小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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41話 喧嘩するほど仲がいい




























エルザ side









今日は驚きの連続だ。

ギルダーツが帰ってきたこともそうだし、突然の地震……。

あれは、自然の感じじゃなくて、今まで感じたことのない魔力も感じていた……。

あの時はマスターもいたし、さほど深刻な顔もしてなかったから、それほど深くは受け止めなかったが。

そして……。

再びギルダーツが帰ってきたときだ。

連れ帰ってきた少年もそう。

初め見た時、迷子の子供を連れ帰ったのか?と思った。

ギルダーツは、凄く優しいからだ。

ナツも実の父親のように思っている。

勿論私だって……。

マスターと同じように私の…私達の親のも同然だ。

そんな男だから、子供を連れ帰ったことにさほど驚きはなかった。

だが……。

少年…ゼクトの話を聞くと、かなり強いとのことだった。

当然ながらナツは反応する。

それこそいつもの通りにだ。

そして、手合わせをすることになった。

そして、勝負はすぐについた。

ナツの実力は、ドンドン伸びてきてはいるが、まだまだ私にとっては未熟だ。

それでも……目を見張るものがあった。

そして、ミラも同じように思ったのだろう。

私は先に勝負したかったが、ジャンケンで負けてしまって後になった。

実を言うと……。

初めは【後】など無いと考えていた。

ミラの実力は私はよく知っている。

本人の前では決して言わないが……。

だから、少なくとも今日はしないだろう。無いだろうと思っていた。


だが……


ゼクトはミラをも一蹴。

本当に……今日一番驚いた。

私のライバルを……一蹴した。

そして……、ギルダーツの話を聞き……ゼクトの想いも聞いて……。

本当に良い男の子なのだと感じた。

入ったばかりだと言うのに、家族のように……想っているのだ。

同年代であんな考えを持った者になど会った事は……皆無だ。

とても強くて……そして、とても優しい……。

ミラとも……笑顔で握手をしていた。










「次は私だなっ!」


エルザは、驚いていたが……。

しだいにそれは薄れ、自分がどこまで通用するのか?

そう言ったわくわく感に満ちているようだった。


そして、ミラと握手をしてるゼクトの方へと向かった。





Side out





ゼクトは……初めの顔が嘘のようだ。

「ありがとうっ!ミラ。」

握手に応じてくれたことに笑顔で感謝していた。

「いや……っ、別になんでもない……よ?アンタの…ゼクトの本音聞けてよかったし……私も悪かったし……。」

ミラは、ギルダーツには言われたけど……。

負けた後の事少し気にしているようだった。

って言うか、さっきから結構続いている。

「あ……はは。なんとも思ってないよ。オレだって……」

ゼクトも【また】同じような事を言おうとしたとき。



「あーーっテメーらいつまでやってんだって。いい加減終わりでいいじゃねえか。何度も同じ様なことリピートしやがってよぉ。」



ギルダーツは呆れながらそう言っていた。もう何回目だ?って思ったからだ。

全く……ガキらしくない不器用な奴らだと…苦笑いしていた。

「ッ……そうだよね。」

ミラは、そう言うと……。

(ずっと、メソメソしてる何て、私らしくない…よねっ?)

「うん!ゼクトっ!これからもよろしく!」

ミラは謝ることをやめた。

吹っ切れるように笑顔でそう言う。

「うんっ。こちらこそ!」

ゼクトはミラと同じ気持ちになったのだろう。

同じように笑顔で答えた。

そして……その直後に、

「ふむ。仲良くなったのは良い事だ。だが……。」

すると……直ぐ後ろに。

「次は私の番だなっ!」

エルザが笑顔で立っていた。

「うっ……(しまった……エルザに…泣いてるとこ……それに負けたとこも……)」

ミラは、エルザの顔を見るなり露骨に嫌がってた……。

「うん。わかったよ。……ん?ミラ?どうしたの?」

難しい顔?をしていた為、ゼクトは気になって聞いていた。

「い…いやっ なんでもない!そっ…そーだ!ゼクトっ!」

ミラはこっちを見るなり…。

指を“ビシッ!”っと突きつけて……。

「ゼクトは私に勝ったんだからねっ!?エルザなんかに負けたら許さないからッ!」

そう言っていた。

「あ…はは、うん、頑張るよ。」

ゼクトは、苦笑いしていた。

「む……【なんか】?」

エルザは……ゼクトにじゃなく……。





「何だよ!!」

「むううう!!」




ミラとエルザのにらみ合いが続く!


「え……っと……。」


ちょっと対応に困っていた。

でも……わかったこともある。

この2人……すっごく仲が悪そうに見えるけど……。

なんでだろう?

凄く仲がよさそうにも見えるんだ。


「なっ?大体わかったろ?ゼクト。」


そんな自分の考えを悟ったように、話しかけてきたのはギルダーツだ。

「え…?」

ゼクトはきょとんとしてた。

「これが仲間ってヤツだ。たまに喧嘩して…たまに馬鹿騒ぎして…一緒に仕事やって……ってな具合でな?お前が言ったみたいに、なるわけ無いんだよ。【喧嘩するほど仲がいい】って言葉もあるからな。」

ニカッ…っと笑っていた。

「あはは……うん。わかった。」

ゼクトは良い笑顔だ。

それは歳相応のものだった……。

「ははっ……じゃあ頑張れよ?ゼクト。」

そう言ってエルザ達のほうに向かう。




「おいおい……お前ら、ゼクト困ってんぞ?」



またまた、仲裁に入っていた。

大変だ…って一瞬思っていたのはゼクトだった。


そして、勿論!

ギルダーツの話を聞いてなかったらしく……。

エルザがゼルと向き合ったのは暫く後の事だった。


「あははは………。」


だから 暫く、苦笑いしていたのだった。










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