに聞く。

「ん?一切攻撃しなかったってところだよ。それに…気がついてないかも知れねえが、ゼクトはお前に色々してんだぜ?直接的な攻撃以外だったらよ? お前の目には一切攻撃してないって捉えてもおかしくないがな。 ……でも、お前を嘲笑う為にそうしたわけじゃねえ。嘲笑って上から見下ろして……そんな腐った男じゃねえ、それはオレが保障するぜ?」

ギルダーツはそう言って笑う。

「あ……う……うん。」

ミラは…コクンっとうなずいた。

ゼクトを見てたら…そう言う事なんか感じない。

さっきは、それほど取り乱してたって事だったんだ…。

自分を落ち着いて、見直すことができるほどに回復したみたいだ。

精神も…魔力も……。

「ギルダーツ……」

ゼクトは、ギルダーツを見て…聞いて…嬉しかった。

それに…さっきの戦いで【したこと】。

見抜いていたみたいだ。

そして……

ゼクトはミラ方に手を差し出す。

「……その、オレと……友…達に、なってくれないかな?」

そう言う。

ミラは……。

「ッ……//」

少し…赤くなっているのがわかる。

自分自身でも。

「お〜いど〜したんだ〜〜??ほれ、返事してやれよ?」

ギルダーツはニヤニヤしながら……。


「ッ!うっさい!!だまっときッ!!」



“ゲシッ!!”



脛にキック!!

「うげっ!!」

さすが!弁慶の泣き所!!ッていってもここじゃわかんないか… 苦笑

ギルダーツは足をピョンピョンさせていた…。



「あ…あの……。」

「う……うん。その…こちらこそ…よろしく…ね?ゼクト。」

ミラは…頬を染めながら…そう言って握手した。

ゼクトにとって初めて…女の子の友達ができた瞬間だった。







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