42話 過去より今を……
そして……。
「待たせたな!さあ やろう!」
エルザがゼクトの前に立っていた。
「うん。よろしくっ。」
ゼクトも今回はミラの時の様な反応はせず……。
ただ…純粋に楽しむようにしよう。そう考えていた。
ギルダーツ・ミラ side
「ったく……アイツも世話ぁーかけやがって。」
ギルダーツはやれやれと…何回目だ?
「ねーねーギルダーツ!」
そこにミラが。
「あん?どうしたミラ?」
ギルダーツがミラが来たことに気が付きそう聞く
「その…ゼクトの事なんだけど……さ?」
エルザと対峙しているゼクトを見ながらそう言う。
「な〜んだ?本気で惚れたのか?」
ギルダーツがへ〜んな笑顔でそう聞く。
「………///」
ちょっと…言葉を返せてないのはミラだ。
「マジなのか?っはっはー!あのミラがなぁ〜〜!!」
ギルダーツは大笑い!!
「って!!うっさい!!声でかい!!!」
“ゴスッ!!”
脛にまたまた!
「って!いててて……。」
ギルダーツは脛をさすって…。
でも笑ってる。
「んで?何が聞きてえんだ?」
笑いながら。
今度は茶化している感じじゃない。
成長した子供を見るかのような笑みだ。
「っもう、そんなんじゃ無い!えっと…ゼクトって何者なのかな?って。」
そう言って、ギルダーツのほうを見た。
「………」
ギルダーツは何も言わない。
「ほらっ、ゼクト……今日入ったばかりなのに、このギルド…フェアリーテイルが好きっていってくれてるし。それに、ギルダーツは言ってたけど、人付き合いが苦手って。でも、そんなレベルじゃないって思うの。私の方が明らかに悪いのにああいう風に言うのって……。前によっぽど酷い事があったのかな…って。」
ミラは、純粋に彼を心配しているようだった。
同じ歳で…何かを抱えているのか…。
ものすごく大きな闇を……。
そう感じたのだ。
友達に……なった時。
凄く笑顔だった。
勝負の時とは比べ物にならないほどに。
「……やさしいんだな?ミラは。流石お姉ちゃんだ。」
そう言って、チラッと2人…リサーナとエルフマンを見た。
「もうっ!そんなのはいいから答えてよ!」
ミラはちょっと照れながらそう言う。
「わりーな。オレもアイツの考えはわかっても経験は全く知らねえんだ。そもそも、オレだって会ったの昨日だぜ?」
そう言う。
「そう……。」
ミラは、少し残念な表情を……。
「ミラ。」
ミラのほうを見ると。
「アイツ。過去の記憶がねえんだ。」
そう言う。
「え…?」
ミラは、驚きの表情でギルダーツを見た。
「あんまし騒ぐなよ?アイツは今【前】を向いて歩き出してんだからよ。だから……。」
ギルダーツがミラの頭を撫で……。
「お前らがアイツの【何か】になってやれ。【昔の事なんてどうでもいい。今現在の方が大切だ】って言わせるくらい……にな?」
そう言って笑う。
「う……うん!」
ミラは元気良く……笑顔で返事をした。
記憶がない……。
その事に衝撃を受けていた。
家族の記憶なんてあるわけが無い。
ずっと一人ぼっちだった。そう言う感じ……。
そんな時、大好きって思えるギルドにきたんだ。
何で好きなのか……それはわからない。
でも……。
「私……ほんとに酷い事いっちゃったな。見下すとか……嘲笑うとか……」
思ったのは、さっきのこと。
彼に……ゼクトにそんな事できるわけがない。
ギルダーツが言ってた事。今なら理解できる。
ミラは……罪悪感に見舞われていたが……。
(……私がこんな顔しちゃ…。)
ミラは、顔を両手で“パチッ”っと叩くと。
「ゼクトーーッ!負けたら許さないからーーーっ!」
笑顔で…それでいて、大声でそういった。
Side out
「ゼクトーーッ!負けたら許さないからーーーっ!」
背後から……ミラの声が聞こえてきた。
「あっ……うん。頑張る!」
突然の大声に驚いたが……自分を応援してくれてるって言う経験は初めての事だ。
「むぅ……ミラのヤツ!また…。」
でもエルザは不機嫌。
「あのっ…その…よろしくね?」
ゼクトは、ちょっとあわてながら言う。
またまた、さっきのになったら……流石に帰っちゃう!わけないけど。
……家も無いから。
「ッ!ああ、よろしく頼むぞ!」
エルザは慌ててゼクトを見た。
ギルダーツの話も聞いている。
この……目の前の男の子は本当に優しいのだ。
たぶん……今のやり取り、私からすればいつも通りなのだが。ゼクトにとっては……違うのだろう。
心配されるのはギルドの先輩にとってあるまじき!だ。
「知っていると思うが、自己紹介をしよう。私はエルザだ。よろしくな。」
エルザはそう言う。
「あ…うん。オレはゼクトだよ。よろしく。」
ゼクトも、同じく。
「よし…… 自己紹介も終わりだ。私も本気で行く。私の実力を試してみたいからな。だから。手を抜くなよっ?私は…私達はそんな事でお前の事を嫌ったりしない。それに、そんな事を思うやつなんかこのギルドにはいない!」
エルザはそうはっきりといった。
その声に皆うなずく。
皆ギルダーツの話やミラとの事……。
全て聞いて、納得していたようだ。
ギルドに入ったからには……入ったと同時に家族のようなものだから。
「っ……。うんっ!ありがとう!エルザっ。」
ゼクトは……本当に嬉しかったようだ。
笑顔で……。
心からの笑顔でエルザを見てそういった。
その笑顔は……まるで光のようだった。
エルザにはそう見えた。
「っっ!あ……ああ!」
だから、少し歯切れが悪かった。
だから……ゼクトにあらぬ誤解をされてしまうかも!と思ったが……。
どうやら、その心配はなさそうだ。
直視……する事が難しかったが……。
彼の顔を見た。
ずっと、笑顔だったから……。